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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
62/72

046 寄木ブローチとシェラック仕上げ

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第46弾です」

礼子「今回は寄木ブローチですか」

仁「うん。それに加えて、別作品『異世界シルクロード』でも出てきたシェラックも紹介する」

礼子「楽しみです」




挿絵(By みてみん)


仁「まずはイメージスケッチ」

礼子「ほんとにラフスケッチですね……」

仁「まあ、自分がわかればいいレベルだからな……」

礼子「丸いのがブローチで、細長いのは?」

仁「タイピンにするつもりらしい」これもブローチにしてもいいですが




挿絵(By みてみん)


仁「素材だ」要するに色とりどりの木です

礼子「こうしてみると、結構色が違いますね」

仁「だろう?」

礼子「ここから使いたい色の木をピックアップするんですね」

仁「そうそう」次の写真も参考にしてください

礼子「ハ◯ズなどで『木のはがき』として、厚さ5ミリのいろいろな木を扱っているのでそれを使うといいもかもです」実際何枚かはそれです




挿絵(By みてみん)


仁「色の比較だ」

礼子「かなりアップにしましたね」

仁「左からアガチス(白茶)、マホガニー(赤茶)、ウォールナット(焦茶)、カバザクラ(茶)、ソノケリン(黒茶)、キハダ(緑がかった茶)、パドゥク(赤)、カヤ(黄)だな」実物とは若干色が違います

礼子「参考になります」

仁「聞き慣れない木の名前については検索すればわかります」




挿絵(By みてみん)


仁「で、5ミリ角になるようカットした」

礼子「ブローチの厚みも目標値は5ミリですね」

仁「そうなるな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、カットした部材だ」

礼子「木のはがきから4種、普段使っている端材から3種ですね」




挿絵(By みてみん)


仁「改めてグラデーションを見てみる」

礼子「左からマホガニー、アガチス、カバザクラ、パドゥク、カヤ、キハダ、ウォールナット、ソノケリンですね」



挿絵(By みてみん)


仁「まずは丸ブローチの部材を接着だ」

礼子「木工用の接着剤やエポキシ接着剤で接着します」

仁「色の並びはお好みで」今回はコントラストが高めになるよう並べました




挿絵(By みてみん)


仁「タイピンの方も準備だな」

礼子「出来上がりは幅10ミリ、長さ80ミリくらいですね」

仁「そうなるな。斜めに切った部材がその大きさより二回りくらい大きければ十分だ」

礼子「左からソノケリン、アガチス、キハダ、パドゥク、マホガニー、ウォールナット、マホガニー、パドゥク、キハダ、アガチス、ソノケリンですね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、接着だ」

礼子「上の長い方は随分とガタガタしてますが」

仁「厚みは5ミリの材なので幅はいいんだが、カットした際にばらついたからな」あとで削るので気にしません

礼子「これも接着剤は木工用の接着剤やエポキシ接着剤ですね?」

仁「エポキシの方がかっちり固まるかもな」作者は5分硬化型のエポキシです




挿絵(By みてみん)


仁「で、端面が直線になるよう削っていく」これはベルトサンダー

礼子「紙やすりを平らな台の上に置いて削るのもいいです」




挿絵(By みてみん)


仁「でも一番手っ取り早いのは、大まかにノコギリで切ってから削ることだった」全部ヤスリで削ろうとすると労力が半端ない

礼子「大まかに切ってから所定の大きさまで削れば楽なんですね」

仁「そうだった」




挿絵(By みてみん)


仁「で、削り終わってこれだ」

礼子「10ミリより細いですね?」

仁「それは次で説明する」




挿絵(By みてみん)


仁「削っていてわかったんだが、意外と弱い」というか曲がる

礼子「それで側面を補強するわけですか」

仁「そういうことだな。ハ◯ズで買った、幅5ミリ厚さ1ミリのウォールナットの平角材だ」鉄道のディオラマ用にもよさそうな素材があるかもです

礼子「両側から貼り合わせて補強ですね」

仁「これで強度は安心だな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、丸ブローチも作っていく」

礼子「まずは直角出しですね」

仁「正確に90度を出したいよな」なので治具を使います




挿絵(By みてみん)


