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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第1章 過疎ゲームの6人
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第19話 ミッション1-3 その2

 タワーまで残り1Kmの距離まで移動すると、俺達は大きな岩の裏に身を隠した。


すぴねこ 『ミケ、観測手をしてくれ』

ミケ   『分かった』


 ミケに双眼鏡を渡して、行動を開始する。

 まず、30m先に見えた岩の遮蔽物に向かって全速で走り、滑り込んで岩陰に身を伏せた。


ミケ   『タワーに動きなし』

すぴねこ 『了解』


 さらに20m先の岩へ移動して身を隠す。

 そして、ねえさんも俺が先ほどまで居た場所へ向かって走り、同じように身を隠した。


ミケ   『動いたわ。有効射程に入ったわよ』

ねえさん 『まだ狙うには遠いわね』

すぴねこ 『オッケー。もう少し近づく』

ねえさん 『お願い』


 さらに近づいて岩陰に身を隠すと、遮蔽物にしていた岩に弾丸が3発当たってから、射撃音が聞こえてきた。

 どうやら、俺を狙ってスナイパーが銃を撃ったらしい。


すぴねこ 『おっと、弾が3発来たぞ』

ミケ   『ここからだと3体目は見えないわ。方向は同じだった?』

すぴねこ 『そこまで確認できねえ。そっちで探してくれ』

ミケ   『了解。そのまま待機してて』


 ミケが探している間、暇だったのかドラが冷やかしてきた。


ドラ   『放置プレイ乙』

すぴねこ 『興奮してんじゃねえよ。ヴァーチャル女に放置され過ぎて、新たなステージに足を踏み入れたか?』

ドラ   『だから、リアル女だって言ってるだろ』

ミケ   『2人ともウルサイ……って見つけたわ。タワーから右に300m離れた岩陰に1体。目の替わりにスコープが付いてるからスナイパーね』

ねえさん 『了解。もう少し近づいたらまとめて倒すから、すぴねこ頑張ってね』

すぴねこ 『へーい』


 さらに近づいて、タワーまでの距離が900mになると、ねえさんがスナイパーライフルのレミントンm700を構えた。


ねえさん 『それじゃ、岩に隠れているのから狙うわよ』


 どうやら彼女は、タワーの上に居る敵よりも逃げやすい地表の敵から倒すらしい。

 おかまは几帳面で効率重視な性格なのだろうか。一度、別のおかまに聞いてみたい。


 準備が整ったねえさんがスナイパースコープを覗き、照準を敵スナイパーに合わせた。


ねえさん 『すぴねこ』

すぴねこ 『あいよ』


 ねえさんの合図で、岩陰から身をさらけ出して、すぐにしゃがんで隠れる。

 その間にねえさんが、俺を撃とうと上半身をさらけ出した敵を狙って、ライフルのトリガーを引いた。


 俺の直ぐ後ろから1発、正面から3発の弾音が響き渡る。

 敵スナイパーからの射撃が俺の上空を、ねえさんが撃った弾丸が俺の横を通り過ぎた。


ミケ   『命中。タワーに動きなし』


 今の一撃で岩場の裏に隠れていたスナイパーを倒して、双眼鏡で見ていたミケが報告する。


ねえさん 『了解。次』

すぴねこ 『あいよ』


 もう一度立ち上がって、敵の攻撃を誘う。

 そして、再び敵の攻撃と同時に、ねえさんがタワーに居た1体を倒した。


ミケ   『今度も命中。タワー、狙いをねえさんに変更』

ねえさん 『了解。すぴねこ動いて』

すぴねこ 『了解』


 ねえさんの命令で岩陰から身を乗り出して全身を晒す。

 すると、敵のAIはターゲットをねえさんから俺に変更して、銃を構えなおした。

 その隙を突いて、ねえさんがライフルのトリガーを引く。敵のスナイパーは俺を撃つ前に、ライフルの弾丸を頭に喰らって後ろに倒れた。


ミケ   『オールクリアー。ねえさん、ご苦労様です』

ねえさん 『ありがとう』

すぴねこ 『一番危険な目に遭ってるのは俺だけどな』

ミケ   『もちろん知っているわよ』

すぴねこ 『だったら、俺に対するリスペクトを持て』

ミケ   『すぴねこは、ネットゲームで尊厳を求める人ってどう思う?』


 その質問に眉をひそめて考える。


すぴねこ 『……ゲームじゃなくて現実で求めろよ、キメエ』

ミケ   『そうね、私もそう思うわ。それで本当にリスペクトを求めてるの?』


 ミケの汚物を見る様な目で見られながら、再度質問されて頭を横に振った。


すぴねこ 『……要らねえ』


 不貞腐れた俺にミケが笑顔になると、双眼鏡を返した。


ミケ   『と言う事で、私はゲームの中ですぴねこを絶対にリスペクトしないわ』


 ミケは軽く肩を竦めると、皆の所へ戻っていった。

 それはどういう意味なんだ? リスペクトを求めたらキモイ。だから、リスペクトをしないからキモくない? はて?


