不思議な関係の二人
マルコムとシューラの雇い主の男は、宿に戻るとすぐにカウンターに腕を付いて項垂れていた。
マルコムはシューラを横目で見た。シューラも同じように見た。
二人は雇い主の男が国王の殺害に必要以上に落ち込んでいると思っている。
この男は裏に通じている人間である。それが国王陛下と普通ではないような繋がりを見せている。
二人は腕を組んで、雇い主を見下ろしている。
「…不審に思っているな。」
「別に話したくなければ話さなくていい…」
皮肉気に笑う雇い主にマルコムは首を振った。
「いや…話そう。守ってもらうなら…」
雇い主はマルコムとシューラをカウンターの裏に呼んだ。
マルコムとシューラは、出入口を一望できるカウンターの裏で店内を警戒しながら雇い主の男を見た。
男は二人の視線を受けると頷いた。
「…まず、俺はアロウという。」
雇い主は名乗っていなかったのか、名前を名乗った。
雇い主、アロウはマルコムとシューラの顔を見てから話し続けた。
「俺の立場は、表でやっている武器屋は城の兵士たちのお得意様だが、裏の情報と城の情報のやり取りをしている。」
アロウは、裏での宿と表での武器屋の立ち位置から城との情報のやり取りを説明した。
城の兵士たちがいつも通り武器を調達する。
その武器は一度城の審査を通す必要がある。
その審査で武器を包装しているものに情報を潜ませる。
勿論兵士たちは把握していない。
意図せずに使い走りになるのだ。
「確かに、君の立ち位置は国王が亡くなったら危ういね。」
シューラは頷いていた。
「それだけじゃない。俺がこの位置に付いたのは、国王がまだ王位に就く前の知り合い…友人だったからだ。」
アロウは懐かしそうに目を細めた。
「タレスには何度も助けられた。」
アロウは鳩尾辺りに手を当てて呟いた。
タレスとはおそらく殺された国王の名前だろう。
その顔と彼の様子を見てマルコムは眉を顰めた。
その様子を察したシューラはマルコムを横目で睨んだ。
「…君が話聞いておいて」
マルコムは睨んだシューラの頭を軽く叩いた。
そして、そのまま出入り口に向かった。
「マル…モニエル君。」
アロウは、マルコムが出て行こうとしているのを見て、彼が何を意図してそのような行動をしているのか分からない様子だ。
「…外で見張っています。」
マルコムは振り向かずに言うと、そのまま外に出て行った。
シューラは溜息をついた。
「…何か、俺は言ったか?」
アロウはシューラに尋ねた。
シューラは呆れたようにため息をついて首を振った。
「…僕も詳しくは分からないけど、あいつの昔の仲間でも思い出したんじゃない?」
シューラは冷たい口調だった。
「昔の…?」
「…丁度“死神”の話もあったし…」
シューラはそれだけ言うと首を傾げた。
どうやら自分はこれ以上知らないと訴えているのだ。
ただ、それは嘘であり、これ以上は聞いて欲しくないからそのような行動をしている。
アロウはわかっていないが、マルコムの過去について話すシューラの顔は、とても複雑そうだ。
マルコム:
主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。
追われている身であるため、本名は伏せている。
シューラ:
主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。
追われている身であるため、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。
ミナミ:
ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。
ルーイ:
ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。
フロレンス:
ミナミを王宮から逃がしてくれた帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねている。
国王:
ミナミとオリオンの父。ライラック王国国王。穏やかで平和を愛する王と有名。
オリオン:
ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。
ホクト:
ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。




