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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第1章 過疎ゲームの6人
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第25話 ミッション1-4 その1

 太陽は大地に沈み、血のような赤い月が大地を照らす。

 荒野の惑星は静かな夜を迎えていた。


 ミッションが始まると、俺達は切り立った崖の上に立って、崖下の飛行場を見下ろしていた。

 状況を確認する前に、俺達のスマートフォンから着信音が鳴り響き、静かな空気が消え去る。

 電話はいつも一方的でこちらの都合なんて考慮しない、情緒の欠片のない存在だと思う。

 全員が同時に画面を見れば、軍曹からメールが届いていた。


 どうやら、あのNPCのクソ(軍曹)はまだ生きているらしい。クタバレと切に願う。

 メールを開くと、今回のミッションの詳細が書かれていた。


『GPSで、お前達がバグスの飛行場に居る事は確認した。

 こちらは、救援が来たから本部に戻っている最中だ。

 事前の情報だと、バグスの航空機は全てドローンで操作されているらしい。

 そして、操作は飛行場の管制塔からの指示だという事までは分かっている。

 お前達は、管制塔を制圧して、敵の航空機を停止させろ。以上だ』


「…………」


 メールを読んだ後、全員が無言でスマートフォンをしまった。


 ここまでがオート進行。

 喋りたくても喋れず、動きたくても動けず、やっと動けるようになるのと同時に、全員が同時にため息を吐いた。







「残念な事に、あの軍曹は生きているらしい」


 ボスの呟きに全員が項垂れた。

 これほど死ぬことを願われているNPCは居ないだろう。

 ついでに言うと、GPSで俺達を監視しているとか、マジキモイ。


「あのクソ(軍曹)、たった6人で飛行場を制圧しろとか、無茶を言いやがるぜ」

「本当だったらNPCが居たんだろうけど、前のミッションで全員死んだんだから、仕方がないじゃない」


 ドラが肩を竦め、ミケが頭を横に振ってため息を吐いていた。


「すぴねこ、敵の状況を確認してくれ」

「アーマーの貯金は貯まったんだろ。ボスも双眼鏡を買えよ」

「サイボーグの為には、一銭も無駄に出来ん」


 ボスを軽く睨んでから双眼鏡を覗き、眼下の飛行場を確認する。

 飛行場は照明のライトに照らされて、他の場所と比べて明るかった。


 まず、俺達は飛行場の西側に居た。

 入口は飛行場の西側にあって、横には検問所が建っていた。

 検問所を見れば、2体のドロント兵が誰も来ないゲートを監視していた。


 次に、飛行場全体の構成を確認する。

 西側は倉庫が立ち並び、滑走路は東にあって南北に伸びていた。そして、飛行場の中心で滑走路の横に、今回の目的地の管制塔が建っていた。

 それとは別に、南西と滑走路を挟んで北東の奥に物見櫓が建っていて、サーチライトを照らすスナイパーが飛行場を監視していた。


 最後に管制塔を確認する。

 ここから見た感じだと、高さ10階建てぐらいだろう。

 管制塔の周辺を確認しても巡回している敵は居らず、中への突入は楽そうに見えた。







 目から双眼鏡を離して、確認した内容を全員に伝える。


「ここから見る限り、入口と物見櫓のスナイパーさえ始末すれば楽勝な気がするけど、まあ、何かあるだろうな」

「無い方が変だもんね」


 考えを述べると、チビちゃんが同意して頷いた。


「目的地周辺に居るはずの監視がない……つまり監視の要らない何かがあると……」

「多分ね」


 ボスの話に、同意の意味合いを込めて軽く肩を竦める。


「恐らくタレット(自動機関銃)が隠されていると、考えた方が良いだろう」


 ボスは少し考えてから、そう結論づけた。


「それで、そのタレットは見たの?」


 ミケからの質問に頭を横に振る。


「ここからじゃ見えなかったぜ。多分、隠されているんだろうな」

