017-2 船体 2
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第17弾その2です」
礼子「船体1の続きですね」
仁「お待たせしました」
礼子「ゲストの方は前回に引き続き……」
マルシア「どうも、造船工のマルシアです」
仁「今回も頼むよ」
マルシア「今回で完成するのかい?」
仁「いやあ、塗装前までだな」
マルシア「もう1回続くのか」ここで予告していいのか
仁「作者もできるだけ早く次も載せるってさ」
礼子「作者さんもいろいろ忙しいみたいですし」暑いですしね
仁「まずはギヤボックスを仮組み付けしてみるところからだな」
マルシア「どんな意味が?」
仁「塗装前にタッピングねじ用の穴を空けておきたいんだ」
礼子「どうしてですか?」
仁「バルサは軟らかいから、ネジ穴がすぐバカになるんだ。なので塗料を染み込ませて少しでも丈夫にしようというわけだな」
マルシア「なるほど」
仁「もう1つの理由はスクリューパイプ……『スタンチューブ』を通す穴をあける目安にするためだ」位置とか角度とか
マルシア「ああ、なるほど」
礼子「現物合わせですか」
仁「量産品じゃないし、間違えにくいからな」
礼子「ドリル用の『4ツ目キリ』を使っていますね」
仁「あれ、長いからいいんだよ」バルサは軟らかいから柄がなくても結構穴を空けられるし
マルシア「丸棒ヤスリも使ってるね?」
仁「うん。スタンチューブは外形4ミリのアルミパイプだから、それが入る大きさでちゃんと角度を揃えないとな」
礼子「キリで大体の穴を空けて、ヤスリで仕上げるんですね」
仁「そうそう」
仁「で、確認だ」
マルシア「スタンチューブを差し込んでスライドさせ、ギヤボックスのシャフトに被せてみれば、中心線や角度が決まっているのがわかるな」
仁「そういうことだ」
仁「そして、中身……つまり受信機、モーターコントローラー(ESC)、サーボモーター、バッテリー……をどの辺に取り付けるかのチェックだな」
礼子「バランスが大事ですね」
マルシア「だよな。船首が沈んだり逆に持ち上がったりはまずいし、左右どちらかに傾くのも困るよ」
仁「パーツの重さが全部違うので微妙にずれるのは仕方ないけど、できるだけバランスは取りたいな」
仁「配置が決まったら、一番しっかり取り付けなければならないサーボモーターの取付台を作る」
礼子「コレもバルサですね」
仁「そうなるな。加工しやすいから楽だ」
マルシア「サーボモーターのコードがぶつからないように削ってあるね」芸が細かい
仁「で、接着だ」
礼子「これも2分型エポキシですね」
マルシア「待ち時間ってなにげに無駄だから」
仁「さて、いよいよ船底の仕上げだ」
マルシア「どうするんだい?」
仁「今のままだと平底だから、V底にするんだ」
礼子「後付けなんですね」
仁「いきなり加工すると失敗する可能性が高かったからな」
マルシア「中心線がずれたり、削りすぎたりな」
仁「というわけで材料は5ミリのバルサとボール紙だ」
礼子「型紙が役に立ちましたね」
仁「で、カット」
礼子「2つに分けるんですか?」それにあのボール紙は?
