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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第2章 弾薬と白い子猫
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第11話 ミッション2-2 その3

「穴を2つ見つけたぜ。俺の予想だと、1つは人類の繁栄につながって、もう1つは汚物塗れになるかもな」

「卑猥に聞こえるから穴って言うな」


 操縦手の声に前方を見れば、俺達の進む先に2つのトンネルが見えて来た。

 これがブリーフィングでも言っていた進路のトンネルなのだろう。

 だけど、トンネルが2つあるとは聞いてない。こういう時は、他人に押し付けるのが楽な事を俺はゲームで学んでいる。


すぴねこ 『チビちゃん。トンネルが前に2つあるけど、右と左どっちに行く?』

チビちゃん『せっかくだから俺は右側のトンネルを選ぶじぇい』

ボス   『コンバット越前先輩だな』


 ボスが笑っているけど、ちょっとネタが分からない。後でググろう。

 まあ、何がせっかくなのかは分からないが、とりあえず右という事だけは分かった。


ドラ   『残念だけど、ネットの情報だと、どっちを選択しても左に行くらしいぞ』

すぴねこ 『そうなのか? まあ、指示してみるよ』


 インカムによる通信を終えて、操縦手に話し掛ける。


「右に行け」

「分かった、左だな」


 操縦手に命令すると、戦車が左へと進路を向けた。


「フリじゃねえ。右だバカヤロウ」


 思わず、操縦手の頭を蹴っ飛ばす。


「痛てぇ。もちろん冗談だ。はははっ」

「お前が言うと、冗談に聞こえねえんだよ」


 俺が言い返すと、横の補填手が頭をガクンガクン上下に動かして頷いていた。


ドラ   『すぴねこ、チョット待て!!』


 戦車の進路を右に向けたらドラが大声を出すもんだから、思わず顔を顰める。


すぴねこ 『突然ケツに何かが入った様な大声出すんじゃねえ!』

ドラ   『俺はねえさんとは違げえよ』

ねえさん 『ドラ、後でどんな声が出るか教えてあげるわ』

ドラ   『いや、嘘、嘘、冗談。マジで勘弁してください。それでお前、どうやって右に向けた?』

すぴねこ 『普通に操縦手の頭を蹴った』

ドラ   『頭を蹴る事が、何がどう普通なのか分からねえけど、お前、凄げえな』

ミケ   『それって、非常識って意味よね』

すぴねこ 『勘弁してくれ。俺は政治家よりかは常識を持ってるぜ』

ボス   『今のはツマらんな』


 ミケに言い返したら、ボスからダメ出しを喰らったけど、俺が思うにリーダーをしていないボスが一番ツマらんよ。







 トンネルの内部はオレンジ色の照明に照らされ薄暗く、天井は低いけど横幅があって戦車でも楽に入る事ができた。

 戦車がライトを照らして進んでいると、すぐにガーディアンが俺達を出迎えた。


ミケ   『ガーディアン3体』

チビちゃん『ミケとねえさんは、私と一緒に威嚇射撃開始。グレネードを撃つのを押さえて』

ミケ&ねえさん『『了解』』


 チビちゃんの命令で全戦車の機銃が一斉にガーディアンに向かって火を噴いた。

 さすがのガーディアンも12㎜の機関銃で撃たれたら何もできず、彼等がひたすら防衛に勤しんでいる間に、主砲の照準を合わせる。


チビちゃん『主砲がドーン!!』


 生身で戦えば難敵のガーディアンも、戦車相手だとただのザコ。

 チビちゃんの合図で主砲を放てば、ガーディアンは跡形もなく吹っ飛んだ。


「よっしゃ、ドンドン進むぜ!」


