表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第1章 過疎ゲームの6人
31/108

第31話 夢を叶えた少年 その1

 ミッションから戻って兵士サロンに戻れば、何時はプレイヤーで溢れているのに、少人数のプレイヤーしか居なかった。


「回線不良で強制ログアウトでもしたか?」

「アメリカのコアタイムならあり得るけど、向こうはまだ朝か昼前だからそれはない」

「そう言えば時差でそうだったな。だけど、日曜日だから人は居るんじゃねえの?」

「だったら、日頃の行いが悪すぎて、日曜ミサで懺悔中なんだろ」


 ドラと話していると、戸惑う俺達に気付いた男性プレイヤーが歩いて来た。


デザートキャット(砂ねこ)じゃないか。と言う事は、お前達はワイルドキャットか!?」


 俺達と言うよりねえさんを見て驚いている男性を見れば、背が高くブラウン色の天然パーマで、顎髭に隠れてるけど見事に割れたケツ顎。

 AAWの頃はヘルメットを被っていてツラは拝まなかったが、声質とアメリカ南部なまりから、暴走パトリオットのリーダーのロッドだと分かった。

 コイツはアメリカが好き過ぎて、自己愛性パーソナリティ障害を患い、ねえさんを女だと思って口説いたら男だと知って失恋したアホだ。


「あらロッドじゃない。久しぶりね」

「デザートキャットも相変わらず美人だな。男にしてはもったいないぜ」


 ねえさんにデレデレするロッドを見上げて、鼻で笑う。


「随分とご機嫌だな。ママと一緒に日曜のミサに行って、人種差別を懺悔してきたか」

「んあ? その最低な口を開くのはスピードキャットか? ……何だお前、随分と可愛いツラになってるじゃねえか。これが日本で有名なオトコノコってヤツか、クソキメエ」


 俺が話し掛けると、ロッドが嫌な物を見る様な目で答えた。

 俺とねえさんで態度が全く違う。コイツ、ねえさんがカマだと知っても、まだ惚れているのか?


「そう言うテメエは、何時からケツを顔に付けたんだ。顎からクソが漏れてるぞ」

「何だと、イエローモンキー!!」

「話すなクソが飛び散る。今すぐその(よご)れた顔を洗って、(きた)ねえ顔にして来い」

「このジャップ、もう一度ミッドウェーの海に沈めるぞ!!」

「上等だホンキー(クソ白人)。今からテメエが住んでる犬小屋に飛行機を落としてやるよ。その日に焼けた赤い首(最底辺白人労働者)を洗って待ってろ」

「テメェ、俺にぶっ殺されて、猿のはく製になりたいらしいな」

「2人とも、そこまでにしなさい。これ以上はGMコールの対象に入るわ」


 俺とロッドが言い争うのを見かねて、ねえさんが止めに入った。

 ちなみに、うちのチームでスラング交じりの英語を話せるのが俺とねえさんだけなので、会話に入る事ができない皆は、とうの昔に空いているテーブルに移動していた。

 ……多分、ロッドと関わりたくないから、逃げたが正解だと思う。


「ところでロッド。人が居ないのは何でなの?」

「そりゃ、ここがシナリオ2専用のサロンだからだよ」


 ロッドの話によると、ここはシナリオ1をクリアしたプレイヤー専用の兵士サロンで、ミッション1-4をクリアしたら強制的に入るらしい。

 と言う事は、ここに居るプレイヤーの殆どはプロゲーマーなのか?

 そのプロゲーマーの連中は、俺達の会話を盗み聞きしながら、ひそひそと話をしていた。


「それにしてもお前等、よくミッション1-4をSランクでクリアしたな。今、このサロンで話題になってたぜ」

「ふふふ。うちには優秀なポイントマンが居るからね」

「チッ、やっぱりテメエか。アメリカ人だったら、うちのチームに入れてやったのにな」


 ねえさんの返答を聞いて、ロッドが俺を見下ろし舌打ちをする。

 コイツとはワイルドキャットを作る前に何度か組んだ事があり、その時も俺のプレイだけは認めていて、今と同じ事を言っていた。


「冗談。お前と組んだら、俺が国連から差別主義者と勘違いされるじゃねえか。誰が組むか、アホ」


 ロッドに向かってシッシッと手を払いのける。


「ふん、相変わらずの減らず口だなクソチビ。だけどこれだけは先に言っとくぜ、賞金を手に入れるのは俺達パトリオットだ。ジャ○プがアメリカ様に逆らうなんて100年早いんだよ。分かったな」


