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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第1章 過疎ゲームの6人
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第29話 ミッション1-4 その5

すぴねこ 『第二ウェーブ終了!』

チビちゃん『終わりかな?』

ボス   『いや、何か忘れている気がする。油断するな!!』

ドラ   『忘れてるって……そう言えば、すぴねこも同じ事を言ってたな』


 ボスの声にドラが首を傾げる。

 その時、部屋全体にスラッシュメタルのギター音が激しく流れた!!


すぴねこ 『ブハッ!!』

ねえさん 『あら?』

ミケ   『キャッ!』

ドラ   『ウルセエ!!』

チビちゃん『うにゃー!』

ボス   『そうだ、コイツを忘れてた!!』


 これだ、俺も思い出した!!

 俺が忘れていた嫌な事。それはボス戦になると流れる激しい北欧産の臭メタル!

 デザイナー担当のキースリーが、カラオケが上手いという理由だけで音楽担当を兼ねているが、コイツの好きなジャンルがスラッシュメタルだった。

 ゲームにおいて音楽は重要なファクターなのは俺だって理解しているし、過去にはゲームミュージックでも名曲は存在している。

 だけど、ハッキリ言おう。今流れている臭メタルは、一度もライブに出た事がないのに自分には才能があると勘違いしたアマチュアが、人に聴かせるという本来の目的を忘れて、暴走しただけの自慰プレイだ!!


 ちなみに、俺達の中でねえさんだけがこの音楽を気に入っていた。

 彼女曰く、エクスタシーを感じるらしい。意味分からん。


 それから、臭メタルはさらに激しくなり、突然英語の歌詞が聞こえて来た。


すぴねこ 『ダハッ! この声は、キースリーじゃねえか!!』


 AAWの時はボーカルなんてなかったけど、どうやらAAW2で進化、いや、悪化したらしい。


ドラ   『すぴねこ!! 前にカラオケで一番歌が上手いヤツが、音楽担当だって言ってたよな』

すぴねこ 『言いたい事は分かってる。だけど、何も言うな!』

ドラ   『いや、言わせてもらうぜ。コイツ、下手クソじゃねえか!!』


 俺達の混乱を他所に音楽は鳴り続け、そして穴の開いた天井から最後の敵が降りて来た。







すぴねこ 『ガーディアン!!』

ミケ   『やっぱり来たわね……』


 過去にガーディアンを倒せず、俺に泣きついたミケが顔を顰めた。


 俺達を虫けらのように見下ろす敵の容貌は、身長2m50cmを超え、全身をライトタンクと同じ装甲で身に纏っていた。

 左手に透明な盾、右手には刃渡り2mを超える剣を持ち、グレネードランチャーを両肩に搭載。

 グレネードランチャーから放たれるグレネードは、爆風にもダメージ判定があって、直撃しなくても死ぬ恐れがあった。

 接近しても盾と甲冑で正面からの攻撃は全く通じず、見かけとは裏腹に素早い剣と盾の攻撃を繰り出した。


 そして、ガーディアンの正体はバグネックスだった。

 確かに今まで戦っていた敵もバグネックスだったが、元々彼等は地球人や他のエイリアンを改造して洗脳した敵だったので、本当のバグネックスとは言えない。

 前に見た資料では、バグネックスは繁殖率が低くて人口が少ないらしい。

 なので、彼等は敵を捕まえると自分達の代わりに戦わせて、主要な箇所のみ自ら赴いていた。


 ガーディアンの弱点は、ライトタンクと同じ背中のジェネレーター。

 ただし、このジェネレーターは特殊なシールドに覆われている。

 そのシールドは、両ふくらはぎと両肘についているユニットを破壊することで解除できた。


 ガーディアンが、一番近くに居た俺に視線を向けると、膝を少しだけ折り曲げる。

 この動作はグレネードの放出の体制で俺を狙っていた。


すぴねこ 『ヤバッ!』


 グレネードが放出される前に今の場所から逃げて、ドラが隠れているコンテナの裏に身を隠す。


ドラ   『こっち来るな!』

すぴねこ 『死なば諸共じゃい!!』


 ドラと冗談を言い合う俺の後ろでグレネードが爆破して、俺が隠れていたコンテナが吹っ飛んだ。

 その様子をドラと一緒に見て冷や汗が流れる。


 もし装備が充実していたら、このガーディアンの相手はチビちゃんが担当だった。

 彼女は敵のグレネードに対抗して、M4に付けたM203グレネードランチャーを撃ち、爆風ダメージでユニットを破壊してバリアを解除するのだが、今はまだランクが低くてM203グレネードランチャーを買えず、この方法は使えなかった。


 やっぱり金を惜しまず、低ランクのグレネードランチャーを買っとくべきだったかな?