 バグスを倒して操縦手が歓声を上げる。


「お前の頭には慎重という文字がないのか? ちったぁ警戒しろ」


 俺のクレームを操縦手が無視。このクソAIと思う。






 時々バグスが出てくるが、ピンチの状況にはならず、せん滅しながら倒していると前方から突然轟音が聞こえ始めた。


ミケ   『……何? 嫌な予感しかしないんだけど』

チビちゃん『皆、警戒して!』

すぴねこ 『それはこの戦車の操縦手に言ってくれ……』


 そう言って、操縦手に目を向ければ……。


「ラリーでかっ飛ばすのも楽しいけど、戦車に乗るのも悪くねえな」


 この男の中では、すでに戦争の事などどうでもよくなっていた。


 操縦手以外の全員が警戒していると、前方の天井を突き破って先ほどのタレットが降ってきた。

 轟音の正体は、地面を掘り進むタレットのドリルだったらしい。


ミケ   『タレットが降ってきたわ!』

チビちゃん『攻撃ーー!!』


 再び車長の3人が攻撃を開始して破壊するが轟音は鳴りやまず、次々と天井からタレットが落ちて来ては機銃を戦車に向けていた。


チビちゃん『先頭車両に銃を向けてるタレットを優先』

ねえさん 『この数は対処しきれないわ!』


 こちらも応戦するが被害は増え続け、そして戦車の被弾率が30%を超えると、突然戦車の速度が上がった。


ミケ   『被弾率が30%を超え……えっ、何、何なの? 急に戦車の速度が……』


「おい、何やってんだよ!」


 操縦手に大声を出せば、その操縦手はアクセルをベタふみして大声で笑っていた。


「はっはっはーーっ!! ロッキーマウンテンを最高速度で駆け抜けるより最高だぜ!!」


 あ、これはダメだ。何やっても止まんない。


チビちゃん『すぴねこ君、急に速度が上がったよ!』

すぴねこ 『たいへんだぁ、操縦手が暴走しています』

ミケ   『何で諦めた様な声、出してるのよ』

すぴねこ 『「様な」じゃねえ。諦めてんだよ!』

ドラ   『諦めたらそこで試合終了ですよ』

すぴねこ 『ウルセェ、デブ!! 肉を食うな、サラダ食え!!』


 冗談のネタが古いんじゃ、ボケ!!


ドラ   『冗談に対するリアクションが酷すぎるぞ!』

すぴねこ 『こっちはそれどころじゃねえんだ!!』

ドラ   『おんやぁ? 前回のミッションと逆の立場ですなぁ。暇だから替わろうか?』

すぴねこ 『おう、今すぐ替わってくれ。やれるもんならな!』

ミケ   『二人とも集中できないから、黙ってて!!』

ねえさん 『もうカオスね……』

チビちゃん『ボス、どうしよう』

ボス   『お前等黙れ、撃つぞ! 速度が上がったのなら好都合だ。できるのだけ破壊して、そのまま駆け抜けろ』


 困ったチビちゃんが泣きついてボスが替わりに指示を出せば、全員「了解」と答えて反撃を開始した。


チビちゃん『さすがボス!』

ボス   『コイツ等を纏めるのは、正直言ってシンドイからな』

チビちゃん『惚れてまうわーー♪』


 チビちゃんはそう言うけど、その「コイツ等」の中に自分も含まれている事を、チビちゃん本人は気づいていない。







 トンネル内を時速70km/hで駆け抜ける。

 天井からは次々とタレットが降り注ぎ、地面に到着すると戦車に向かって機銃を放ってくるが、戦車の速度に対応できず空回りしていた。

 攻撃が激しい中、俺達は必要最低限のタレットだけを破壊して、突き進んでいた。


「警告! 足の小指をペダルのカドにぶつけるまで、あと2秒。人生、片道切符うううううぅぅぅぅーーー」


 操縦手が意味不明な虚言を叫んでいるけど、コイツ、何か怪しい薬でもやってんじゃねえか?


