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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
19/72

016 スクリュー

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第16弾です」

礼子「今回はスクリューですね」

仁「そう。前回予告したとおり、左右別回転させるために逆ピッチ(ひねり)のものを1組作る」

礼子「売っていないんですか?」

仁「まあ、ないこともない」今はネットがあるからな

礼子「でも作るんですね?」

仁「作者もモデラーの端くれらしいな」それも、自作に喜びを覚える古いタイプの





挿絵(By みてみん)


仁「で、まずは必要な部品と材料だ」

礼子「六角形のはスペーサーですか?」

仁「そう。ネジ部はM2、長さは8ミリ」

礼子「六角形というのがミソですね」

仁「うん。3枚ペラにするから、六角形だと角度を決めるのが楽だからな」丸いと色々苦労する

礼子「あとは真鍮板とシャフトですね」

仁「シャフトはこれもステンレスだ」錆びにくいからな

礼子「他の材質にするのなら何がいいでしょう?」

仁「真鍮だろうな。鉄は錆びやすいから避けたほうがいい」あと洋白線というのもあるにはある




挿絵(By みてみん)


仁「一番面倒なのはブレードを作るところだ」

礼子「同じ形状のものが、今回は6枚必要ですね」

仁「まず6回カット」

礼子「大きめですね?」

仁「ああ。次の工程を見てくれ」




挿絵(By みてみん)


礼子「6枚重ねてビスで止めているんですね」

仁「この状態でまとめて切り出せば同じ形になるだろう?」

礼子「確かに」




挿絵(By みてみん)


仁「加工していく」

礼子「片側のビス部分は切り落とされましたね」

仁「そうだな。付け根側は最後の最後で切り落とすんだ」





挿絵(By みてみん)


礼子「同じ形に揃いましたね」

仁「だろう?」




挿絵(By みてみん)


仁「で、切ったら縁をヤスリで丸める」というかバリを取る

礼子「金属の縁で手を切らないよう気を付けてくださいね」




挿絵(By みてみん)


仁「そして少しひねる」というか曲げる

礼子「治具を作っているんですね」

仁「そうしないと同じ形状にできないからな」

礼子「ベースはケヤキ板ですか?」

仁「うん。そこに丸ノミで凹みを入れた」スプーンを作ったときのケヤキ台だな

礼子「その凹みに合わせて曲面を作るわけですね」

仁「そう。……まあ、どこまで効果があるかわからんが、気分だな」

礼子「ぶっちゃけましたね」

仁「まあな。この大きさだと、実機のスクリューよりもいろいろ甘いから」

礼子「どういうことですか?」

仁「うーん、そうだなあ……」製作からは外れるが、理論として覚えておいて損はないか




【以下、次の画像までは理屈っぽいので読み飛ばしていただいても問題ありません】


仁「まずは、スクリューの回転速度」

礼子「大きさによって違うんですか?」

仁「違う。……水中での音速を超えないようにする必要がある」

礼子「ああ、音は疎密波ですから、それを超えると効率が落ちる?」

仁「それもあるけどな。メインは『キャビテーション』という現象だ」

礼子「それは?」

仁「液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象、と説明されているな」

礼子「よくわからないです」


仁「順に説明しよう。……水などの液体は、圧力が低くなると、沸騰しやすくなる」

礼子「はい」

仁「スクリューの(回転)速度が速くなると、圧力差も大きくなるんだ」表側は高く裏側は低くなる

礼子「水に圧力をかけて推進力を生み出すのですからね」

仁「そうだ。で、低い温度で沸騰すると、生じた気泡はすぐ冷やされ、スクリューから離れて圧力が増えると消滅する」

礼子「でしょうね」

仁「詳細は省く……というか数式は俺もよくわからないが、この泡……気泡が、スクリュー表面を攻撃するんだ」

礼子「気泡が弾けるときの衝撃ですね」

仁「そう。それでスクリューにダメージが加わる、これをエロージョンといってスクリューを速く傷めるんだな」

礼子「難しいです」

仁「だから模型にはほぼ関係ないって」

礼子「ちょっと安心です」


仁「で、気泡がたくさんできると、スクリューの効率も落ちるしな」

礼子「水を押すほうが反動も大きいでしょうからね」

仁「うん。気泡があると思ったように水を押せないわけだ」

礼子「わかりました」

仁「ちなみにシャコのパンチでもキャビテーションが生じるらしい」

礼子「雑学ですね」



仁「あと、バランスだな」

礼子「ああ、回転しますからね」

仁「うん。竹とんぼくらいの大きさだと無視できないけど、直径20ミリくらいだと、あまり影響がないな」もちろんバランスは取れているに越したことはないけど

礼子「ですね」

仁「だから、一応作者は出来上がったスクリューにシャフトを通して水平に置き、様子を見て、重い方を少し削っている」気休めレベルだけどな




挿絵(By みてみん)


