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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第1章 過疎ゲームの6人
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第18話 ミッション1-3 その1

 ミッションゲートを潜ると、俺達はまた移動中の装甲車の中に座っていた。


「今度はどこに行くんだろうね」

「ねえ、ドラ。掲示板に何か情報は無いの?」


 チビちゃんが首を傾げる横でミケがドラに尋ねると、彼は呆れたように彼女を見て首を横に振った。


「お前は、SNSでバズりたい為だけに全裸を投稿するパッパラパーか? 大金が掛かっているのに、情報をただで書いてるわけねえだろ」

「なんで普通にないって言えないのかしら……」

「普通のドラなんて気持ち悪い……」


 ドラの返答にミケが呆れ、俺が呟いていると、操縦席側のドアが開いて例の軍曹が現れた。


「全員揃っているな。前回はこちらのミスで敵の情報が間違っていた。まあ、情報ミスなんざ、よくある事だから気にするな」

「せめて一言ぐらい謝れ!」

「死んで。お願いだから死んで」

「クソジジイ、口が臭さい!」

nuts(金〇)!」

kiss(ケツ) my() ass(キスしろ)!!」

Suck it(しゃぶれ)!!」


 俺達がヤジを飛ばすのを無視して、軍曹が話を続ける。


「前回は敵の対空砲を破壊したが、まだ敵の飛行部隊が健在していて、戦艦が地上に降りられないらしい。そこで今回は、敵の飛行場を破壊するため、そこまでのルートを確保するのが目的だ」


 今回のエリアは野外フィールドで、目的地に到着すればクリアな進軍ミッションらしい。


「それと、今回入手した情報だが、進行中に敵の通信タワーが2つあるらしい。破壊すれば、バクスの通信が途絶えて増援が減るという情報を掴んだ。見つけたら破壊しろ。以上だ」


 軍曹が扉を閉めて姿を消す。今の話で何となく今回の引っ掛けが分かった。


「なあ、どう思う」


 ドラの質問に肩を竦める。


「タワーは2つ以上あると思う。それと、もう1つ……」

「何だ?」

「タワーではぐらかして何も言わなかったけど、ミッションフィールドと条件から考えて、スナイパーが出てくるぜ」


 敵のスナイパーは、右目を望遠レンズに改造されたドロント兵で、アサルトライフルで遠距離攻撃をしてくる敵だった。

 このスナイパーが厄介なのは、味方の数が半数以下になっても自爆しようとせず、逆に逃げ出す事にあった。

 敵をせん滅したと思ったら、突然逃げたスナイパーに狙撃されて死にました。なんて事も何度か経験している。


「ああ、なるほど。確かに条件からして100%出てくるな……」


 俺の返答にドラがため息交じりに頷いていた。







 ガンッ!!


