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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第2章 弾薬と白い子猫
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第6話 ミッション2-1 その4

 敵の輸送機に移動した俺とミケは、そのまま輸送機の開いた後部ハッチから乗り込んで、適当な物陰に身を隠した。


「私たちを乗せたまま飛んで行かないわよね」

「テメェ、さっきからフラグ立ててんじゃねえよ。前回クリアした時は残ってただろ!」


 少しだけイラっときて、ミケを睨む。


「そうだっけ?」

「そんなに不安なら、グレネードで輸送機を破壊してやるよ」

「そこまでしなくてもいいわよ」

「取り敢えず、ボスに報告するぞ」


 そう言いながら、インカムをオンにする。


すぴねこ 『よう、アミーゴ! 到着したぜ。そっちは生きてるか?』

ドラ   『ヘイ、ブラザー! 何とか全員生きてるぞ。ただ、ボスの弾が尽きて、短銃で威嚇してる必死な形相を見せられないのが残念だ』

すぴねこ 『それは動物園のクソを投げるゴリラか何かか? すんげぇ見たかったぜ。だけど、交代してボスがM60で、お前が自前のカービンで攻撃すれば良いんじゃね?』

ボス&ドラ『『……それだ!!』』


 何となく思ったことを口にすると、2人が同時に口を開いた。


ドラ   『忙しくて、その発想が思い付かなかった』

チビちゃん『交代しないのって、何か訳ありだと思ってた』

ねえさん 『……私も』

ボス   『ドラ代わるぞ!』

ドラ   『あいよ!』

ミケ   『なんだかなぁ……』


 俺とミケが顔を合わせて呆れていると、ボスが話し掛けて来た。


ボス   『すぴねこ、ミケ。ライトタンクのジェネレーターだけを破壊しろ』

ミケ   『了解』

ボス   『ねえさんは装甲が剥がれた敵を狙撃してくれ』

ねえさん 『何時でもいいわよ』

ボス   『チビちゃんはガーディアンが射程に入ったら集中して狙え!』

チビちゃん『ラジャー!!』

ボス   『よし! 反撃開始だ』

『『『『『了解!!』』』』』


 ボスの合図を皮切りに、敵を前後に挟んだ俺達の反撃が始まった。







 ミケがコンテナの裏に隠れ、HK417A2-20を構える。

 俺も残りのスラッグ弾を全てショットガンに装填して銃を構えた。

 敵との距離は約100m。スラッグ弾だとギリギリ届く距離だけど、如何せん、俺の銃はショットガン、しかもスコープなし。

 自信をもって言えるが、間違いなく当たらないだろう。


すぴねこ 『俺の狙撃に期待するなよ』

ミケ   『もちろん期待しているわ』


 言い返しに顔を顰めると、左端のライトタンクのジェネレーターに向けてトリガーを引いた。

 ショットガンから放たれた弾丸は、背中のジェネレーターに命中せず、敵の後頭部に命中。


すぴねこ 『こんな時だけ、ヘッドショットが決まるのかよ。しかも、距離離れてるから装甲が剥がれねえ』


 残念ながら、距離が離れてるせいで弾丸の威力が落ちて、敵は前のめりになるだけだった。

 そして、俺が愚痴を言っている間に、ミケが右端のライトタンクのジェネレーターを破壊する。


ミケ   『まず、1体目』


 ミケがそう言いながら、一瞬だけ俺にドヤ顔を見せた。

 その勝ち誇ったツラに殺意を抱く。


ねえさん 『もらった』


 ジェネレーターを破壊されたライトタンクを、ねえさんがすぐさま狙撃。

 こちらも1発で心臓部分を撃ち抜いて、ライトタンクが後ろへ倒れて死亡した。


ねえさん 『私から見て右側の敵はこっちで始末するわ』

ミケ   『了解』


 ミケがねえさんに返答した後、別のライトタンクに狙いを合わせる。

 そして、次々とジェネレーターを破壊していった。


 俺? 結局1発も命中しなかったけど、何か?