「つまり管制塔に入るには、タレットもしくは阻害してきそうな何かを探してからじゃないと、無理そうね」


 ねえさんの話を聞いてボスが頷く。


「よし、まずは入口の敵を倒して、手前の物見櫓まで移動する。櫓の上から見れば何かが分かるだろう」


 全員がボスに頷くと、インカムをオンにして暗視ゴーグルを装着。

 そして、誰が用意したのか知らないが、崖の前に用意されていた包まったロープを崖下に垂らす。

 ロープにフックを付けると、全員が無言で崖下へと降りて行った。


 格好良く行動しているけど、ロープを垂らしてから崖下に降りる行動は全部オートだった。







 崖下に降りた俺達は、飛行場入口近くまで移動すると、俺とミケだけでゲートへ接近する。


すぴねこ 『誘導するから、頼むぜ』

ミケ   『任せて』


 ミケの返答を聞いてから行動を開始。

 見つからない様に背を低くして回り込むように移動、検問所の窓口の下に忍び込んだ。


ミケ   『ドロント兵は動いてないわ』

すぴねこ 『了解』


 小声で返答してから検問所の壁を軽く叩く。すると、音に釣られたドロント兵が動いたのが壁越しに伝わった。


ミケ   『2体移動開始』


 離れた場所で監視しているミケの報告を聞きながら、今度は9㎜パラベラム弾を1つだけ取り出して、少し離れた場所へ投げる。

 俺の方へ近寄って来たドロント兵は、弾丸が地面に落ちた音に反応すると向きを変え、俺から離れて警戒しながら反対側へと移動した。


ミケ   『手前の敵をやるから、後ろの敵をお願い』


 声を出せない代わりに、ミケのいる方に向かって手を振る。

 そして、短銃をホルスターから抜くと、敵の後頭部にレーザーサイトのレーザーを当てた。


ミケ   『さん、にー、いち……』

ドラ   『ミケちゃんスーパーセクシーショット!』


 ミケ合図と同時に、ドラがウケを狙った渾身の一言を放つ。

 耐えろ俺の腹筋。笑い出すのを堪えて短銃のトリガーを引いた。


 俺以外の全員が噴き出す中、俺とミケのグロック M19から弾丸が発射されて、シュパッという音が2回鳴る。

 俺が撃った弾丸はドロント兵の後頭部に命中。

 だけど、ミケはヘッドショットを外して、弾丸はドロント兵の胴体に当たり、敵はまだ死なずに応援を呼ぼうとしていた。


 敵が応援を呼ぶ前にインプラントを起動。スローな状況で、倒れなかった敵の頭部目掛けて弾丸を放つ。

 敵の側頭部に弾丸が命中して、2体目のドロント兵は応援を呼ぶ前に死亡した。


すぴねこ 『ク……クリアぶわははははっ。ミケ、腹筋の鍛え方が足りねえぞ!』

ミケ   『今のは私じゃなくて、ドラのせいよ!!』

ドラ   『ミケ、お前さんは突発的トラブルの対処に甘めえ。今回はすぴねこがカバーしてくれたから何とかなったけど、次からは気を付けろ』


 ドラが真面目なツラをして諭しているけど、コイツはただ単純に真面目なミケを弄ってるだけだ。


ミケ   『……ご忠告ありがとう。だけど、その前にトラブルの根本的存在を始末しても良いかしら?』

ドラ   『やべえ、目がマジだ』


 ミケが自分に銃を向ける様子に、ドラが両手を上げて降参のポーズをする。


すぴねこ 『おい、何時までも遊んでないで、この死体を移動させるのを手伝えよ』


 助け船を出すつもりはないけれど、殺したドロント兵の死体が見つかる前に隠したかったから止めに入った。


ドラ   『了解、了解』


 ドラが良い口実が出来たとばかりにミケから逃げ出すと、俺と一緒に死体を引き摺って岩の裏に隠した。


ボス   『ドラ。面白かったけど、あまりミケを弄るな』

ねえさん 『そうよ。彼女は繊細なんだから、程々にしておきなさい』


 神経質な性格も繊細と言えば、か弱く聞こえる。物は言い様だと実感する。


ドラ   『ういーす』


 年長者の2人に窘められてドラが全く誠意のない謝罪をする。その様子に窘めた2人は肩を竦めた。

 若干身内からトラブルが発生したが、俺達はゲートを通過すると、最初の目的地の南西にある物見櫓への移動を開始した。


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