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世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 近江 由
ライラック王国の姿~ライラック王国編~
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合わない青年

 


 ルーイはアロウと一緒に行ってしまい、部屋にはミナミと廊下の見張りに付いていたモニエルだけだった。


 アロウがモニエルを部屋にいれて、少しの間だけの護衛と見張りを任せたのだ。


 要は、ミナミは脱走のおそれがあると判断されたのだ。


 まあ、それは否めないが、如何せんモニエルとは気まずい。


 彼とよく接したわけではないが、歓迎されていないのはわかるし、ルーイとは険悪な気がするのは気のせいではない。


 沈黙も気まずく、部屋の居心地が良くないのは当然だ。


「…あの…」

 沈黙が苦しくミナミは口を開いた。


「勉強したら?」

 モニエルはミナミと会話する気がないようで、相変わらず冷たい口調だ。


 ミナミは取り付く島もないモニエルに諦めを感じ、大人しく本を読もうとした。


「…あ…」

 ミナミは彼に言われたページを開いてから、気になっていたことを思い出した。


 ミナミの何かを察したのか、モニエルはミナミが何かを言うのを待つように彼女を見ていた。


 そんなモニエルと目が合って、ミナミは不意にどきりとした。


 モニエルは顔がいい。

 オリオンも顔がいいが、彼は兄だ。異性としては見たことが無いのは当然だ。


 穏やかそうなたれ目と、端正な口元や鼻はどこか気品があり、正直裏の宿にいるような外見じゃない。

 ただ、顔の傷だけは別だ。

 あきらかに武器によってついた傷は、上品な彼の外見に狂暴性と野性味を与え、危ない魅力を感じないことも無い。


 そんな外見の良い青年に見つめられると、年頃のミナミは意図しなくてもときめいてしまう。恋愛感情は無くても、そうなってしまうのは仕方ない。


 だが、今は彼の外見にどきまぎとしている場合じゃない。


 気になっていることがあるのだった。


「…モニエルさんって…貴族ですか?」


 ミナミの問いにモニエルは一瞬目を見開いた。

 だが、直ぐに冷たい視線を送る平常の表情に戻った。


「…紅茶を飲んだ時とか、動作より…音が少なかったですし、普段の動きもですけど…」


 ミナミの目から見ても、モニエルは上流階級の教育を受けている動きをしている。


 外見も、顔の傷が無ければ、貴族らしいものだ。


「…教育は受けている。そんな人間は沢山いる。」

 モニエルは冷たい口調で、突き放すようにミナミに言った。


「…はい…」

 ミナミはそれ以上聞けるはずもなく、大人しく本を読むことにした。


「…君はかなり感情的になるのが許される環境にいたんだね」

 モニエルは無感情な声で呟いた。


 ミナミはその言葉にピンとは来なかったが、何となく甘やかされてきたと遠回しに言われた気がした。


「魔力を漂わせて光らせられるほど持つのは基本的に貴族以上が多い。でも貴族っていうのは感情の抑制が前提となった教育を受けている」

 モニエルは淡々と言っている。


 ミナミは彼が何を言おうとしているのかわからなかった。


「思った言葉、たとえ口に出さない言葉でもそれを体内に押しとどめるように意識するといいよ。簡易的だけど応急処置にはなる」

 そう言うと、モニエルはミナミと同じように光った。

 彼がやっているのはミナミが不意に光ってしまう現象を再現しているのだ。

 そして光ったと思ったらすぐに収まった。


「一番は君の兄に聞くのいいだろうね。」

 モニエルはそう言葉を締めるように言うとまた黙った。


「あ…ありがとうございます…」

 ミナミは思わず姿勢を正して彼にお礼を言った。


 モニエルは目線だけミナミに向けて何も言わなかった。



 しばらくすると、ルーイが戻ってきた。

 彼はモニエルが部屋にミナミと二人でいると分かった瞬間、彼を部屋から追い出した。


 どうやらアロウはルーイに言わずにモニエルを部屋にいれたらしい。


 ルーイはモニエルと何か話したかと聞いてきたが、ミナミは「特に何も」と答えた。

 何となく、モニエルの身の上に関することや彼から魔力について教えてもらったのを言うのは気が引けたのだ。


 あからさまに拒絶を示すモニエルに対して、立ち入ったことを訊いた負い目や、魔力についての教授に恩を感じたのかもしれないが、少しの罪悪感がミナミにあった。


「…そうか…よかった。」

 ルーイはモニエルと話していないことを聞いて安心した。


 それから、ルーイは自分を落ち着かせるために深呼吸を始めた。

 どうやら何か大事な話があるようだ。


 それをモニエルとのことよりも先に、開口一番に話すべきではないかとミナミは思ったが、心の準備が必要なものなのだろうと思い、特にルーイの様子を気にしなかった。


「実は…俺に来たお客人っていうのが…城の兵士たちだ」


「え?」


 ミナミはルーイの言葉に体を強張らせた。




マルコム:

主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。

追われている身であるため「モニエル」と名乗り、本名は伏せている。


シューラ:

主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。

追われている身であるため「イシュ」と名乗り、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。



ミナミ:

たぶんヒロイン。ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。


ルーイ:

ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。オリオンの命と自らの意志により、ミナミの逃亡の手助けをする。


フロレンス(リラン・ブロック・デ・フロレンス):

帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねており、帝国の赤い死神と呼ばれる青年。まだ若いが、ライラック王国の対応の頭。ミナミの逃亡を助ける。


オリオン:

ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。ミナミの逃亡の手助けをオリオンに命ずる。


エミール:

帝国騎士団副団長。リランの付き人。リランよりもかなり年上。


アロウ:

ライラック王国で表では武器屋、裏では宿屋を営業する男。裏の情報を城に流していた。国王の古い友人でマルコムとシューラの雇い主。


ホクト:

ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。



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