仁「さて、製作に戻ろう」

礼子「はんだ付けですね」

仁「その前に、ハブ(中心)になる六角スペーサーに糸鋸で溝を入れておく」その溝にブレードを差し込んではんだ付けするんだ

礼子「ここで六角だとわかりやすいですね」120度がぴったり出ます

仁「そういうことだな。溝は、今回は45度にした」

礼子「急すぎませんか?」

仁「そんなことはない。スクリューというのはイコール『ねじ』だからな」

礼子「はあ……」

仁「螺旋階段を想像すればいい。中心近くはステップの幅が狭いから急だろう?」段差は周辺と同じなのに

礼子「あ、そうですね」外側はステップの幅が広いので歩きやすいです

仁「というわけで、スクリュープロペラは、中心ほどひねり(角度)が強くて、先端ほど弱いんだ」これもまあこの大きさじゃ雰囲気だけどな




挿絵(By みてみん)


仁「で、はんだ付けだ」

礼子「コツはありますか?」

仁「糸鋸で入れた溝にきっちりとブレードを差し込み、少しくらい動かしても外れないようにして3枚いっぺんにはんだ付けをすると楽だな」

礼子「ああ、1枚はんだ付けして、もう1枚……とやっていると、熱で前のハンダが溶けてしまうからですね」

仁「そういうこと」

礼子「これも治具を?」

仁「うん。直径が少しずつ違う穴を開けたMDFミドルデンシティファイバーボードに入れて、直径が揃うようにしているな」



挿絵(By みてみん)


礼子「できましたね」

仁「ちゃんと左右でひねりが逆になっているよな」




挿絵(By みてみん)


礼子「今度は軸の準備ですね」

仁「うん。M2のネジをダイスで切る」

礼子「相手がステンレスだと大変ですね」

仁「そうなんだよな」真鍮の方がずっと楽だ

礼子「ステンレス用のダイスを使わないと厳しいですね」

仁「だけど高いからな」


仁「そういうわけで、ネジを切らずにシャフトをはんだ付けする手もある」壊れた際の交換が面倒だが

礼子「その場合はM2スペーサーのネジ部を2ミリ径のドリルでさらう必要がありますけどね」




挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


仁「で、ネジを切ったシャフトにスクリュー部をねじ込み、外れ防止のロックナットで締めれば完成」

礼子「ロックナットですか」

仁「ナイロンナット、ともいうな。ミニ○駆用のアルミロックナットがいいのではないかと思う」左右で色違いにしてみた



仁「あとはスタンチューブと呼ばれるパイプにシャフトを通して使うわけだが、それはまた次回以降ということで」

礼子「いよいよ船体ですね」

仁「そういうこと」


*   *   *


仁「というわけで、スクリューの自作でした。今回はこれまでです」


仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」

 ごらんいただきありがとうございました。


 できるだけ早く船体のご紹介をしたいと思います。


 20210720 修正

(誤)俺の解説で紹介するっていう企画の第*弾です」

(正)俺の解説で紹介するっていう企画の第16弾です」

(誤)仁「詳細は省く……というか数式は俺のよくわからないが、この泡……気泡が、スクリュー表面を攻撃するんだ」

(正)仁「詳細は省く……というか数式は俺もよくわからないが、この泡……気泡が、スクリュー表面を攻撃するんだ」

(誤)仁「だから、一応作者は出来上がったスクリューにシャフトを通して水平に起き、

(正)仁「だから、一応作者は出来上がったスクリューにシャフトを通して水平に置き、

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― 新着の感想 ―
[一言] 現代はネットで何でも買える時代だからスクリューを自作する人はほとんどいないでしょうね。 試しにネット検索したらダ・ヴィンチのスクリュー(飛行機械)の模型がヒットして笑ってしまいました、こん…
[一言] 少しずつ、部品が増えていくのがとても楽しいです。 全体のイメージがまだよく分からないので、 そこも毎回の楽しみになってます。 今回もありがとうございます! 次回も楽しみにさせていただきま…
[一言] >>同じ形に 56「なんだか鱗みたいだ」 >>キャビテーション ハ「・・・魚雷?」 エ「別の気泡なら探知逃れ」 >>エロージョン 腐「!」ガタタッ >>船体 明「プラモデル流用?」 5…
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