仁「バルサは軟らかいから、左右別々に削って張り合わせるのさ」
マルシア「なるほど、それなら中心線が真っ直ぐになるね」
仁「うん。そしてボール紙を中心に入れて貼るのは、少しだけ丈夫にするためさ」
礼子「ああ、バルサは軟らかいですからね」
仁「そういうことだな。特にV底の頂点部分は机に置いたりすると力が掛かるから潰れやすいんだ」そこでボール紙を入れる
マルシア「なるほど、Vの頂点部分がそれなりに丈夫になるなあ」
仁「で、接着だ」
礼子「ここは面積が広いので5分型のエポキシを使いました」
マルシア「ちょっと大きめに作って、削って仕上げるわけだねえ」
仁「船首は特に念入りに、滑らかなカーブを描くように削る」
礼子「それらしくなりましたね」
マルシア「カッコよくなるもんだな」
仁「で、もう一度スクリューパイプ用の穴あけだ」
礼子「前に空けた穴がガイドになりますね」
マルシア「いっぺんに空けなかったのはなんでだい?」
仁「万が一最初の位置決めに失敗しても、V底を貼ればリカバリーできるからな」作者は失敗しなかったようだが
仁「スクリューの構成だ」
礼子「パイプの両端の金具は何ですか?」
仁「ミニ○駆の『低摩擦プラ○ーラーセット』に入っている真鍮製の軸受だな」1セットに4つ入っている(後の○にはロが入ります)
マルシア「ああ、内径3ミリのパイプにジャストフィットだな」軸穴径も2ミリだし
仁「そういうことだな。パイプ内部の空間にはあとでグリースを詰める」防水のため
仁「仮に差し込んでみた」
礼子「スクリューが船底にぶつかったら悲しいですものね」
マルシア「そりゃあそうだよなあ」
仁「他の部品も使って仮組みだ」
礼子「ワクワクしますね」
マルシア「早く組み立てたいね」
仁「ここで焦っちゃ駄目だ」
仁「舵周りはこんな感じ」
礼子「舵の『ホーン』とサーボからのプッシュロッド(1ミリ径のステンレスバネ線)を繋いでいる部品はなんですか?」
仁「紹介しそこねたけど、自作したストッパーだ」5ミリ径のA2017(ジュラルミン)で、1ミリ穴を通しで空け、横からM1.4のネジで止めるようにしてある
マルシア「つまりM1.4の雌ねじ加工をしたのかい」作者凝ってるなー
仁「空モノラジコン用で昇降舵とか方向舵とかをリンクするための部品は市販されているけどいまいち大きくて重いからだとさ」
礼子「1つ作るのに1時間近く掛けてましたね」マニアのこだわりですか
仁「で、、気を取り直して、スクリューも仮接続だ」
礼子「ジョイントはゴムなんですか?」
仁「スプリングジョイントも売っているけど高いのと重いのとで、ここはシリコーンゴム製のチューブだ」外径5ミリ、内径0.8ミリ
マルシア「肉厚だね」
仁「実はネットでこれを使っている人がいたんで参考にしたらしい」TOHOのフ○ートパイプ真鯛という釣り道具だ(○にはロが入ります)
礼子「釣具屋さんで買ってきたんですね」
仁「神田駅前の上○屋だとさ」もちろんネットでも買えます(○には州が入ります)
仁「で、バッテリーもこの辺に」
礼子「電動ガン用のでしたね」
仁「そう。大電流が取り出せて、しかもトータル重量が軽い」
マルシア「ミニコネクタをはんだ付けしたのか」手間かけてるね
仁「これで加工はすべて終了、塗装に入る」
マルシア「おお」
仁「まずは下塗りだ」1液性のウレタン塗料
礼子「木工用ですね」
仁「そう。製品名『木固め○ース』」○にはエが入ります
礼子「なんでウレタンなんですか?」ラッカーとかじゃ駄目なんですか?
仁「最大の理由は、この塗料は粘性が低いからだ」つまり染み込みやすい
マルシア「ああ、バルサやボール紙に染み込ませたいんだな」
仁「そう。簡易FRPみたいなもんだな」
礼子「実際、水よりサラサラしている感じですね」
仁「だろう?」よーく染み込ませれば、耐水性が増すぞ
礼子「ウレタンは通販他、新木場のもく○くさんでも扱ってますね」今は商品名に『NEO』が付くみたいですが
仁「『食品衛生法・食品・添加物等の規格基準』の規格をクリアした塗料なんだ」その分ちょっとお高いけどね
仁「で、塗った」
礼子「スクリューパイプ用の穴に棒を差し込んで持ち手にしてますね」
マルシア「背景が散らかってるなあ」
仁「工房だからな」製作中はそんなもんだ
礼子「乾くまで1日はおいてくださいね」あと有機溶剤を使っていますので中毒にはご注意ください。
仁「十分な換気をお願いします」
* * *
仁「というわけで、船体の製作その2でした」
礼子「次回はいよいよ仕上げ塗りですね」
マルシア「楽しみだね」
仁「できるだけ早く更新します」
仁・礼子・マルシア「「「それでは皆様、ごきげんよう」」」
ごらんいただきありがとうございました。
20210818 修正
(誤)一番しっかり取り付けねければならないサーボモーターの取付台を作る」
(正)一番しっかり取り付けなければならないサーボモーターの取付台を作る」




