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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第1章 過疎ゲームの6人
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第21話 ミッション1-3 その4

 見つけた洞窟は、道幅10m、高さ8mぐらいあるわりと広いトンネルだった。

 そして、中に入ってすぐ、道路の端にバグネックスが移動に使っていると思われる車を見つけた。

 車はジープの様な形をした6輪車両で、運転席と助手席、後部席に4人が座れるぐらいの大きさだった。


ボス   『なるほど。コイツが今回の罠か』


 ボスが車を見て呟き、ため息を吐いた。


チビちゃん『どういう事?』

ボス   『この車はあからさま過ぎる。すぴねこ、お前はどう思う?』

すぴねこ 『もし、この車がエンジンを掛けるのと同時に爆破しなかったら、その考えで合ってるぜ』


 ボスに肩を竦めて答えると、ミケが訝し気に俺達を睨んだ。


ミケ   『2人で納得されても、分からないんですけど?』

すぴねこ 『俺達が乗っていた装甲車が敵の空爆で爆発するというヒントはあっただろ』

ミケ   『……つまり、この車で道路を走ったら、敵の空爆を受けるって事?』

ボス   『そうなるな。先にクリアした連中が、全員目標時間内にクリア出来ずに、Dランクだった理由がつく』

ねえさん 『だったら、この洞窟の道路を行くのが正解なのかしら』


 ねえさんが洞窟の奥を見ながら話し掛ける。

 その洞窟は、照明が付いているとはいえ薄暗く、奥へと道路が続いていた。


ボス   『恐らく、こっちも不正解だろう。予想だが、地雷が仕掛けられているんじゃないか?』

ドラ   『なるほど……他が目標時間内にクリアしてれば馬鹿にしてるけど、今の状況だとあり得る話だな』

チビちゃん『と言う事は、やっぱり南の何もない場所を行くのが正解って事?』

ボス   『正解かどうかは分からないが、行く価値は十分にある』

ミケ   『それが本当に正しいルートだったら、本当に性格が捻くれてるわ!』


 マップ担当のダニエルの事が嫌いなミケが叫んで、床を蹴っ飛ばす。


ボス   『ドラ、車に爆弾の類はあったか?』

ドラ   『残念だけど、なかったぜ』

ボス   『よし、全員車に乗れ。予定通り、俺達は南のルートを行くぞ』

すぴねこ 『あ、運転したい』

ボス   『左ハンドルだぞ』

すぴねこ 『向こう(アメリカ)で乗った事があるから、大丈夫』


 ボスの命令で全員が車に乗る。

 俺が運転席に座り、隣の助手席にドラが乗った。


すぴねこ 『オフロードのジープでオートマかよ、まるでドラみたいな車だな!!』

ドラ   『この車、お前に似合ってるぜ』


 二人で褒め合っているが、言っている中身は「クソだせぇ!」。


 エンジンを掛けた後、アクセルを踏んでジープを走らせる。

 俺達を乗せたジープは洞窟を抜けると、岩山を迂回する何もない南へと走らせた。







