表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 近江 由
ライラック王国の姿~ライラック王国編~
60/351

無邪気な青年たち

 

 宿に来た兵士たちとルーイは今後の話を打ち合わせて、彼等を城に返した。


 警戒する必要はあるが、兵士たちには何事も無かったように城で過ごしてもらわないといけない。


 ルーイはミナミとまた部屋に閉じこもっている。


 見張りの仕事を終え、アロウからも休憩の許可を得たマルコムとシューラは、宿のロビーで向かい合って座っていた。


「あの兵士君…頑張っているよね。微笑ましいよ。」

 シューラは冷やかすような口調で笑いながら言った。


「あの雑魚?どこが?不快じゃないの?」

 シューラの言葉にマルコムは露骨に顔を歪めた。


 シューラはマルコムの顔を見て驚いたように目を見開いた。


「そんなに驚くこと?だって、あいつ絶対に弱いよ。」

 マルコムはシューラの顔を見て、残念そうに眉尻を下げた。


「僕と君に比較したらだめだよ。彼は…自分の程度をわかっているから、僕はそこまで嫌いじゃないよ。」


「程度をわきまえている?どこが?あいつ俺に絶対に敵わないくせに敵意をむき出しにしているんだよ。…ありえないよ」


「姫様に対して意識し過ぎだからだよ。君の言質を取ったとはいえ、僕も不安になるほど君は彼女を意識している…」


 シューラの言葉にマルコムは眉をピクリとさせた。


「君が彼女たちへの協力を了承するとは思っていなかったし…意外だよ。」

 シューラは腕を組んでマルコムを責めるように見た。


「…アロウさんには、お世話になっている。」


「王様の「お友達」だった人…か。」

 シューラは「お友達」という言葉をわざとらしく強調してマルコムを煽るように笑った。


「宿と食事のお世話になっている、それに、彼は嫌いじゃない。」

 マルコムは両手を上げて困ったような顔をした。

 そして、鋭い視線をシューラに向けた。


 どうやらこの話題はここまでということらしい。


 これ以上マルコムは「お友達」に触れるような話題には答えないと示したのだ。


 シューラは溜息をついた。


「じゃあ…僕たちは、あの死神を出し抜けると思う?」

 シューラは挑むような目をマルコムに向けた。

 その口調は、楽しそうで、何かを期待しているものだった。


「さあ…?あの、お姫様や雑魚君には無理だよ。」


「それはわかっているよ。更に言うなら…噂の王子様も無理だろうね。」

 マルコムの反応が普段通りなのか、シューラ安心したような顔をした後、ずっと楽しそうにしている。


「そうだよ。でも…俺がいれば…違うよ。…もちろん君もね」

 マルコムは口元を歪めて笑った。


 マルコムのその顔を見て、シューラも同じように笑った。


「大事な位置とはいえ、こんな小国にあいつが来るなんて、俺と君の噂を聞いたからに決まっているよ。」

 マルコムは左手を眺めながら笑った。


「…久しぶりに帝国の相手しようか?」

 シューラは笑顔でマルコムに聞いた。

 その笑顔は、無邪気でどこまでも楽しむことしか考えていない顔だった。


「…あのさ、君のほうが姫様に協力的だよね…」

 マルコムはシューラの顔を見て呆れた顔をした。


 シューラは変わらず笑顔だ。


「まあ、善意じゃなくて、君は暴れたいだけの癖にね…」

 マルコムはため息交じりに呟いた。


「当然だよ。」


「君のその清々しさは、やっぱり好ましいよ。」


「僕も…君の、実は割り切れない人間らしい所とか…大好きだよ。」

 ガタン…と、シューラが言い終えると同時にマルコムは彼の胸倉を掴んだ。


「君さ…俺が姫様になびかないか不安になっていなかった?」

 マルコムはシューラを睨んでいた。


「楽しもうよ…モニエル。」

 シューラは口を歪めて笑った。


「ゴミの相手ばかりで溜まっているでしょ?僕も…君も」

 シューラはマルコムの右頬の傷に手をそっと伸ばした。

 そして傷にゆっくりと指を添わせる。それは、なにか危ない香りのする触り方だった。


「…」


「興奮すること、血が滾ること…久しぶりなのに、楽しまないと損だよ。」

 シューラは目を細めて笑い


「力を振るっている限り、君は姫様になびくことは無いよ。」

 と断言し、シューラはマルコムの頬の傷に爪を立てた。


 マルコムはシューラを見て驚いたように目を見開いたが、すぐに眉を寄せて呆れたように笑い始めた。

「…それを聞いて安心したよ。」

 マルコムは顔に触れるシューラの手を乱暴に掴んだ。


「見られているよ?」

 シューラは愉快そうに目を細めながら、マルコムの死角にあたる客室に続く廊下への入り口を目で指した。


「知っている。けど、違う意味で姫様を大切に思う兵士様に警戒されすぎるのは…嫌だからね。」

 マルコムは横目で背後に視線をすっと向けてから笑った。


「…楽しもうよ…イシュ…」

 マルコムは口を歪めて笑い、シューラの耳に口を寄せて囁いた。


 二人は目を見合わせて笑った。

 不思議とその顔を無邪気だった。




 そして、シューラの言った通り、客室に続く廊下への入り口にルーイがいた。

 彼は目を見開いてシューラとマルコムの様子を見ていた。


「…まじかよ…」

 意図せずにルーイは呟いていた。




マルコム:

主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。

追われている身であるため「モニエル」と名乗り、本名は伏せている。


シューラ:

主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。

追われている身であるため「イシュ」と名乗り、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。



ミナミ:

たぶんヒロイン。ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。


ルーイ:

ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。オリオンの命と自らの意志により、ミナミの逃亡の手助けをする。


フロレンス(リラン・ブロック・デ・フロレンス):

帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねており、帝国の赤い死神と呼ばれる青年。まだ若いが、ライラック王国の対応の頭。ミナミの逃亡を助ける。


オリオン:

ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。ミナミの逃亡の手助けをオリオンに命ずる。


エミール:

帝国騎士団副団長。リランの付き人。リランよりもかなり年上。


アロウ:

ライラック王国で表では武器屋、裏では宿屋を営業する男。裏の情報を城に流していた。国王の古い友人でマルコムとシューラの雇い主。


ホクト:

ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