 まあ、後の祭りである。







 それからも、ガーディアンがグレネードを発射し続けて、俺達は逃げる事で死亡だけは何とか免れていた。

 それと、ずっと部屋に流れる臭メタルがウゼェ!


すぴねこ 『ボス、このままじゃキリがねえ、タイマン張ってくる。後は何とかしてくれ』

ボス   『……分かった。無茶はするなよ』

すぴねこ 『無茶しなきゃ勝てねえって、Ураааааааа(ウラーーーーーーーー)!!』


 コンテナの裏から身を乗り出すと、単身ガーディアンに向かって突撃を始めた。


 死を覚悟しての、万歳アタック!!

 今の俺には、頭に響く臭メタルも気にならない。


 ガーディアンは俺に気付くと、グレネードの放出をやめて剣と盾を構えた。

 そう、このガーディアンのもう一つの攻略法。それは、誰かが接近することで、グレネードの砲撃が止む事だった。


 ガーディアンが剣を振りかぶる。剣が降ろされる前に床を蹴り、右へエアリアル(側宙)

 その直ぐ横をガーディアンの剣が空気を縦に切り裂いた。


 次に来るのは盾によるシールドバッシュだと予測。膝を右に曲げ飛ぶフリをして左へステップ。

 俺を盾で殴ろうとしたガーディアンがフェイントに騙されて、左腕を空振った。

 左腕を振った事で相手の胸元のガードが開く。その、胸元に向けてショットガンを放った。


 近距離のショットガンの攻撃にガーディアンが仰け反って隙が生まれる。

 素早く背後へ回ると、ショットガンのポンプを引き弾を装填して、ふくらはぎのユニットを狙う。

 しかし、トリガーを引く前に、ガーディアンが振り返りざまに剣を振ってきた。

 その攻撃をバックステップで回避。


ボス   『まだ撃つな!! ドラ、今の内に地雷を仕掛けろ!!』

ドラ   『お、おう!!』

ボス   『ミケは右肘、ねえさんは左肘を狙え』

ミケ&ねえさん『了解』

チビちゃん『私は?』

ボス   『撃ってもすぴねこに当たったらマズイ。チビちゃんは、そうだな……応援してくれ』

チビちゃん『了解! すぴねこ君、がんばれー』


 ガーディアンが後ろを向いたのを見て、ボスが指示を出す。

 彼の考えた作戦は、ふくらはぎのユニットを地雷で破壊して、肘のユニットは射撃で破壊するつもりなのだろう。

 つまり、少なくても両肘のユニットが破壊されるまでは耐えろと……それと、チビちゃん応援ありがとう。


 相手との距離は約3m。

 これ以上接近すれば剣と盾の攻撃を回避するのが難しく、逆に離れるとグレネードが襲ってくる。

 そう考えていると、ガーディアンが剣を後ろに引き、次の瞬間、3mの距離を一気に縮めて高速の突きが俺を襲った。


すぴねこ 『内角高めのストレート』


 どんな速い攻撃でも、真っすぐ来るのが分かってれば問題ない。こっちはビショップが作ったmodのおかげで、動体視力を鍛えている。

 体を横にして突きを避けると、突進してきたガーディアンの顎に銃口を押し当てて、ショットガンをぶっ放した。


 ショットガンの銃撃がアッパーカットの様にガーディアンの顎を撃ち抜く。

 ガーディアンは強烈な顎への衝撃に体を仰け反らせた状態で動けず、俺も体当たりを喰らいながら無理な体勢での射撃で後ろに倒れた。

 次の瞬間、ガーディアンから金属音が2回連続で鳴り響いた。


ミケ   『右肘に命中!!』

ねえさん 『左も破壊したわ!』

ボス   『すぴねこ、ドラの仕掛けた地雷に誘導しろ!』


 ガーディアンの動きが止まったのを見て、ミケとねえさんが両肘のユニットを破壊したらしい。

 ガーディアンの肘を見れば、ユニットは破壊され電流が走っていた。


 上を向いていたガーディアンがゆっくりと正面の俺を向く。

 顔は兜で見えないが、ゲームなのに怒りが全身から溢れている感じがした。


すぴねこ 『来いよ、クソ野郎』


 ガーディアンに向かって中指を突き立てる。

 これを合図に、俺とガーディアンとの最終ラウンドが始まった。


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