 ジープに乗って、岩山の南側へ移動。

 荒れた荒野に敵は人っ子一人居らず、ジープは道なき道をガタガタ揺れながら走っていた。

 どうやら、今回のミッションは、俺が予想していたよりも移動距離が長いらしい。

 中央に立ちふさがる岩山は楕円形だったのか、5分以上ジープを走らせているのに、まだ岩山の半分ぐらいしか進んでいなかった。

 もし、ジープに乗っていなかったら、間違いなく時間切れだっただろう。


ボス   『酔いそうだな』

ドラ   『何だ? 車酔いするタイプなのか?』

ボス   『……実はな』

ドラ   『VRでゲロだけはやめとけ。下手すりゃ寝ゲロで窒息死だぞ』

ボス   『しねえよ!』


 ボスとドラが話している後ろでは、チビちゃんが双眼鏡を覗いて索敵をしていた。


チビちゃん『敵が居ないけど、本当にこのルートで合っているのかな?』

すぴねこ 『敵が出て来たら出て来たで、轢き殺すだけだけどな』


 現実でやったら捕まる行為も、ゲームなら許される。車は簡単に人を殺せる身近な兵器だと思う。


チビちゃん『あ、何かある!』


 チビちゃんが、岩山の山頂付近を指さしながら声を出した。

 ジープを停止させて、その小さな指の刺した方角を見れば、岩山の窪みの間にアンテナらしき物が隠されていた。


すぴねこ 『……本当にあるとは思わなかったな』

ミケ   『チョット待って。今、聞き捨てならない事を聞いた気がするわ。ねえ、すぴねこ。南側のルートを提示したのって、貴方よね』

すぴねこ 『何で怒ってるの? ここは、凄いって褒め讃えて、ついでに崇めろよ』

ミケ   『別に怒ってないわよ』

すぴねこ 『自覚してないみたいだけど、男を常に下に見ている性格ブスと同じで、言葉に圧があるぜ』


 俺とミケが言い争っていると、ボスがあきれ顔で止めに入った。


ボス   『じゃれ合うのは後にしろ。ねえさん、あのタワーを狙えるか?』

ねえさん 『いけるわよ』

ボス   『よし、頼む』

ねえさん 『了解』


 ねえさんはジープから降りると、近くの岩の裏に回ってスナイパーライフルを岩の上に設置する。

 そして、スコープを覗いて照準を調整すると、ライフルのトリガーを引いた。


ねえさん 『……ヒット。通信装置を破壊したわ。これで2個目だけど、インフォは流れないわね』

ドラ   『やっぱり2か所以上あるじゃねえか。あの軍曹、本当に詐欺だな』

ボス   『問題はシークレットの通信タワーがここだけかどうかだな……』


 ボスが嫌な事を言う。俺を含めた全員が、ボスを苦虫を噛み潰したような表情で見た。

 別にボスが気持ち悪い訳じゃない。


ミケ   『あるとしたら、反対側?』

ボス   『常識から考えて、洞窟の中に電波塔はないだろう』

ねえさん 『それだと、さっき言ってた空爆が来るんじゃないのかしら?』


 そう言いながら、仕事を終えたねえさんがジープの後部座席に乗り込んだ。


ボス   『あの軍曹が言っていただろ、通信タワーを破壊しないと増援が来ると。つまり、逆に考えれば、タワーを破壊すれば増援が来ないと言っている。そして、増援とは何かを考えれば、バグスの空爆の事だろう』

