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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第1章 過疎ゲームの6人
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第26話 ミッション1-4 その2

 飛行場は所々にある照明塔の光で明るかった。俺達はその中を倉庫の影に隠れながら移動を続ける。

 時折、巡回中のドロント兵を見つけるが、俺とドラで発見される前に始末して先に進んだ。

 ちなみに、ドラが敵を倒す度に、後ろからヤジが飛んで来た。


チビちゃん『必殺! 殺劇ドラ荒剣!!』

ねえさん 『我が一撃を喰らうがいい! 暗黒ドラ吼爆砕陣!!』

ボス   『永劫なる風よ! 我が意志に集え! ドラ舞旋煌閃!!』

ドラ   『もう、勘弁してください……』

すぴねこ 『ウゼェ……』


 お仕置きなのだろうけど、ドラと一緒に戦っている俺からしたら迷惑だった。

 そして、順調かどうかはさておいて、俺達は敵に見つからず南西の物見櫓の前まで到着した。


すぴねこ 『それじゃ、上の敵さんを倒してくるぜ』

ボス   『気を付けろ』

すぴねこ 『匍匐中のねえさんを踏みなれてるから楽勝、楽勝』

ねえさん 『それ、どういう意味かしら?』

すぴねこ 『接近されたスナイパーは雑魚って意味』


 ねえさんの質問に答えると、彼女は苦笑いして俺を追い払うようにシッシッと手を払った。

 このジェスチャーの意味は、「言っている事は理解出来るけど、例えが悪い。早く倒してこい」だろう。


 物見櫓に立掛けられた梯子を静かに上る。

 4階ぐらいある高さの櫓を登って顔だけひょっこり出すと、櫓のスナイパーは俺に気付かず西側の監視を継続していた。


 頭を引っ込めて、櫓台を適当にコンコンと叩く。

 耳を澄ませば、ノックに気付いたスナイパーの足音が次第に近づいて来た。

 スナイパーが端まで来て下を覗くと同時に、その足を掴んで引っ張る。


すぴねこ 『ゴーツーフォール』


 スナイパーは慌てた様子で、櫓の上から地上に紐無しバンジーを決行した。

 その直後、ボスから怒鳴り声が来た。


ボス   『落とすなら事前に言え!!』

チビちゃん『危なくボスに直撃する所だったよ』

すぴねこ 『あ、悪りぃ。そう言えば居たんだったな』


 敵を倒すことに集中していて、味方の存在を忘れていた。

 まあ、誰も死んでないなら、気にする必要もないだろう。







 誰も居なくなった櫓に登り、双眼鏡を取り出して管制塔の周りを偵察する。


 ボスの言っていたタレットらしき物はなく、周りの建築物も倉庫だけ……。

 まるで侵入してくださいと言っている様な、隙だらけの警備に眉を顰める。


 あのダニエルがこんな易しいMAPを作るかと考えたら、間違いなく否と答えるだろう。

 つまり……確実に何か罠がある。


 再び周辺の倉庫を観察する。

 そして、観察している内に、他の倉庫にはなく管制塔周辺の倉庫にだけある置物に気付いた。


すぴねこ 『貯水タンクか……』


 タレットを隠すには十分な大きさだと思う。

 その貯水タンクが全部で10……もしあれ全部にタレットが隠されているならば、管制塔に近づいた途端、ハチの巣になるだろう。

 貯水タンクを1つづつ潰す? そんな時間はない。だとしたら、他のルートがあると考えた方が良い。


 管制塔の裏手は滑走路だから、タレットを隠すような建築物は見当たらない。

 ただし、滑走路は照明塔の明かりで照らされているため、近寄ろうにも隠れる場所がなかった。

 そして、北東の物見櫓が滑走路を監視していた。あの物見櫓を何とかしないと間違いなく発見される。

 だけど、あの物見櫓に近づくには滑走路を渡る必要があり、近寄ろうにも近づけなかった。


 考えを切り替えろ。管制塔に近づけないのなら、別のルートが必ずある筈だ。

 問題はそのルートがどこにあるかだけど、確実にヒントはある。


 俯くと、ふと目の前にあるサーチライトが目に付いた。

 ……このサーチライトは、どこを監視していた?