 ロッドは俺を睨みながら指をさして、言いたい事だけを言うと、この場を去って行った。


「何なんだアイツ、言いたい事だけ言いやがって。こっちはミッション上がりで疲れてるのに……」

「すぴねこもすぴねこよ。無視して「ハイハイ」言ってればいいのに、反抗するから相手もムキになるのよ」

「黙ってアイツのケツにキスしろと? 残念だけど顎にフェチなんぞ感じないんでね。死んでもお断りだ」


 両肩を竦めるねえさんに反論すると、彼女は諦めたようにため息を吐いていた。







 俺とねえさんは皆が待っているテーブル席に着くと、ロッドから聞いた話を皆に伝えた。


「そうなると、次ログインしたらこのサーバーに来るの? 周りが全員ライバルだとやり辛いね」

「サーバー間の移動は出来るんだから、ログインしたらすぐに別のサーバーに行こうか」


 困った様子のチビちゃんとドラの会話を聞いて首を傾げる。


「2人とも英語で話し掛けられてもまともに会話できないんだから、問題ないだろ」

「「それが嫌なんだって!」」

「おっと!」


 2人同時に言い返されて、チョット驚く。


「それでボス、これからどうする?」

「すぴねこ次第だな」


 どうやらボスは、先ほどのガーディアンとの戦いで俺の疲労を気にしているらしい。

 ドラからの質問に答えると、視線を俺に向けてきた。

 確かにガーディアンとの戦いは疲れたけど、少し休憩すれば回復するレベルだから問題ない。


「もう一度ガーディアンと戦えって言われたら「お前がやれ」って言うけど、少し休めばミッション1-1なら行けるぜ」

「本当、お前の体力ってどうなってんだ?」

「私だったら疲れて倒れているわ……」


 俺の返答を聞いてドラとミケが呆れているが、普段から鍛えている俺とお前達を一緒にするな。

 と言う事で、2時間ほどの休憩後にミッション1-1で金を稼ぐ事が決まって、一旦ログアウトした。







 汗をシャワーで流してから、再びログイン。

 ログインした兵士サロンはロッドの言っていた通り、シナリオ1をクリアしたプレイヤー専門の兵士サロンだった。

 俺に絡んできたロッドの姿は見えず、どうやらログアウトしているか、何処かへ出かけているらしい。


 スマホで他の皆を確認すれば、ドラがログインしていた。

 だけど、アイツはここに居るのが嫌なのか、違う兵士サロンへ移動したらしく姿が見えない。

 それにしても、ドラはいつも俺より先にログインしているな。

 本人は違うと言っているけど彼女がVRだし、どうやらゲームを現実逃避の場所と勘違いしているのだろう……ふむ、ああは成りたくないな。


 それと、スマホを見た時に着信メールが3件入っていた。

 どうやら、ロッドに絡まれて気付かなかったが、ミッションから戻った後に入っていたらしい。


 1件目のメールはゲームのシステムメッセージ。

 内容はシナリオ1をクリアした事で、ショップのランクが上がり商品が増えた事と、ただのPvPエリアの案内だった。

 ショップに関しては事前に情報を得ていたし、先ほどのミッションであのクソ野郎(軍曹)も言っていたから把握している。


 そして、PvPエリアの案内だけど「たまにはPvPで遊びましょ」と、本当にただの案内だった。

 多分だけど、これはビショップが考えた内容だと思う。

 だって、AAWの頃もPvPはあったけど、如何せんプレイヤーが居なくてマッチングが成立せず、オワコン(終ったコンテンツ)化していて、アイツ、誰も遊んでくれないって、ショボンとしていた時期があったし……。


 2件目のメールもゲームのシステムメッセージだった。

 このメールは、シナリオ1を全Sランククリアしたプレイヤーだけに送られるらしい。


 内容は、バグネックス語を一部理解したという内容だった。

 アイツ等と異種族交友しろとでも? チョット無理があるんじゃないかな。だって、遊びに来いよと誘われて行ったら、体を改造されて洗脳されるんだぜ。

 斬新的な社会主義だと思うけど、俺は腐っていようが民主主義を選択する。


 3件目のメールは、ケビンからの個人的なメールだった。

 内容はチョット連絡を寄越せと書いてあるだけ。

 なんだ、この「体育館裏まで来い」みたいな文章は、俺をリンチにでもするつもりか?

 一応社長でプロデューサだし、無視するのはダメだろう。だけど、知人がゲームのプロデューサというのも遊びにくいな。まあ、今更だけど……。


 添付してあったゲーム内の連絡先に電話を掛けると、3コール目でケビンと繋がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