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王都へ


あの襲撃から三日経った。

村の片付けも、倒壊した家屋や壊れた柵などはあらかた片付いた。

魔物の襲撃も今のところなく、村のみんなは少し警戒はしているが騎士団の人もいるし、仕事に戻り始める人も出ていた。


僕はと言うとしばらく続いていた頭痛と虚脱感もすっかり無くなり、体の調子はすこぶるいい。

あの後ラウルおじさんに聞いたんだけど、どうやら魔力切れに似た症状らしいから多分それだろうと思う。

今まで魔力なんか使ったこと無かったから全然わからなかったけど、姉さんなんかは良くあることらしい。



あの襲撃から少しだけど、変わったことがあった。

いつもバカにしてくる三人組、マリスとラッセルとグラファ。

巨漢で腕っ節も強く、無口なガキ大将という感じだったグラファは、珍しく僕の家に来ると


「……すまなかった」


と一言だけ言うと、姉のソニアに何やら頼み込み、仕事が終わってから僕がいつもやっていたような訓練を始めた。

ラウルおじさんは、ゴブリン達はグラファがいなかったら食い止められていなかったと言うぐらい活躍してたみたいなんだけど、本人はどうやら力不足を感じていたらしい。

ホブゴブリンと対等に渡り合っていたけど、横から何匹もゴブリンに抜かれて、村人に犠牲が出てしまった……とか。

僕からしてみたらホブゴブと渡り合っただけで十分すごいと思うんだけど……。初日に姉さんとの模擬戦でボコボコにされたグラファは、


「お前……毎日あんなのをやってるのか……??」


少し顔を引き攣らせながら、僕に尋ねてきた時は少し笑ってしまった。

肯定すると、そうか……と言い自分の家へと戻って行った。

うん。分かるぞグラファ。

あれはマジできついからなぁ…………。

さすがにもう慣れたけど、最初の頃なんて翌日筋肉痛になってまともに仕事出来なかったからな〜。



そして、僕にいつもちょっかいを出してきたラッセルはと言うと、あれから僕に何か言ってくることは無くなった。

……あんまり覚えてないんだけど、デッドウルフと戦った時に近くにいたみたいで、僕と話すのが気まずいんじゃない? と姉は言っていた。

グラファが姉と訓練しているのを見て、自分もと昨日から訓練に参加している。

……まぁ、グラファ同様にボコられているんだけど……。



マリスは襲撃の後、騎士団の人達から一応の手当ては受けたみたいだけど、心に残った傷のせいか、あれから家に引きこもっている。

デッドウルフに殺されかけた事が大きかったのかもしれない。

僕が小屋で縛られた時も、魔物を甘く見ていた節があったからなぁ。

ざまぁみろ! とまでは言わないが、少し気の毒な気もする。

ラッセルとグラファがちょくちょく家を尋ねてるみたいだし、大丈夫だろうと思いたい。あの三人は仲良いみたいだから。




王都へ行く為水や食料、野宿の準備や馬の飼料その他の旅の準備を馬車に積み終えた僕は、柵の外で模擬戦をしている姉さんの所へ報告に行った。

って……。相変わらず容赦ないな。

仰向けでへばっているラッセルと、座り込んで肩で息をするグラファ。

姉さんは余裕尺尺で木剣を振り回している。




「姉さん、積み込み終わったよ!」


「ああ、ご苦労さん。それじゃあ終わりにするかね二人とも」


「……ハァ……ハァ………………わかった……」


「や、やっと……やっと終わった…………もう無理だって、一歩も……動けねぇ……」


「アタシがいない間は、素振りと走り込みした後、二人で模擬戦をしな。毎日欠かさないことが重要だ。サボんなよ。帰ってきた時にサボってたとあたしが判断したら…………分かってるね……?」




姉の凄むと途端に顔を青くする二人。この数日で余程絞られたみたいだ。

まぁ、襲撃の日に僕を縛って閉じ込めてた件を聞いて怒ってたからな……。



「リオンーーー!!!!」



っと、この声は。エレナがラウルおじさんと一緒にこちらへやって来ていた。




「エレナダァァァイブ!!」


「ぐへぇ!」




僕の腹にエレナの渾身のダイブが頭から決まった。地面に仰向けになった僕にエレナが馬乗りになり、頬をぺちぺちと叩く。




「大丈夫? リオン」


「だ……大丈夫じゃな……」


「ラウルのおっさん。行ってくるよ」


「ああ、本当だったら俺もついて行きてぇが……村の連中が心配だからな。念の為襲撃も警戒しないとなんねぇ」




悶絶している僕の横でラウルおじさんは残念そうに言うと、ガナルファ山の方を一瞥してそう言った。

騎士団の人が常駐してるとはいえ、非常時に村をまとめる人がいないといけない。けど、おじさんが来れないのはやっぱり少し心細いな。




「リオン、王都で迷子になんなよ。あそこはやったら広いからな。ハッハッハ!!!」


「子供じゃないんだから! 大丈夫だよ! ……多分」




王都なんて行ったことないけど、迷子になるほど広いの……?

ちょっと想像できないけど、迷子なんてさすがにかっこ悪いから姉さんから離れないようにしよ……。




「ソニア、魔物の討伐金を使ってある程度の装備は整えておけよ。…………リオンの分もな」


「……いいのかい?」


「ああ、どうにもきな臭い。これで終わりとは思えねぇ……。念の為な。騎士達の話じゃ龍脈が絡んでる可能性があるって話だ。それが歪んだとなると……」


「第三者がいるってことかい……?」


「勘だがな……。準備しておいて損は無い。気をつけろよ」


「ああ、そっちもね」




姉さんとラウルおじさんがヒソヒソと話している。龍脈ってなんだ……。なんか聞いたことあるような。




「リオンも気をつけてね! はい、これ!」




馬乗りになったエレナが僕の手首に何かをくくりつけた。




「これは?」


「お守り! リオンが無茶しないようにね。ガナルファ山の神樹の葉を縫い込んであるんだよ。リオンを守ってくれるようにね……!」


「そっか……ありがとう。大事にするよ!」




手首に巻かれたのは綺麗な緑色のミサンガだった。王都へ行くって言ったから心配して作ってくれたのだろうか? 少し照れるな……。

エレナに感謝を伝えて僕は体を起こすと、姉と一緒に馬車に乗り込んだ。




「それじゃあ行ってきます!」


「ああ、気をつけろよ! ソニア、リオンを頼んだぞ!」


「わかってるよ。そっちも気をつけるんだよ!」


「二人とも気をつけてね〜!!」




こうしてエレナとラウルおじさんに見送られながら、僕と姉さんは王都へと出発したのであった。


( • ̀ω•́ )姉さん、グラファとラッセルの訓練って何したの??

( * ॑꒳ ॑*)何って……。全力走り込み百本と素振り千回三セットして体力を削った後に、立てなくなるまで直接私がボコボコにしただけだけど?

( • ̀ω•́ )………………お、おう。

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