優し過ぎる王子様 2
リランはオリオンをホクトに会わせてくれなかった。
と言っても、囚われたばかりであるため仕方ない。
オリオンはリランに隙ができるのはいつだか考えていた。
おそらくオリオンに付いている兵士を含め王国側の兵士たちは皆それを探っているだろう。
リランは数人の騎士を残して、夜は船で過ごすようだった。
彼も自分を殺そうとするものがいるのはわかっているのだろう。
食事も全て帝国側で用意したものしか食べていない。
ホクト達が彼を陥れようとしたため、それを咎めにくい。
気が付くと長い一日が終わろうとしていた。
オリオンはふと、ミナミは大丈夫だろうかと考えた。
彼女がどこに逃げているのかわからないが、町に捜索に出している兵士には、捜索よりも情報収集を徹底させ、全てオリオンに上がるように命じている。
帝国側に不信を持つ彼らはオリオンに従ってくれている。
彼女の場所さえわかれば、どうにかして父親の葬儀には出て欲しいと思っている。
最期の別れが、ホクトが殺した場面というのはいくら何でも辛すぎる。
埋葬されるまでとは言わないが、せめて見送る場面を彼女に与えたい。
これから行われる葬儀を考えていた。
「オリオン。」
そんな時急に声をかけられた。
オリオンは驚いて身構えた。
「警戒するな。」
声をかけたリランはオリオンの様子を見て呆れていた。
「なんだ?」
「姫様は見つかりそうか?」
「…まだ昨日の今日だから期待するな…」
オリオンは必要以上語らないようにした。
事実だけを述べ、自分の憶測は絡めない。
リランに嘘が通用するとは思っていない。
彼と接したのもそれこそ昨日の今日だが、嘘が通用するような類の人間だとは思っていない。
「そうか。」
「気になるのか?」
「当然だ。この国の姫様だし…」
リランは少し寂しそうに笑った。
それは、おそらくミナミが昔の彼の知り合いに似ているということが関わっている表情だった。
「…父親の最期が殺された場面なのは…辛すぎる。」
オリオンはミナミに見送る機会を与えたいことをリランに言った。
「…そうか。…そうだな。」
リランはオリオンを眩しそうに見ていた。
それは、羨むような目であったと同時に彼からは想像もできない、慈しむようなものでもあった。
「お前は…優しいな。」
リランはオリオンの肩を叩いた。
優しい?
オリオンはリランの言葉を否定した。
オリオンは優しいわけではない。
優柔不断なのだ。
どれも捨てられない、捨てるのが怖い。
王子なら責任のない言葉で隠すことのできた自分の本質。
リランはオリオンの様子を見て呆れたようにまた笑った。
「じゃあ、俺は船で過ごすから…」
リランはオリオンに手を振り、歩いて去って行った。
オリオンはリランの背中を見送りながら、彼の周りに付いていた騎士たちの様子を見た。
リランがオリオンから離れてから彼らはリランの元に付き従った。
!?
オリオンは自分の周りの兵士たちの様子を周りに悟られないように見た。
彼等もオリオンと同じことを思ったようだ。
リランに隙ができる瞬間だ。
「…喜ぶべきか…」
オリオンは複雑な気持ちだった。
リランは、オリオンと接する時にだけ警護を離れさせている。
要は、一番彼に隙があるのは、オリオンと話している時、接しているときだ。
マルコム:
主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。
追われている身であるため「モニエル」と名乗り、本名は伏せている。
シューラ:
主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。
追われている身であるため「イシュ」と名乗り、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。
ミナミ:
たぶんヒロイン。ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。
ルーイ:
ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。オリオンの命と自らの意志により、ミナミの逃亡の手助けをする。
フロレンス(リラン・ブロック・デ・フロレンス):
帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねており、帝国の死神と呼ばれる青年。まだ若いが、ライラック王国の対応の頭。ミナミの逃亡を助ける。
オリオン:
ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。ミナミの逃亡の手助けをオリオンに命ずる。
アロウ:
ライラック王国で表では武器屋、裏では宿屋を営業する男。裏の情報を城に流していた。国王の古い友人でマルコムとシューラの雇い主。
ホクト:
ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。