 ねえさんが5体のライトタンクを倒し、続けてミケが装甲を剥した丸裸のライトタンクを倒すと、とうとうガーディアンが動き出した。


チビちゃん『ガーディアン接近、狙いまーす』


 チビちゃんが報告と同時にグレネードを放つ。

 放物線を描いたグレネード弾がガーディアンの胴体に命中して、グレネードの爆風で剣を持つ右手のユニットを破壊した。

 すると、ガーディアンがチビちゃんの方を向いて膝を折った。


 待て! AAWの頃の仕様だとグレネードが届かない距離だぞ!!


ボス   『危ない!』

チビちゃん『にゃあぁぁ!』


 インカムから流れる2人の切羽詰まった声に、双眼鏡を取り出して確認する。


ミケ   『ねえ、どうなってるの?』


 不安そうなミケの声を聞きながらボス達を見れば、ガーディアンのグレネード弾はチビちゃんが隠れていた土壕を吹き飛ばし、ボスがチビちゃんを庇って彼女の代わりに重傷を負っていた。


すぴねこ 『んーー。何とか生きてるっぽいよ』


 前回はもっと接近してからの戦闘だったから気付かなかったけど、どうやら仕様が変わって、グレネード弾の射程が伸びているらしい。


ボス   『俺は構わないから、ガーディアンを倒せ』

チビちゃん『う、うん、分かった!』


 メディカルキッドを取り出そうとしたチビちゃんをボスが叱る。

 叱られたチビちゃんが再びグレネードをガーディアンに構えた。


チビちゃん『ボスの仇! ……あ、弾入れてない』


 全員がズッコケる。


ボス   『まだ死んでねえ……』

ドラ   『命を張ったボケには勝てねぇ……』


 チビちゃんの天然ボケにボスとドラが呟いていた。







すぴねこ 『あのままじゃヤバイな。ミケもユニットの破壊を手伝え』

ミケ   『そうするわ』


 ミケが銃を構えて、次弾を撃とうとしているガーディアンに向けてトリガーを引いた。

 そのミケの銃弾が、ガーディアンの左腕のユニットに命中。

 ユニットが破壊されたガーディアンの動きが僅かの間だけ止まった。


チビちゃん『天国のアナタ、見守ってて!』

ボス   『だから、まだ死んでねえ……』


 その間にチビちゃんがグレネードを発射すると、今度はガーディアンの足元に転がって爆発した。

 その攻撃で、両足のユニットの破壊に成功して、背中のジェネレーターのシールドが消えた。


すぴねこ 『ミケ!!』


 俺が叫ぶのと同時に、ミケがインプラントを起動。

 ミケの銃から放たれた弾丸が、ガーディアンのジェネレーターを撃ち抜いた。


ねえさん 『待っていたわ!!』


 装甲が剥がれたガーディアンを、ずっとチャンスを待っていたねえさんが、頭に向かって銃弾を放つ。

 狙われたガーディアンは頭を撃ち抜かれて、悲鳴を上げる暇もなく死亡した。







すぴねこ 『最後の敵を倒したけど、ミッションが終わらねえな』


 ガーディアンを何とか倒したけどミッションが終わらず首を傾げていると、ドラが「あーー!」と言って、何かを思い出したように口を開いた。


ドラ   『南の防衛拠点で敵が詰まってるのかも』

ミケ   『どういう事?』

ドラ   『防衛拠点手前の倉庫群に地雷を設置しながら、コンテナをずらしたじゃん。お前も不満たらたら手伝っただろ』

ミケ   『ああ、あの面倒な作業ね』

ドラ   『倉庫と倉庫の間の路地にコンテナを置いて道を半分に塞いだから、それで敵が引っかかっているんだよ、多分。チュー事で、ちょっくら始末してくるぜ』


 どうやら、ドラは南の拠点に地雷を設置する際に、敵の侵攻を少数にするため道幅を狭くしたらしい。


ねえさん 『1人で大丈夫?』

ドラ   『南はドロント兵しか来ねえから平気、平気』


 そう言ってドラが南のNPC防衛拠点へ向かった。

 その一方で、チビちゃんが、彼女の身代わりになって負傷したボスの治療をしようとしていた。


チビちゃん『はい、お薬ですよー』

ボス   『待て、今HPがガチでギリだ』

チビちゃん『大丈夫、痛くしないから。とりゃ!』

ボス   『アーーーーッ!!』