仁「で、まずは2個ずつ接着だ」

礼子「今回は2分型のエポキシでしたね」

仁「そして『ハタガネ』で締め付けている」接着はある程度圧力を掛けておいたほうがよく接着されます

礼子「ハタガネ、って面白い道具ですね」

仁「本来ははこの接着に使うために買ったんだけどな」

礼子「調べてみると『旗』金なんですね」

仁「旗というかのぼりを取り付けるような形だよな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、固まったら、次の接着面を直線に削る」

礼子「こうすれば、4つのパーツが直角に組み合わされますね」

仁「ちょっと手間だけどな」量産品じゃないからいいでしょう




挿絵(By みてみん)


仁「で、4つを接着だ」作業台に接着剤がはみ出してくっつかないよういらないはがきを敷いてます

礼子「で、片面はできるだけ平面が出るよう、ズレに気を配っています」マスキングテープで留めたりも




挿絵(By みてみん)


仁「で、接着剤を硬化させている間に、今回のもう1つのタイトル、『シェラックニス』の準備だ」

礼子「電子ばかり、無水エタノール、ビーカー、計量スプーン、そして……?」

仁「シェラックニスの元になる個体のシェラックだな(セラックとも)。こいつはフレーク状なので『シェラックフレーク』という」ネットで買いました

礼子「シェラックはラックカイガラムシが分泌する樹脂です。アルコール類にだけ可溶で、トルエンやアセトン、油脂類には溶けません」

仁「精製度合いによって色が茶色から薄い茶色へと変わるんだよな」これはそこそこ安いので茶色が強めで、『ブロンズシェラック』レベルです

礼子「漂白されたほとんど無色のものもありますが高価です」




挿絵(By みてみん)


仁「シェラックフレークのアップだ」シェラックを一度アルコールで溶かしてゴミを取り除き、板の上で乾かしたものなのでこうしたフレーク状になるようです

礼子「軽くてふわふわしているので取り扱い注意です」




挿絵(By みてみん)


仁「シェラックを溶かす。無水エタノール50ミリリットルにシェラックフレーク6グラム」この重量比を『1カット』といい、シェラックニスの濃度管理の基本単位です

礼子「今回は1カットですね」

仁「で、ニスは半年もすると固まらなくなるらしくてな」

礼子「ああ、作り置きできないんですね」

仁「作ったら2ヵ月以内に使い切るのがいいです」

礼子「少な目に作って、その都度作ったほうがいいかもです」




挿絵(By みてみん)


仁「で、軽くす」このレベルのフレークはまだまだ不純物が多いので

礼子「コーヒー用の紙フィルターですね」

仁「結構時間が掛かったな……」もう少し薄いフィルターでもいいかも




挿絵(By みてみん)


仁「で、1回濾したシェラックニスがこれ」

礼子「結構色が濃いですね」

仁「そうなんだよな」これを塗るとうっすら茶色がかる

礼子「それも味ですね」

仁「そう思うしかないな」




挿絵(By みてみん)


仁「さて、ブローチに戻って、まずは背面を平らにする」ブローチピンが付く方

礼子「ベルトサンダーや、平らな台の上に置いた紙やすりで削ります」




挿絵(By みてみん)


仁「両面を削ってこうなる」

礼子「タイピンの方は、ピン側が平らで、見せる側が少し凸になるようにしました」




挿絵(By みてみん)


仁「で、丸加工の準備として、コンパスで円を描く」今回は半径24ミリ、つまり直径48ミリのブローチにします

礼子「中心は4つの部材が交わるところですからわかりやすいですね」

仁「だな」

礼子「で、丸の少し外側をノコギリなどで切ります」

仁「大雑把に丸くなっていればOK」




挿絵(By みてみん)