「うわっ!」


 目的地がどこなのか分からないまま装甲車に乗っていたら、上から衝撃が来るのと同時に装甲車が転倒した。


「キャーー!!」

「なっ、何だ!?」


 突然の状況で理解出来ずに全員が叫んでいると、装甲車が転がって逆さの状態で停止した。

 ミッション開始前のイベントは映像担当のジョンが全部作成しているけど、毎回やり過ぎだと思う。


「痛たたたたっ……」

「いや、痛覚設定ないんだから、痛くないだろ」

「そうだけど、状況的にそんな気になるじゃない……」


 痛がるミケにドラが突っ込むと、彼女は不満げな表情を浮かべて言い返す。


「グルグル……世界が回る~~」


 そのミケの横では、チビちゃんが頭を揺らしながら目を回していた。


「状況が分からん。外に出るぞ」


 ボスが装甲車のドアを蹴り開けて外に出ると、俺達も彼の後に続いて外に出た。







 外は荒れ果てた草木1本ない赤土色の荒野で、西側に岩山が見え、荒野を遮るように東西にアスファルトの道路が延びていた。

 そして、俺達の乗っていた装甲車の他にも、3台の装甲車が走っていたらしいが、その全てが爆破して炎上していた。


「軍曹、説明しろや!!」


 俺が大声で叫びながら装甲車を蹴っとばすと、助手席のドアが開いて頭から血を流した軍曹が降りてきた。


「あーあー酷い状況だな。俺達以外は全滅か……」


 軍曹が周囲を見回してからため息を吐いた。


「どうやらバグスの戦闘機が爆撃をしたらしい。お前達と行動する予定だった部隊は……あそこで全員ローストピープルだ」


 軍曹が炎上している装甲車に向かって顎をしゃくり鼻で笑っていた。

 この全く笑えない状況で笑えるのが、軍人なんだと思う。言い換えると、頭がおかしい。


「水も食料もねえ。ここから引き返すにも、基地に戻る前に死ぬのは確実だ。どうせ死ぬなら、道づれにバクスの連中を倒してこい。俺も行きたいところだが、このケガだ……諦めてここで救援を待つことにするぜ」


 今の軍曹のセリフを訳せば、「俺は休むが、テメエ等は死ね」だ。

 ミケが軍曹を撃とうとするのを、ねえさんが彼女の銃を押さえて無言で頭を横に振っていた。







 荒野に放り出された状態だけど、どうやらここからミッション開始らしい。

 バグスの補給ルートらしきアスファルトの道路が西へ伸びているから、道沿いに歩けばたどり着くと思う。


 ルートの確認の為に逆さになった装甲車の上に登り、買ったばかりの双眼鏡を覗いて確認する。

 ミッション1-2が近接戦闘(CQB)だったから、次かその次辺りで遠距離ミッションかなと買った双眼鏡だけど、俺もまさかこんな直ぐに使うとは思わなかった。


 双眼鏡で確認すれば、進むべき方向に高さ100mぐらいありそうな岩山があり、道路は北へ岩山を迂回するように伸びていた。

 そして、迂回する前に軍曹が言っていた鉄塔の様なタワーが1つ建っているのを確認する。

 だけど、2つ目のタワーは見つからなかった。恐らく岩山の裏にあるのだろう。無かったら、シラン。


ボス   『何か分かったか』


 インカムでボスから教えろと言われて、見た事を話す。


すぴねこ 『何となく、あくまでも何となくだけど、あの目の前の岩山が、クソ怪しいぜ』

ボス   『だろうな』

すぴねこ 『ただなぁ……』

ボス   『何だ?』

すぴねこ 『怪しさが露骨すぎて、それが逆に怪しいんだよなぁ……』

ドラ   『お前、このゲームに毒されて、深読みし過ぎじゃねえのか?』

ミケ   『性格が捻くれてるだけよ』

すぴねこ 『…………』


 賞金が掛かっていなければ、間違いなくこの2人を撃ち殺していたと思う。


ボス   『取り敢えず1つ目のタワーへ向かうぞ。その先はタワーを制圧したら決めよう』

ねえさん 『それで、敵は居るのかしら』


 ねえさんからの質問に、そう言えば敵の姿を見てないなと、再び双眼鏡を覗く。


すぴねこ 『んーー居な……おっ? タワーの上に2体居たぜ。遠すぎて兵科まで分からねえけど、間違いなくスナイパーだな。違ってたら逆に驚きだぜ。AAWの頃から変わってなければ、有効射程距離は700mぐらいだったはず。あの高さの鉄塔から狙撃すると考えれば、高低差から1Kmぐらいで撃ってくるぜ』

ねえさん 『今の私の装備だと、向こうの方が少しだけ有利ね……』

チビちゃん『遮蔽物がそんなにないから、先に撃たれちゃうかも』

ドラ   『まあ、最初に撃たれるのはすぴねこだけどな』

すぴねこ 『なんならお前と代わろうか?』


 そう言うとドラが肩を竦める。


ドラ   『お前より優秀なポイントマンなんて出来ねえよ』


 呟きを聞いた全員が、顔を歪めてドラを見た。


ドラ以外 『……気持ち悪い』

ドラ   『珍しく褒めたらこれだもんな……』


 そう言ってドラがため息を吐いていた。


ボス   『そろそろ行くぞ。スナイパー対策は何時もの通り、すぴねこを囮にしてねえさんが狙撃だ』


 全員が『了解』と答えると、俺達は飛行場への道を歩き始めた。


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