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村での戦い⑥〜反撃〜

 

「っな……!!」


 吹き飛ばされた倉庫の壁を見て呆然とした。

 埃と土煙が舞い、薄暗い家屋に太陽の光が差し込む。しかし、差し込んだ光をすぐに遮るように巨大な何かが壁の穴からこちらを覗いている。

 前脚は木の幹のように太く、先から伸びる爪は禍々しい。口から伸びる牙は、一本一本が短剣のように鋭く、その瞳は狂気を孕んでいた。巨大な狼型の魔物、デッドウルフである。


「グルォォォアアアアァァッ!」


「うっ……!」


 大気を震わせるような咆哮を上げ、あまりの異常事態と咆哮の余波でリオンは思わず身体が硬直する。

 良い餌を見つけたとばかりにニヤリとしたデッドウルフは、前脚を倉庫に踏み入れ、ジリジリとリオンに迫る。


「っウウウッ……! ……っ! ウウウッ……!」

(縄が邪魔だ……逃げられない……)


 倉庫の真ん中に立つ支柱に繋がれた縄は、リオンに逃げることを許さない。

 巨大な体のせいで思うように倉庫に入れないデッドウルフは、前脚と頭を突っ込み、リオンに襲いかかった。


「ッグガァッ!」


「う……!!」


 迫るアギトをすんでのところで横に跳ねて床を転がり躱す。リオンを縛っていた猿轡が転がった時に緩んで外れたものの、スレスレの所をデッドウルフの頭が通り過ぎる。獣臭と生臭い息が倉庫内に漂う。


「っぷはぁ。……くそっ、誰かぁ! 誰かいませんか!?」


 喋れるようになったお陰で助けを呼ぶ事ができるようになったが、誰も来る気配はない。それどころか、倉庫の外からも悲鳴や怒声が響いてくる。


(満足に動けない……どうする……)



 舌なめずりをしながら唸るデッドウルフを前に、必死に考えをめぐらすリオン。周りに使えそうな武器や道具も無い。


「それなら……!」


 縄で繋がれている倉庫の支柱をデッドウルフとの対角に挟むように移動する。デッドウルフが左に動いたらこちらも左に、右に動けば右にずれ、支柱が邪魔になるように位置どった。


「ッグルル……! ガァッ!」


 痺れを切らしたデッドウルフが、支柱ごとリオンに襲いかかる。獰猛な鋭い牙は、支柱を紙切れのように引き裂きそのままリオンに牙をむく。


「……よし!」


 飛び散る支柱の木片を躱し、ガッツポーズするリオン。デッドウルフが支柱を破壊した事により、手は縛られたままだがこれで自由に動き回れるようになった。

 支柱を破壊した事により生まれた一瞬のすきに、倉庫の扉に体当たりしぶち破って外に出る。


「グルァッ!?」



 倉庫は支柱を無くしたことで、メキメキと嫌な音を立て一気に崩れ落ちた。

 デッドウルフは前脚と頭を倉庫に突っ込んだ状態で、家屋の下敷きとなる。


「何とか外に……って、あれでまだ生きてるのかよ……」


 上半身が下敷きとなった巨大な狼は、何とかして出ようと後ろ足でもがいている。


「やっぱり襲撃が来てたんだ……。とにかく手のコレをどうにかしないと……、柵の方なら人がいるはず!」


 周りの喧騒から村に襲撃があった事を察したリオンは、手に縛られた縄を引きずりながら、応援を呼ぶ為に近くにある南の柵の方へ向かった。



 ――――――――――


 南側に奇襲した魔物の群れは、ワーウルフの群れが主体であり、柵が低かったのか容易に飛び越えられて侵入されていた。


「思ったより数が多いね……」


 南側に到着したソニアは、既に交戦状態に入っている村人達を見てそう呟く。一回目の襲撃で東側の柵は補強したが、北と南までは手が回らず大人一人分程の背丈しかなく、つくりも心もとない。


「なんだあの馬鹿でかいのは……!」


 柵の外側でこちらを伺っている群れの中に、一際大きな体を持つワーウルフの亜種、デッドウルフが三体ほどいた。群れのリーダーのデッドウルフは村に侵入してくる様子はなく、じっとこちらを見据えている。


「ソニアか! 助かった! あのでかいのが既に一匹入り込んでいる! が、こちらも手一杯だ……」


「なるほど……それでか、……錬気!! ハァァッ!!!!」


「ギャゥン!」


 ソニアに気付いた見張りがワーウルフを抑えながら、ソニアを見て叫んだ。

 ソニアは少し考え込んだが、すぐに錬気を発動し、村人を囲んでいたワーウルフを切り殺した。


(大方こっちを舐めてんだろうねぇ。入り込んだ一匹で十分事足りると……。奇襲までしながら全員でかかってこないのも不自然だ)


「弓持ちだけ残ってあとの連中は入り込んだ一匹を追いな! 無理はせず、避難所に近づかせないようにすればいい!」


「わ、分かった! ……お前はどうするんだ?」


「アタシは……コイツら全員引っ張り出して狩り殺す」


 そう言うと、ソニアは大斧を勢いよく頭上で回し、デッドウルフに向けて挑発するように構えた。指示を受けた村人たちは直ぐに村の奥へと向かっていく。


「……舐められんのは嫌いでね。お前ら全員毛皮剥いで、コートにしてやるよ」


「グルォォォアアアアァァッッ!!!!!」


 挑発されたのが分かったのか、ボスウルフは怒りの咆哮を上げ、それに呼応するかのようにワーウルフ達が柵を飛び越え、一斉にソニアに群がった。四方八方から襲いかかる獣達に、しかしソニアはニヤリと笑う。


「ハッハッハァ!! そう来なくっちゃ!! 喰らいなっ! グランドスラッシュ!!!」


 淀みなく練り上げられた魔力は大斧の隅々に行き渡り、ソニアは大斧を横薙ぎに構え一閃。そしてそのままの勢いで流れる斧を上段に構え、地面に打ち下ろす。

 大斧が悲鳴をあげるかのように轟音が鳴り響き、地面が抉れ土煙が舞い上がる。飛びかかったワーウルフは例外なく胴体を寸断され、鮮血を撒き散らした。


「フハハハハハ!!!」


 舞い上がる土煙の中から猛烈な勢いで飛び出したソニアは、悪魔のような笑い声を上げ柵を飛び越える。


「オラオラオラオラァ!!!」


「グルァァァッ!!!」


 次々に飛びかかるワーウルフを斬り殺し、叩き潰し、血の海に沈めるソニアにボスウルフの一匹がたまらず襲いかかる。

 ソニアの身の丈を遥かに超える威容の狼が、その牙で食い殺さんと迫る。


「やっと来たな犬っころ」


「グルァッ!!!!」


 ソニアは走りながら大斧を大きく振りかぶると、待っていたと言わんばかり高く跳んだ。


「グルァ!?」


「親父の直伝だ!! オオォォォ!! 断裂斬ッッッ!!!」


 溢れんばかりの魔力を帯びた大斧は、振り下ろされると同時に衝撃を放った。轟音と共に、斬撃が空を切り裂き、地を這い、襲いかかる。

 一瞬で頭上近くまで舞い上がったソニアに呆気に取られた狼の首領は、次の瞬間には文字通り正面から一刀両断にされた。


「……さて、あと二匹」


 ワーウルフの群れに動揺が走る。

 真っ赤な鮮血を浴びながらも、ストンと何事も無かったかのように地面に着地したソニアは、残る二匹のボスウルフとワーウルフ達を見据えてニヤリと笑った。






書いてて思うのですがソニア強すぎでは?笑

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