第四十一話「コルト」
「キャノン君が、キャノン君じゃない?貴方が本来のキャノン君なの?」
「ああ、そうだ。そんな事どうでもいいから早く歩け。次のアジトへ向かわないと…」
「……キャノン君はどうしてバレットに協力するの?」
「バレットがコルトの親友だからだよ。」
「コルト?」
「今までキャノンだったやつはコルトで僕がキャノン。だけどあいつは逆だとおもってる。だから僕がコルト。」
「……じゃあ、二人にとってはあなたがコルト君?、コルト君にとってのバレットって何?」
「唯一の希望…」
まさかの二重人格設定にゆきは少し心踊っていた。自分の知らない設定があって、捨てキャラだったキャノン君が深掘りされている。それは『トリガーバレット』好きのゆきにとって胸熱な展開だった。
「キャノンの親友だからだよ。僕がバレットに協力するのはそれが理由。」
「……そっか」
がちゃ
ゆきは静かにコルトに銃を向ける。
「……もう一丁もってたのかよ。」
「動かないで!動くと撃つ。」
「あー、めんどくさっ。」
ガンッ
優勢だったはずのゆきの視界は大きくかわって一瞬で地べたへと落とされた。
「うわっ」
ゆきのもっていた銃はコルトに蹴られ吹き飛んだ。そして地面に押し付けられる。
「っ!」
「あのさ、無駄な事してるって自覚ないわけ?」
「だって、このままじゃコルト君死んじゃうかもっ」
「?!」
「コルト君一人でアジトへ向かうのは、バレットと逆方向に向かってデリンジャー様達を誘導させる為……ふぐぅっ」
ゆきは口を手でおさえられる。
「黙れ!何故そうおもう?」
「バレットが次に狙う予定のアジトと逆方向に歩いてるから…」
「僕が死のうと生きようとお前には関係ない!いいから人質らしく黙ってついてこい!」
「……」
「そうだ、最初から黙って言うことをきいてれば何もしなっ」
ガン
ゆきはコルトに頭突きをした。コルトが体勢を崩したのを見計らって逃げようとする。ここで人質なんかになったらデリンジャーに会わせる顔がないからだ。
「っ!!」
「ほへっ!?」
しかし、予想とは異なる事が起きてしまった。
「「?!?!」」
バランスを崩したコルトだが逃げるゆきの腕をつかんだまではよかった。その先が不味かったのだ。
★★★★
「バレットの連れだな。」
「?バレット?」
「デリンジャーさん、この女記憶喪失らしくて……」
「ほう?」
ガチャッ
迷いなく銃口を、ピストレットの眉間に押し付けるデリンジャー。バレルは顔を伏せた。デリンジャーの決定は絶対である。だが、記憶をうしなった女を殺す必要はあるのだろうか?
「デリンジャーさん」
「バレル、おもちゃはどうした?」
「それが、はぐれてしまって…」
「そうか……」
デリンジャーは銃をしまう。バレルは、いつもなら情けなどかけないで殺生するデリンジャーの思わぬ行動に、驚きを隠せなかった。
「じゃあこれを新しいおもちゃにするしかねぇーな。」
「?!?!」
「?」
驚くバレルに対してピストレットはなんの話しをしているのかわからずにキョトンとしていた。
★★★★
一方、仲間と合流出来ないバレットは、山道を必死に歩いていた。ピストレットは生きてる。皆も生きてる。だから、皆を信じてアジトへ向かう事にしたのだった。