 スナイパーを倒す前に見た敵の行動を思い出す。

 ここのスナイパーは管制塔周辺ではなく、北西……ただの倉庫エリアを照らしていた……。


 双眼鏡を覗いて、今までノーチェックだった北西の倉庫エリアを観察する。

 観察した結果、他の場所と比較して、巡回しているドロント兵の数が多い事に気付いた。


 これがヒントだったのか……双眼鏡から目を離し考えてはじき出した俺の答えは、地下ルートの存在だった。







 インカムを通してボス達に管制塔に近づくのは危険な事と、地下ルートの可能性を報告する。


ボス   『……なるほど。今回はどこに罠があるか分からなかったが、すぴねこは目の前に見えるルートその存在が罠だと言いたいんだな』

すぴねこ 『そうなるのかな? まあ、そうなんだろうな。あの倉庫エリアは、何もないにしては巡回している敵が多過ぎる。行ってみる価値はある』

チビちゃん『北東の物見櫓のスナイパーを倒して、裏からは行けないの?』

ねえさん 『まだ行ってないから分からないけど、南側からだと管制塔が邪魔で狙えないと思うわ。そうなると北側ルートからだけど、そっちへ行くとなると、どのみち倉庫エリアを通る事になるわね』

ミケ   『今の話だと、北へ移動してから、物見櫓のスナイパーを遠距離で倒して、裏から回るルートという手もあるって事ね』

ドラ   『あの倉庫エリアをしらみつぶしに探すよりかは、楽そうだな』


 時間を見れば、ミッション開始から20分が経過していて、目標時間のリミットまで後70分だった。


ボス   『よし、北西へ向かうぞ。まず、倉庫エリアの敵を清掃する。その時点で地下通路を見つければ、そこから突入。地下通路が無ければ、倉庫エリアの探索と奥の物見櫓を制圧の二手に別れる事にする』


 ボスの決定に全員が了解と返答。

 そして、俺達はスタート時点では見向きもしなかった、倉庫エリアへの移動を開始した。







 倉庫エリアに移動すると、俺達は3組に分かれて行動を開始した。

 俺のパートナーはミケ。後の組み合わせは、ドラとねえさんに、ボスとチビちゃん。

 AAWの頃から別行動をする時は、毎回この組み合わせになっている。


 ちなみに、仲の悪いミケが俺のパートナーな理由だけど、ミケがチームに加入した時にFPSについて全く知らない彼女を俺が指導して、それ以来ずっと俺が面倒を見るハメになった。

 AAWの時は過疎過ぎてどんなクソ野郎でも大歓迎だったから、俺もミケを逃がさないために優しく接していたけど、今となっては少し後悔している。


 前方に巡回中のドロント兵のライトが見えたから、片手を上げて後ろのミケに止まれと合図を送る。

 俺の合図にミケの足が止まり、銃を構えるのが気配で分かった。

 ゲームで気配なんて感じるのかと思うけど、そこは5年間同じゲームをしていた経験と、ミケとの付き合いの長さから出来る代物なんだと思う。


すぴねこ 『2体、コンタクト』


 これは他のメンバーへの報告。


「通り過ぎたら殺るぞ」

「了解」


 インカムを切り替えるのも面倒だから直接小声でミケに言えば、彼女は返答して俺が動くのを待っていた。

 ドロント兵が俺達に気付かず前を通り過ぎるのを見て、背後からグロック M19を構えて、レーザーサイトの光を後頭部に当てる。

 そして、合図を送る事なく2人同時にトリガーを引き、ドロント兵を撃ち殺した。


すぴねこ 『クリア』


 他のメンバーへ報告後、ミケと一緒に死体を暗闇に隠した。


「これで私達が2組、ドラ達が1組、ボスが1組倒したけど、あとどのぐらい居るのかしら?」


 インカムをOFFにしたミケが話しかけてきたから、チラっと彼女を見る。

 今は暗視ゴーグルを付けて腐った物を見る様な目が隠れているから、俺も普通に接せられた。


「物見櫓から見た時に最低8組は居た。まだ半分だろ」

「確かにこのエリアだけでその数は多いわね。すぴねこが怪しいと感じたのも納得だわ」

「だろ。問題は敵が多いだけで、まだ何も見つかってない事だけどな」


 俺が言う通り、倉庫を調べようにも、入口は鍵が掛かった堅い鉄の扉で入れず、他に侵入できる様な場所もなく、まだ地下通路のちの字も見つかっていなかった。


「まだ半分も進んでいないわ。まずは全部調べましょ」

「そうだな」


 ミケに促されて、先へと進む。

 そして、ドロント兵を倒しながら倉庫エリアを進むと、唯一中から明かりのある倉庫を見つけた。


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