すぴねこ 『つまり、先にクリアしたパーティーは、こっちのタワーを破壊しなかったから、空爆されたと?』

ボス   『深読みし過ぎたか?』

すぴねこ 『うーーん。確かにこっち側は何もなさ過ぎる……な』

ミケ   『それは裏をかいたからじゃないの?』

すぴねこ 『……裏をかいたと思って余裕をかましてるところに、空爆でドーン』

ドラ   『俺なら、やるな』

すぴねこ 『ドラがやるなら、アイツ等もやる。絶対にやって来る』

ドラ   『それは、それで嫌な言い方だな!!』


 ドラと俺は向かい合うと、同時に中指を突き立てた。


チビちゃん『だけど、今は……ミッション開始から50分だから、反対側に回って間に合うの?』

すぴねこ 『敵がどう出てくるかだけど、移動手段はあるから間に合うと思うぜ』

ボス   『よし! 元々今回はSランクを考えてない。北も回って行くとしよう』

すぴねこ 『オッケー。そんじゃ、イージーライダーで行こうぜ』

ドラ&チビちゃん『『born to be wild!!』』


 イージーライダーと聞いて、ドラとチビちゃんが歌い始める。それにつられて、全員が一緒にborn to be wildを歌い始めた。

 俺はジープをUターンすると、皆と歌いながら来た道を戻った。







 戻って洞窟の前を通り過ぎると、北側の通路にジープを乗せて走らせた。


すぴねこ 『これだけ周りに何もないと、ルート66を走ってる気分になるな』

ミケ   『そうなの?』

すぴねこ 『実際にルート66なんて走った事ないから、知らんけど』

ミケ   『聞いた私が馬鹿だったわ』

すぴねこ 『おっと、敵がお出ましだぜ。全員、何かに掴まってろ』


 通路の脇からドロント兵が現れたから、アクセルを踏んで轢き殺す。


すぴねこ 『はい、ドーーン!』

ドラ   『さすがバグス製だな。へこみもしねえ!』

すぴねこ 『アイツ等、俺達に撃たせて、ライトタンクで耐久テストしてるからな!』

ボス   『油断するな。敵の車両が来たぞ』


 ボスの声に振り向けば、岩山から岩に偽装されていた扉が開いて、バグスを乗せた3台のジープが俺達に向かっていた。

 その様子に、後部座席の全員が銃を取り出し、追撃の準備を始める。


ドラ   『ねえさん、場所を替わってくれ』


 助手席よりも後部座席の方が銃を撃ちやすいと考えたのか、ドラがねえさんに声を掛けた。


ねえさん 『了解』


 ドラが後部座席に移動すると、直ぐに助手席にねえさんが乗りこんだ。


ねえさん 『チビちゃん。双眼鏡を貸して』

チビちゃん『はーい』

すぴねこ 『それ、俺のだけどな』

ねえさん 『はいはい。多分、この敵はカモフラージュだから、直ぐ近くにタワーがあるわよ』


 ねえさんは双眼鏡を受け取ると、チビちゃんの替わりに通信タワーを探し始めた。


ボス   『攻撃開始だ!』


 ボスのミニミ軽機関銃が火を噴き、弾丸がバグスの車両に襲い掛かった。







 後部座席の全員が攻撃を続けていると、ボスのミニミ軽機関銃から放たれた弾丸が敵車両の運転席に命中。1台目が横転して背後で爆発した。


すぴねこ 『おっと!』


 バクスの攻撃を皆に任せて運転していたら、ドロント兵が道に飛び出してきたから、思わずアクセルを踏んで轢き殺す。

 その衝撃でジープがガタンと揺れた。


すぴねこ 『気を付けろ、バカヤロウ!!』

ドラ   『轢き殺して、その逆ギレセリフはねえって』

ミケ   『ちゃんと運転してよ!』

すぴねこ 『仕方がねえだろ、急に飛び出て来たんだから。轢くしかねえじゃねえか』

ねえさん 『まず、その考えが間違ってるわよ』


 あなたは性別を間違えてますよ。


ミケ   『背後に1台回ったわ』

ドラ   『すぴねこ、真正面に移動してくれ』

すぴねこ 『あいよ』


 ドラの言う通りにバックミラーを見ながら敵の車の正面に移動すると、敵の車は背後から体当たりをしようとしているのか、速度を上げて近づいてきた。


ドラ   『煽り運転、スピード違反、無免許。一発免許取り消し、ついでに死刑』


 そう言って、ドラが地雷を後ろへ放り投げた。

 敵の車はよける事が出来ずに地雷を踏み、激しい爆発音と同時に吹っ飛ぶと空中で1回転半してから、背後に居た味方の車を巻き添えにして2台同時に爆破した。

 その様子を見て、思わず口笛を吹く。


すぴねこ 『ドラ格好良いじゃん。今のイキったセリフをもう一回。アンコール、アンコール』

ドラ   『ぐっ、こやつ、煽りよる』


 俺がドラを冷かしていると、助手席に座って双眼鏡を覗いていたねえさんが、俺の肩をぐいぐいと掴んだ。


ねえさん 『見つけたわ!』

すぴねこ 『うおっ、危ねえ。運転中に揺するな!』


 運転するジープが蛇行して、後部座席の皆が文句を言ってきたけど、俺のせいじゃない。


ねえさん 『あら、ごめんね。だけど、あそこ、タワーを見つけたわ』


 ねえさんが指さす方を見れば、南側と同じように、岩山の山頂付近に隠れて通信タワーが建っていた。


ボス   『やっぱり、有ったか。すぴねこ、狙撃できる場所まで移動してくれ』

すぴねこ 『あいよ』


 ジープを移動させてねえさんを下ろす。

 彼女は先ほどと同じように、スナイパーライフルでタワーの通信装置を破壊して戻ってきた。


ねえさん 『これで3つ目だけど……インフォがないから、まだあるみたいね』

ボス   『岩山の西を確認して、そこでもインフォが流れなかったら、後は洞窟の中を確認するしかないな』

ドラ   『くはっ、面倒くせえ』

すぴねこ 『お前、今回、地雷を投げ捨てただけで、まともに戦ってねえじゃねえか』

ドラ   『俺は接近戦向けのキャラメイクだから、まあしゃあない』

すぴねこ 『俺の方が接近向けだっちゅーの』


 ドラの言い訳を聞いて肩を竦めると、岩山の西側へジープを走らせた。


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