ボス   『すぴねこ、行くぞ』

すぴねこ 『あ、今行く』


 よく分からんけど、ボスに呼ばれて考えるのをやめた。







 敵から襲撃される事なくタワーまで移動する。

 目の前のタワーは高さ15m程の鉄塔で、上に登るための梯子が付いていた。

 ドロント兵は片腕が銃になってるけど、よく登ったなと思う。


ボス   『すぴねこ、ドラ。敵の通信機を破壊してくれ』

ねえさん 『待って。上から狙撃できるかもしれないから、ドラの替わりに私が行くわ』

ボス   『分かった』


 今回のミッションは遠距離攻撃が優位だから、ねえさんがノリノリである。

 逆に接近専用の俺は、ただの囮。短銃にスナイパースコープでも付けて、遊ぼうかな。


すぴねこ 『お嬢さん(レディー)お先にどうぞ(ファースト)

ねえさん 『あら、親切ね』

すぴねこ 『俺ってアングラ(アンダーグラウンド)に寛容なんだ』

ねえさん 『…………』


 どうやら、おかまに向かってアングラと言ってはダメだったらしい。

 ねえさんは俺をジロっと睨むと、何も言わずに梯子を上り始めた。


 ねえさんを先に登らして、その後に続く。

 上を見上げれば、カマのケツ。同性なのに何となくエロい。

 そして、ねえさんはエロいケツだけでなく、男なのに何故か胸があった。

 もちろん男にも胸はある。何が言いたいかと言うと、おっぱいが大きい。


 一度ねえさんに、「男なのにスタイル良いですね」と叱られ覚悟で言ったら、怒りもせずに「現実の体をキャプチャーしただけよ」と素っ気ない返答が来た。

 ねえさんは、テレビに出てくるクリーチャーみたいなお笑いカマ野郎と違って、シリコンを入れたガチのカマ。

 俺の予想だが、ねえさんは賞金を手に入れたら、玉を取って性転換手術をするんじゃないかと思っている。


 鉄塔の梯子を上り、頂上付近の踊り場に到着する。

 鉄塔から見るバグネックスの惑星は、赤い荒野の惑星だった。

 遠くでは高い山脈が広がり、その反対側には緑色の海が見えていた。


 踊り場を調べれば、鉄塔に使用不明な機械が付いていた。多分、これが敵の通信装置なのだろう。

 その機械をショットガンで破壊する。


 俺が敵の通信機を破壊している間、ねえさんが双眼鏡を覗いて周辺を確認していた。


ねえさん 『岩山のふもとに洞窟があるわ』

すぴねこ 『やっぱりと言うか、予想はしていた』


 ねえさんから双眼鏡を受け取って岩山の麓を確認すれば、彼女の言う通り、鉄塔で隠されていた洞窟があった。

 そして、洞窟の入口近辺には複数のドロント兵が警邏しているのが見えた。


ねえさん 『残念だけど、ここからだと遠すぎて狙えないわね』

すぴねこ 『ボス、どうする?』


 洞窟の状況を説明してからボスに尋ねると、彼は迷った口調で話し始めた。


ボス   『ドロント兵が警邏しているという事は、何かがあるのは間違いないだろう。問題はその先だ』

チビちゃん『その問題って、洞窟がどこまで続いているかって事と、タワーの存在だよね』

ボス   『そうだ。先にクリアした全パーティーはシークレットをクリアしていない。と言う事は、普通に岩山の反対に出るだけではSランククリアできないと考えるべきだろう』

ドラ   『確かにその通りだな。なあ、すぴねこ、お前さんならどう動く?』


 ドラからの質問に、情報を整理しながら話し始める。


すぴねこ 『そうだな……ボスの言う通り、洞窟には何かあると思う。そして、洞窟を通る、もしくは道路に沿って進む、そのどっちへ行ってもSランクのクリアが出来ないとなると、もう1つのルートに何かがあると考えるのが正解だな』

ミケ   『もう1つのルートって、他に道なんて無いじゃない』

すぴねこ 『あるじゃねえか。道路とは反対側の、何もない岩山の南側のルートが』

『『『『『はあ!?』』』』』


 そう言った途端、全員が頓狂な声を上げた。


ミケ   『チョット、何を言ってるの? 頭、おかしいんじゃない。南って……本当に何もないわよ!』

ドラ   『前から変だ変だと思っていたけど、やっぱりお前、変態だよ』

チビちゃん『頭のお薬要る? もしかして、もう薬やってる?』


 酷い言われようである。


すぴねこ 『お前等、本当に酷いな。さっきも言っただろ、この岩山は怪しさが露骨過ぎるって。あの性格が590°捻くれたダニエルが、まともなマップを作る訳ねえ。絶対とは言わねえが、何かが南にあると思うぞ』


 ダニエルの野郎は、クリア目前で鍵の掛かった扉を作り、その開閉スイッチをゲーム開始地点の裏に作るような、ぶち殺したくなる性格の持ち主だ。

 何もないと見せかけて、重要なポイントを作ってるなんざ、余裕でやってくるだろう。


ボス   『よし、決めた。南側を行くぞ!!』

ドラ   『マジかよ!』

ボス   『今日は日曜日で時間に余裕がある。何もなくても、次でSランクを取ればいい』

ねえさん 『確かに、そうだけど……』

ボス   『まず洞窟に向かって調査する。そして、何もなければ南側ルートを通って、岩山の反対側へ抜けるぞ』

『『『『『了解』』』』』


 悩んでいたボスだったが、俺の案を採用する事にしたらしい。

 そして、俺達はどのルートを選択しても通る、洞窟の前まで移動を開始した。


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