第22話 ミッション1-3 その5
岩山の西側へ移動すると、東側と同じように平地に通信タワーが建っていた。
タワーから1.3Kmほど離れた場所にあった大きな岩の裏にジープを止めて、通信タワーまで徒歩で移動を開始する。
すぴねこ 『予想していたけど、やっぱり東側と同じ構造だったか』
チビちゃん『なんで分かったの?』
すぴねこ 『あのクソが2つあるって言ってたから、隠れていたタワーを隠すために、2つ目のタワーを露骨にアピールしていると思っただけさ』
チビちゃん『なるほど、なるほど。捻くれてますねー』
ミケ 『あのデペロッパーの7人が捻くれてるのは、前からでしょ』
ドラ 『AAWで潰されかけて、さらに性格が捩じくれた気がするけどな』
ねえさん 『それは言えるわね』
会話しながらも敵の襲撃を警戒しつつタワー近づいて、タワーまで残り1Kmの場所で物陰に隠れる。
ミケ 『タワ―にスナイパー2体、タワーから東に300mの地表にも2体。それとタワーの下にも5体のドロント兵と、1体のライトタンクが居るわ』
ミケの報告にボスが顔を顰める。
ボス 『ねえさん。地上から通信装置を狙えるか?』
ねえさん 『さっきと同じ構造だったら、踊り場が邪魔で無理だと思うわ』
ボス 『そうか。ミケ双眼鏡をくれ。俺が観測手をやる』
チビちゃん『私がやっても良いのよ』
ボス 『同じネタはウケないぞ』
チビちゃん『…………』
ボスに言われて、チビちゃんがショボンとする。
ボス 『ねえさんは狙撃可能な場所まで移動したら、スナイパーを狙ってくれ』
ねえさん 『了解』
ボス 『地上の敵はミケが遠距離から倒せ』
ミケ 『了解』
ボス 『それでライトタンクはミケに向かうはずだ。すぴねこは近づくライトタンクの背後に回って、ジェネレータを破壊しろ』
すぴねこ 『おっけー』
ボス 『よし、移動開始だ』
ボスの命令に「了解」と答えると、俺とねえさんが先行して後の皆が後ろに続いた。
敵に見つからない様に移動して、ねえさんが狙撃ポイントから地表のスナイパーを2体倒した。
この攻撃で敵は俺達を見つけて、ドロント兵とライトタンクが近づき始めた。
ボス 『敵は全員、ねえさんに狙いを付けている。すぴねこ、誘導しろ』
すぴねこ 『了解』
ボスの命令で、隠れていた場所から身を乗り出して、ワザと敵に発見される。
敵スナイパーは、ねえさんよりも距離の近い俺を狙いにしたのか、すぐに隠れた岩にライフル弾が当たった。
ねえさん 『すぴねこ、ありがとう』
そう言って、ねえさんが狙撃を続けた。
ねえさんがスナイパーを倒している間に、ドロント兵5体が走って近づいてきた。その内の1体をミケが狙撃して倒す。
1Kmの距離を走って、何もできずに死んだドロント兵を哀れに思う。合掌。
倒された味方を見たドロント兵が、近くの遮蔽物に身を隠そうとするのを、さらに追加でミケが一体を始末した。
ミッションの前に聞いた話だと、ミケも頭と腕に動体視力系のインプラントチップを埋め込んだらしい。
インプラントを起動すれば、敵の動きが遅く見えるので動いている敵も狙いやすくなる。
ちなみに、ミケはあの手術について文句を言ってたけど、それは俺達に言わずにビショップ、いや、アイツはゲームに関しては仕様書を見て作ってるだけだから、キャラ設計担当のチャーリーに言え。
俺が回想している間に、ねえさんが最後のスナイパーを始末した。
そして、ミケが3体目のドロント兵を倒すと、残りの敵が一番キル数の多いねえさんを狙って特攻を開始した。
ミケ 『手は出さないで』
キル数を稼ぎたいミケからの注文に、全員が何もせず待機する。
そして、ミケが最後のドロント兵を倒し切ったタイミングで、重装備で遅れて来たライトタンクがミケに向かって特攻してきた。
そのライトタンクが、隠れている俺を無視して通り過ぎる。
すぴねこ 『AIの仕様とはいえ、ご愁傷様』
背中のジェネレータにショットガンをぶっ放す。
ライトタンクは装甲が剥がれて動きを止め、最後はミケによって始末された。
