第三十八話 「記憶喪失の女」
「私は、誰?」
ピストレットは爆風で吹き飛ばされ、強く頭をうったことから記憶喪失となってしまっていた。
「ここ、どこ?私は……確か…」
「落ち着いてください。すぐに医師を呼んで参りますので…」
看護師のような救助テントのメンバーは、ピストレットを置いて医師を呼びに行ってしまった。
★★★★★★
バレルは身体のあちこちが痛みで悲鳴を上げているにもかかわらず、彼女を探して必死に歩いていた。
「くそ…、死んじまったか…」
そう呟いたその時、バレルは救護所を見つける。
「あれは…」
そこにゆきがいるかもしれない僅かな可能性を信じて救護所へと足を進めた。
★★★★★★★★
「キャノン君、どこまで行くの?」
「さぁな。」
「さぁって……」
キャノンはどんどんと森の奥へと進んでいた。
「どうして森の奥へ行くの?皆と合流しないと…」
「わかってる、でもな、これからあの村にはやつが来るかもしれないだろ?」
「やつ?」
「デリンジャーだよ。兵器の威力を見に、視察に来るかもしれないだろ?そうなったら今の僕達には勝ち目がない。弾も残り少ないし、怪我人はいるし、バレットと合流もできてないし。」
「………たぶん、なんだけど、あの兵器は、デリンジャー様が使ったとは思えない。」
「は?」
キャノンは驚き、思わず足を止めた。
「デリンジャー様、まだ兵器の設計図、手に入れてなかったと思う。」
「……じゃあ、誰が?」
「それは、キャノン君の方が、知ってるんじゃないかな?」
「……」
ゆきは静かにだが、確実に核心をついていた。
「貴方は、キャノン君じゃないよね?誰なの?」
「……お前には関係ない。黙らないと落とすぞ。」
「……わかった。」
そう、この少年はキャノンではない。ゆきにはわかる。だが、ならば、この人は一体どこの誰なのか?それはゆきにもわからなかった。ただ、本物のキャノンは既に死んでいる、それはわかった。本物のキャノンは本編において、故郷へ一旦帰る故郷編でバレットと一旦別れ、一人で別のアジトへ偵察に行くのだが、その時に銃弾を受け、命からがら逃げるも、致命傷を与えられ、バレットと合流後に息絶えてしまうのだ。ゆきの活躍によりストーリーが大幅に改編されているが、故郷への帰郷が終わったと言う事は、キャノンは死んでいる筈である。だが、ストーリーの改編によって多々変わっているので、確実にキャノンが死んだと言いきれないのだ。しばらくしてキャノンは森の奥にあった洞窟にたどり着いた。
キャノンはゆきをいきなり放したかと思うと、ゆきは支えを無くして、そのまま地面へと勢い良くダイブした。
「きゃあ?!」
どしんっ
「いたた…キャノン君ひどいよ!いきなり放すなんて!」
「それより、何か食料とか持ってないか?」
「持ってるわけないでしょうが!!」
地面へ叩き付けられたのがあまりに痛かったので少しキレぎみに応答してしまう。
「……とにかく、次のアジトを目指さないと……」
「え?バレット達と合流しないの?」
「ああ、僕はここからは一人で行動しようと思ってた。」
「……どう言う事?」
「さっきお前が言った通りだよ。」
「……」
この国に繁茂する海外の組織が多数ある事は前期のアニメでも、原作の小説にも書かれてきた。しかし、デリンジャーの影響力が根強く、海外の組織はなかなか思うように国内へ進行できなかったのだ。しかし、今回の事で兵器の設計図の情報をどこからか入手したのだろう。そして、本来てにする筈だったデリンジャーを出し抜き、製造し、使用、今に至るのだろう。
「貴方は海外の組織の仲間なんだね?」
「……」
沈黙、それは肯定を意味していた。
「でも、キャノン君がいるのに兵器を使うなんて、どういう事なの?」
「僕は別に捨て駒だから気にも止められてない。あいつらが狙ったのは、バレルだよ。」
「バレル君?」
「そう、デリンジャーの右腕。」
「でも、私達があの村に来るって保証はなかった筈だよ?」
「……僕が通信して話した。」
「……死ぬ気だったの?」
「なわけないだろ?ただ、標的を確実に仕留める必要があっただけだよ。」
?何故だろう、バレル君がどうしてそこまで重要視されているのだろうか?確かに、バレル君はデリンジャー様の右腕ではある。しかし、それだけで狙われるのは些か不可解だ。
「バレルはな、二重スパイだったんだよ。」
「?!」
それは初耳である。ストーリー変更に際して追加設定ができたのだろう。
「デリンジャーに遣える一方で、あいつらに情報を渡してたんだ。」
「あいつら?」
「組織だよ。外の。」
「そんな話し初耳だなぁ。」
「知るかよ。」
キャノンは腕を頭の後ろで組んだ。その日は次の朝までその洞窟で過ごした。
★★★★★★
バレルが見つけた救護所へと向かう。
「あの、ここに女の子来てませんか?」
救護所で看護しているシスターに話しかけた。
「女の子?たくさんいらっしゃいますよ。」
「あの、学生服を着たツインテールの女の子来てませんか?」
「いいえ、来てません。」
「そうですか…」
バレルがその場を去ろうとした時、ふと眼に入るものがあった。
「!」
「あ、もしかして彼女に見覚えが?」
シスターはその視線に気付いたのかバレルに声をかける。
「はい。」
「よかったわぁ、何も覚えてないようで、困っていたのです。」
「?何も覚えてない?」
「はい、記憶に障害が生じてしまったみたいで……」
「貴方、誰?私を知っているの?」
彼女はゆっくりとバレルへと近づいた。
「……記憶、喪失…?」
いつもの人も新規の方もありがとうございます。しばらくお休みしようと思います。これからもよろしくお願いします。