仁「仕上げは簡易木工旋盤で削る」

礼子「回転体なので真円になりますね」

仁「そういうことだな」

礼子「こういうときのための治具(4とあるのは、こういう治具が幾つもあってそのNo.4の意味です)ですね」

仁「裏側から短い木ネジやタッピングネジでしっかりと取り付ける」

礼子「で、回転させながらベルトサンダーで削ると早い」なければ紙やすりを当てれば時間は掛かるけど削れます

仁「木の細かい削り屑が出るので防塵メガネとマスクは必須だな」

礼子「表側がふっくら凸になるようにしたんですね」

仁「その方が扱いやすいしな」




挿絵(By みてみん)


仁「では塗装準備だ」まずは木地固め

礼子「シェラックニスを小さな筆か刷毛で塗り込みます」

仁「溶剤が無水エタノールなので、乾燥は早い」夏なら30分から1時間で次が塗れるようになる

礼子「1回目がほぼ乾いたら、2度めを塗って、目止め剤を軽くふりかけ、布で刷り込みます」

仁「素手でやると悲惨なことになるので手袋は必須だな」作者は指先にシェラックがこびりついて取るのに苦労した

礼子「アルコールにしか溶けないんですものね」

仁「シンナーでは駄目だったようだぞ」

礼子「てるてる坊主みたいなものは何ですか?」

仁「タンポだな。ウェスやキムワ◯プで作ればいい」これにシェラックニスを含ませて刷り込むように塗るとムラができにくいんだ

礼子「網はなんですか?」

仁「シェラックニスを塗ったブローチがこびりつかないように、園芸用の鉢底網だな」ポリエチレン製なので貼り付きにくいのです

礼子「あと丸い台みたいな……」

仁「塗る時に手で持って塗るのは辛いので、そのための固定台だな」自作です




挿絵(By みてみん)


仁「で、タンポで塗っては磨き、塗っては磨き」

礼子「どのくらいですか?」

仁「1日10回として最低5日、できれば10日」つまり50回から100回

礼子「そんなにですか……」

仁「これを『フレンチポリッシュ』というんだが、家具や楽器(バイオリンやギター等)には300回以上塗り重ねるというぞ」

礼子「根気がいりますね」

仁「でもなあ、夏なら30分で次が塗れるからな。何かやりながら片手間で塗れば結構できるもんだ」




挿絵(By みてみん)


仁「で、100回ほど繰り返したらブローチピンを付ける」

礼子「ハ◯ズですか?」

仁「100均でも扱っているらしい」

礼子「タイピンの方もブローチピンですね」

仁「タイピン用金具が手元になかったらしい」




挿絵(By みてみん)


仁「エポキシ接着剤で固定して、短いタッピングネジ……太さ2ミリ、長さ4ミリのAタイプ……で補強だな」

礼子「かなり丈夫になりますね」

仁「ちょっと引っ掛けたら取れてしまった、というのは悲しいからな」

礼子「ですね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、完成だ」

礼子「いい艶ですね」

仁「実物はテカテカだぞ」

礼子「色がちょっとだけ濃くなりましたね」

仁「シェラックニスの色が茶色がかっていたからな」

礼子「ウレタンやラッカー、エポキシなどの塗料なら透明にできそうですね」

仁「だろうな」今回はシェラックニスの紹介もあったし

礼子「シェラックはどちらかというと洋風の作品に合いそうですね」

仁「そうだな。漆は和風、シェラックは洋風だな」

礼子「エレキギターにも使っている方がいらっしゃるようです」

仁「ただ、アルコールに溶けるので、食器には不向きだな」他の塗料でコーティングすれば別ですが

礼子「シェラック独特の風合いがなくなりますものね」

仁「そういうことだな」




*   *   *


仁「ということで今回は『寄木ブローチとシェラック仕上げ』でした」

礼子「お疲れ様でした」

仁「加工時の怪我や、アルコールの取り扱いにはご注意ください」

礼子「火気厳禁ですね」

仁「最近は乾燥注意報が出ているしな」

礼子「火の用心、ですね」


仁「2024年の更新はこれでおしまいです」

礼子「今年一年、ご覧くださってありがとうございました」


仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう。佳いお年を」」

 ごらんいただきありがとうございました。

 また来年、どうぞよろしくお願いいたします。

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