ドラ 『さっくり終わったな』
すぴねこ 『相変わらず、お前は何もしてないけどな』
ドラ 『地雷は進軍ミッションだと仕掛ける場所なんて限られてるし、通信系もなぁ……AAWの頃と違ってまだ支援要求ができねえんだよ』
ドラがそう言うと、ため息を吐いた。
ちなみに、ドラの言う支援要求とは、通信系のスキルを上げ続けると、1ミッションに一度だけ、本部に爆撃支援を要求することができる。
それで、難攻不落の場所も攻略可能なのだが、今はスキルが低いし、俺の予想だが、まだ地表に戦艦が降りてないから支援が出来ない状態なのだろう。
つまり、仕事ができないドラを弄れるのは、今だけと言う事だ。
すぴねこ 『だったら、通信装置を破壊して来いよ』
ドラ 『あっ。俺、高所恐怖症』
すぴねこ 『知ってる。で?』
ドラ 『VRでも高い所って苦手なんだ』
すぴねこ 『いいから行ってこいよ。こっちは疲れてんだから、少しは休ませろ』
ドラ 『仕方がねえな、運転替わってやるよ。だから、タワーを登るのはお前な』
ミケ 『二人ともウルサイわね。嫌なら私が登るわ』
すぴねこ&ドラ『『どうぞ、どうぞ』』
俺とドラのネタにミケが呆れながら車に乗る。
俺も後部座席に乗り込むと、ドラの運転で通信タワーの近くまで移動した。
ミケをタワーに登らせて休んでいると、インフォメーションが表示された。
どうやら、ミケは無事にタワーの通信装置を破壊したらしい。
内容は通信タワーの破壊のシークレットミッションクリアだった。
ミケ 『これで最後だったみたい』
ミケからの報告に、疲れから安堵のため息を吐く。
すぴねこ 『時間は……1時間40分か。残り20分でどれだけ移動できるかだな』
ボス 『とりあえず、敵の援軍は無いみたいだから、車で移動するぞ』
ドラ 『了解』
ミケが車に乗ると、ドラがジープを走らせた。
敵に襲われる事なく車での移動していると、遠くの方で飛行場の管制塔が見えてきた。
ボス 『目的地が見えてきたな』
チビちゃん『本当に敵が襲って来ないね』
ドラ 『そのために苦労したんだから、これで大群が襲って来たら、俺は暴れるね』
すぴねこ 『勝手に暴れてろ』
ミケ 『待って、何か飛んで来てるわよ』
ミケが見ている空を見れば、敵の爆撃機らしき戦闘機がこちらに近づいていた。
ねえさん 『もしかして、あれが敵の増援』
すぴねこ 『どうする、隠れるか?』
ドラ 『隠れると言っても、場所がねえよ』
確かにドラの言う通り、辺り一面を見ても隠れる場所は何所にもなかった。
チビちゃん『ボス、どうする?』
ボス 『皆、聞け』
真剣な表情のボスに、全員が固唾を呑む。
ボス 『神に祈るぞ。アーメン』
そう言って、ボスが胸元で十字を切って神に祈り始めた。
ミケ 『真面目に聞いた私が馬鹿だったわ』
ねえさん 『呆れるわね』
ドラ 『ボスも狙ってボケるよな』
すぴねこ 『しかも、本当にやばい時を狙うから、洒落にならねえよ』
チビちゃん『そこが好きなんだけどね』
俺には、この夫婦の恋愛感情が理解できない。
俺達が慌てていても爆撃機は近づいて来ていた。
そして……何事もなく通り過ぎて、飛行場へと降りて行った。
チビちゃん『あれ? 何もなかった?』
ボス 『俺の祈りが通じたんだろう』
ねえさん 『それはないわ』
ミケ 『通信装置を全部破壊したから、私達を敵だと思わなかったとか?』
すぴねこ 『まあ、それしかねえな』
ドラ 『よっしゃ。んじゃ全速で飛ばすぜ。全員何かに捕まってろ』
ドラがそう言うと、アクセルを踏んでジープの速度を上げる。
そして、俺達は敵と戦う事なく飛行場までたどり着き、目標時間ギリギリでミッションをクリアした。
結果
クリアタイム 1時間58分32秒
死亡者数 0人
シークレットミッション オールクリア
判定
Sランククリア
報酬
クリアボーナス Sランク 10000D
取得スキルポイント Sランク 5ポイント(MAX)
初回Sランククリアボーナス 5000D