すぴねこ 『一体どこに刺したんだよ……』

チビちゃん『お尻♪』


 俺の質問にチビちゃんが楽しそうに答える。


ボス   『妻に処女を奪われた……』

ねえさん 『おめでとう』

すぴねこ 『おめでとう』

ドラ   『おめでとう』

ミケ   『おめでとう』

チビちゃん『明日は赤飯を炊くね』

ボス   『どうしてだろう。涙が止まらない』


 ボスは回復した代償に、新たなステージへの扉を開いたらしい。







すぴねこ 『そう言えば忘れてたな。ミケ、先に外へ出ててくれ』

ミケ   『何?』

すぴねこ 『やり残した事がある』


 ミケをシッシッと外に追い払い、輸送機の奥へと向かう。

 そして、燃料タンクがあろう近くで鞄から取り出した3個のグレネードのピンを抜き、床にばらまいた。


すぴねこ 『置き土産だ』


 捨てセリフを吐いて、輸送機から全力で離れる。

 途中、外で待っていたミケの腕を掴んで一緒に走り続けると、後ろからグレネードの爆破音が聞こえた。


ミケ   『……え? ええ?』


 輸送機から聞こえる爆発を聞いて、ミケが訳が分からないと言った声を上げていた。


すぴねこ 『爆破するって言っただろ』

ミケ   『……はい?』


 輸送機を見て呆けているミケと俺が見守る中、燃料タンクに火が引火したのか輸送機が大爆発した。


ミケ   『チョット、何やってるのよ!!』

すぴねこ 『今回のミッション、あまり活躍できなかったから破壊衝動が高まっててね。つい、殺っちゃった。テヘッ』


 怒鳴るミケに笑顔でサムズアップをすると、突然、インフォメーションが流れてきた。


『シークレットミッションクリア』


すぴねこ 『あんれぇ?』

ミケ   『はぁ?』


 内容を確認すれば、敵輸送機を破壊する事でシークレットミッションをクリアしたらしい。


すぴねこ 『そんなの分かるか!!』


 シークレットがシークレット過ぎる。

 これを考えたのは、ケビン? いや、違う。マップが絡んでいるから、多分、ダニエルの野郎だ。

 あの野郎は、本当に捻くれてやがる。


 そして、今まで誰もSランクでクリア出来なかったのも納得。

 今回は俺の気まぐれでクリア出来たけど、もし南の拠点で敵が引っかかってなかったら、先にメインミッションをクリアして、シークレットのクリアはできなかっただろう。そう考えると、本当に運が良かった。


ボス   『すぴねこ。今、何をした!?』

すぴねこ 『そっちからでもステマ(ステルスマーケット)バレの掲示板みてえな炎上が見えるだろ。憂さ晴らしに輸送機を爆破しただけだ』


 そう言ってから、俺がやった事を説明する。


ねえさん 『まさか、輸送機の破壊がシークレットだとは思わなかったわ……』

チビちゃん『これ、ノーヒントだと絶対Sクリア無理よね』

ミケ   『訳分からない。いきなり輸送機が爆発したと思ったら、シークレットをクリアしてた……一体何なのよ……』

ドラ   『まあ、シークレットが見つかって良かったんじゃね? という事で、こっちもクリアっと』


 ドラが話し終わると同時に、再びインフォメーションが流れた。

 今度のインフォメーションは、戦艦ノーダメージとNPC全員生存のシークレットミッションのクリア、それと本ミッションのクリアが同時に流れた。


 つまり、今回はシークレットが3つ、その全てクリアしないとSランクに到達しなかったという事らしい。


ボス   『それじゃ戻るか』


 ボスが疲れた様子で声を掛ける。

 それに全員が「お疲れー」と返信して、俺達はミッションから抜け出した。




 結果

  クリアタイム  53分49秒

  死亡者数    0人

  シークレットミッション  オールクリア


 判定

  Sランククリア


 報酬

  クリアボーナス       Sランク 20000D

  取得スキルポイント     Sランク 3ポイント(MAX) 2ポイント取得済み


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