表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 近江 由
出会い~ライラック王国編~
29/351

不思議な関係の二人 2

 

「…どこの国も、似たようなものか…」

 マルコムは建物の壁にもたれながら呟いた。


 空は暗く、淀んでいる。

 澄んだ星空を期待していたわけではないが、雲がかかった月明かりは、朧月夜というには空気が汚かった。


 マルコムはアロウの顔と表情を思い出して舌打ちをした。


 彼が、懐かしそうに目を細め、友との思い出に浸るような顔がマルコムは直視できなかった。


 “友情”


 そんな言葉がよぎるからだ。


 色んなことがあって、信じられるものは自分の力だということに辿り着いた。


 それでも、思い出すのは、振り払いたい存在だ。


 不意に目を閉じると浮かぶ、かつての友の金色の髪。

 こことは違う、海の向こうの大陸の大きなマルコムの母国。海が見えない大きな城のある大きな町を二人で歩いた思い出。



 マルコムには実力で勝ち取った地位で、かつて、母国でもてはやされた時があった。

 町を歩けば握手をせがまれることもあった。

 頼れる仲間、親友と呼べる存在、尊敬できる先輩、頼りないが可愛がっている後輩。

 そして居心地のいい唯一の場所。

 今と全く違う生活をしていた。



 町の若者に握手をせがまれた時、あまりに警戒をし過ぎていた。


 それを見かねた彼女は呆れていた。

「マルコムさ…帝都には基本的に私たちに危害を加えるやつはいないって。警戒しすぎよ。」


 彼女は作り笑顔で手を振る自分を横目で見ていた。


「警戒するに越したことは無いよ。」

 笑顔で返した。


 自分の顔を見ていた彼女は、グレーの瞳を細めて顔を顰めていた。


 その顔を思い出した時、ふと懐かしさに微笑みそうになった。



 マルコムは慌てて首を振った。


「…違う!!…俺は捨てたんだ…」

 マルコムは何度も何度も首を振って浮かんだ感情も、浮かべようとした笑みも振り払った。


 失った唯一の場所、理解者、仲間

 全て捨てたのだから。



 ピタリと、首筋に冷たい何かがあてられた。


 マルコムは条件反射でそれを察知するとすぐに体を捻り、あてられた何かを掴んだ。


「…ちょっと!!力強いって…」


 あてられた何かの持ち主は焦ったような声を上げた。


 マルコムはそれを確認するとため息をついた。

 だが、それでも手を放すことはない。


 マルコムの首にあてられたのはシューラの手だった。

 マルコムはそれを掴んだままシューラを見ていた。


「どうしたんだい?無様だね。」

 シューラは掴まれたままの手を見て呆れたように笑った。


「笑いに来たのか?」


「何を?僕分からないなー」

 シューラはマルコムの問いに、意地の悪い笑みを浮かべていた。


「…クソが」

 マルコムはシューラの表情を見て舌打ちをした。

 マルコムは苛立ちをぶつけるようにシューラを壁に押しつけた。

 シューラは衝撃に呻きながらも特にマルコムを睨むことはなかった。

 逆に、シューラはマルコムの顔を見て満足そうに笑っていた。


 シューラはマルコムの右頬の傷を掴まれていない方の手で撫でた。


 マルコムは眉をピクリと吊り上げる。


「ストレス溜まっているんじゃないの?懐かしむなんてさ」

 シューラは変わらず満足そうに笑っている。



 マルコムとシューラの関係は少し変わっていた。

 お互い共に旅をするのに心は開かないと言っている。


 だが、感情をぶつけ合う。

 それは友人関係や親しい間柄の物ではなく、ただの八つ当たりに近いことが多い。


 お互いを無機質な感情で割り切っていると言っている。


 ただ、二人を結ぶのは価値観の共感であるのが、また矛盾をしていた。


 いや、その価値観の共感があるからこそ、お互いを無機質な感情で接することに割り切れると思っているのかもしれない。


 はたから見たらただの依存関係にしか見えなくても


 実際マルコムはわかっている。

 なぜなら彼は、自分がとても脆いと分かっているからだ。



 


マルコム:

主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。

追われている身であるため、本名は伏せている。


シューラ:

主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。

追われている身であるため、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。



ミナミ:

ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。


ルーイ:

ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。



フロレンス:

ミナミを王宮から逃がしてくれた帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねている。


国王:

ミナミとオリオンの父。ライラック王国国王。穏やかで平和を愛する王と有名。


オリオン:

ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。


ホクト:

ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