ドラ   『まさか戦車で高速機動戦闘するとは思わなかったぜ』

ミケ   『口よりも手を動かして! ダメージが35%を超えたわ』


 目の前に急カーブがあると思ったら、操縦手は速度を落とさずに車体を滑らせた。


「ドリフトォォォォ!!」

すぴねこ 『ヤメロォォォォ!!』

ミケ   『キャァァァァーー!!』


 履帯でドリフトすんじゃねえよ!!

 カーブを曲がれば、道行く先にライトタンクが5体同時に現れた。


すぴねこ 『あっ!』


 目の前に飛び出てきたライトタンクに思わず主砲をぶっ放す。

 ライトタンクは主砲の直撃を喰らった後、戦車3台と軍用トラック1台で踏みつぶされていた。


ミケ   『今、何かした?』

すぴねこ 『交通ルールを守らねえ歩行者にクラクションを鳴らしただけだ』

ミケ   『……?』


 ドリフトで目を回していて、今の攻撃に気づかなかったミケからの質問を冗談で返す。


「出口が見えたぞ。やべえ、シャツが後ろ前逆じゃねえか。道理で苦しいと思っていたぜ!」


 操縦手の声に前を見れば、トンネルの出口が外の明りで眩しく光っていた。

 それと、シャツのくだりは別にいらない。むしろ苦しめ。


 俺達を乗せた戦車はトンネルを走り抜け、目標のタワーのあるエリアへと突入した。







 トンネルを抜けて外に出ると、周りを山で囲まれた盆地に出た。

 盆地はバグスの軍事拠点なのか建築物が立ち並んで、奥の方に目的地のタワーが見えた。

 そして、外に出ると同時にシークレットミッションクリアのインフォメーションが流れた。

 ログを見れば、裏ルートをクリアと記載されていたけど、どうやら俺達が入ったトンネルは裏ルートだったらしい。


すぴねこ 『NPCの頭を蹴っ飛ばしたら、シークレットクリアなのか?』

ドラ   『お前のやり方が暴力的なだけで、本当はもっと穏便なやり方があったと思うぞ』


 あの時は衝動的に操縦手の頭を蹴っ飛ばしたけど、他に方法があったのだろうか? 穏便な方法というのがチョット思い浮かばない。


ミケ   『前を見て!!』

すぴねこ 『何じゃありゃ?』


 ミケの声にモニターを見れば、タワーのある方から蜘蛛型の巨大兵器が現れた。

 もし兵器じゃなかったら、介護ロボットか? 無駄にデケエな。


チビちゃん『蜘蛛!?』

ドラ   『ですが何か?』

ねえさん 『どんな時でもボケるわねぇ……』


 ドラのボケはさて置いて、巨大な蜘蛛型兵器は全高が10m、全長に至っては30mはあると思われる。

 胴体部分は小さく、その胴体は長い8本の足に支えられ宙に浮いていた。


チビちゃん『弱点は胴体部分かな?』

ねえさん 『そう思うけど、位置が高すぎて当て辛いわよ』

すぴねこ 『だったら、その支えている足の関節部分が狙い目だろ。ゲームだとありがちなパターンだ』


 適当に言ったけど、カニを食べる時は関節部分を折って身を出すから正解だと思う。


ミケ   『雑魚も沸いたわ』


 ミケの言う通り、蜘蛛だけではなく建造物からも様々なバグス兵が大量に現れ、上空からはタレットを積んだ戦闘機が近づいて来ていた。


すぴねこ 『この数はキツそうだ』

ドラ   『野良で組んでたらクリアはムズいんちゃうか?』

ボス   『かもな。リーダー、分担して倒せば何とかなる。担当を決めてくれ』

チビちゃん『んじゃ、ボスとドラ君は蜘蛛を攻撃。すぴねこ君とミケちゃんは雑魚とタレットを、私とねえさんは戦闘機を優先して、すぴねこ君の援護ね』


 チビちゃんの命令に全員が「了解」と答え、俺達とバグスの戦闘が始まった。


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