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世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 近江 由
出会い~ライラック王国編~
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地下水路のお姫様

 


 昼間は薄暗い地下水路は、夜には真っ暗だった。


 申し訳程度に設置されている明かりが頼りなく水面を照らしている。


 その水面がせわしなく揺れてきた。

 水泡がボコボコと湧きあがって

 バシャンと、地下に響く水音を上げた。


「ぶは!!」

 水の中から出てきたのは、ミナミを抱えたルーイだった。


 ルーイは直ぐに地下水路の陸に上がり、ミナミを落ち着かせた。


「げほ…はあ…はあ…」

 ミナミは、水を飲みこみ息切れはしているが、意識もあり命に別状はなさそうだった。


 それを確認したルーイは安堵の息を吐くと、直ぐに自分も陸に上がりミナミの横に並んだ。


「…お城の外…久しぶりだ。」

 ミナミは真っ暗な地下水路の天井を見上げて言った。


「まあ、ここは…ミナミは来ることはないような場所だから…」

 ルーイはミナミの手を取り、立ち上がらせた。


 軽く服の水を絞り、身を軽くするとルーイはミナミの手をしっかりと握り歩き始めた。


 ミナミはルーイに手を引かれるまま歩いた。


 ルーイは地下水路の壁にある申し訳程度の明かりである蝋燭を見て、何かを探している。


「何を探しているの?」


「ああ。赤い蝋燭が目印なんだ。」


「え?」


 ルーイは赤い蝋燭の真上に目的の宿があると説明し、そこで地上に上がるために探していると言った。


「赤い蝋燭…か」


 ミナミも目を凝らしてみた。


 ルーイはミナミの様子を察して笑った。


 赤い蝋燭と言われても、暗いうえに蝋燭は煤で汚れて茶ばんでいる。

 取り替えられていない箇所も多くあり、明かりが無いところもある。


「…あ!?」

 ミナミは不自然に光る赤を見つけた。


「…あった…」

 言われて探していた時はわからなかったが、いざ赤い蝋燭を見てみると明らかに違ってあっという間に見つかった。


 ルーイは赤い蝋燭の近くに寄ると、その周辺の壁を撫で、何を探し始めた。


「…あった。」

 ルーイはどうやら天井の出口に続く足場を探していたようだ。

 暗くてよく見えないが、蝋燭の近くに地上への出口があるようだ。


 ルーイはミナミの手を引き、壁の足場に触れさせた。


「俺が先に出て行く。ミナミは俺の合図があるまで出るな。」

 ルーイはミナミの手を握り、顔を極限まで近づけて言った。


 水路を泳いだことにより、ミナミもルーイも体が濡れて体温を奪われている。


 冷たくなってくる自分の体にとって、ルーイの手から伝わる体温はミナミにとって頼れるものだった。

 ミナミはルーイの手をぎゅっと握った。


「…ルーイは…どこにも行かないで。」

 ミナミは縋るような気持ちでルーイを見た。


 ミナミの視線を受け、ルーイの目は揺れた。


 彼の目の揺れを察知したミナミは、彼の変化に不安を抱いた。


「ルーイ…っ!?」

 ミナミがルーイの名を呼んだ瞬間、ルーイはミナミを強く抱き寄せていた。


 ミナミに、彼の鼓動が、心臓の音が密着させている身体全体から伝わってくる。

 意図せずにミナミも鼓動が早まる。


「…大丈夫。


 俺がミナミを守る…絶対に…」

 ルーイは声と手を震わせながらも、力強く断言していた。

 だが、その言葉はミナミに縋るようであり、どこか不安を持っていた。


「ありがとう…」

 彼の様子を見ることができないミナミは、ルーイの言葉にわずかな安心を抱いていた。

 そして、最愛の友人に向ける目をルーイに向けていた。




マルコム:

主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。

追われている身であるため、本名は伏せている。


シューラ:

主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。

追われている身であるため、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。



ミナミ:

ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。


ルーイ:

ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。



フロレンス:

ミナミを王宮から逃がしてくれた帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねている。


オリオン:

ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。


アロウ:

ライラック王国で表では武器屋、裏では宿屋を営業する男。裏の情報を城に流していた。国王の古い友人でマルコムとシューラの雇い主。


ホクト:

ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。



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