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世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 近江 由
出会い~ライラック王国編~
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逃げるお姫様

 

 ルーイは必死にミナミの手を引いて歩いていた。


 あまりに強く握りすぎるため、ミナミは痛いと何度か訴えようとした。

 しかし、ルーイの顔が必死なことと、ミナミもそれを些細なことだと思える状況なので、訴えるのは止めた。


 ルーイの手は少し震えていた。


「…大丈夫だ…ミナミ…」

 ルーイは小声でミナミと自分に言い聞かせるように呟いていた。


 本当は、直ぐに駆け出して全力で逃げたい。しかし、下手に走ると目立つため、早歩きで進む。

 そしてミナミは自身を落ち着かせて、魔力が光り出さないように必死だった。


 暗いため注意すべきはシルエットだけだが、ミナミは帝国の軍服を着ているため、女性のシルエットではない。

 ルーイの魔力のおかげで二人の姿は少し暗く闇に馴染んでいる。足音もルーイの風の魔力でごまかしている。


 兵士で見回りをよくすることから、ルーイはミナミよりもずっと庭の死角を知っていた。


 だが、それを選んで逃げても城の敷地内を兵士達が満遍なく捜索している。


「おい!!こっちにいないか!?」

 うしろの方から向かってくる声と足音が聞こえた。


 ルーイはミナミの手を引いて、木箱が積んである物置に向かった。

 物置の中は真っ暗だった。


 ルーイはミナミと真っ暗な物置の中に入ると、素早く木箱をずらし、隙間を作り二人で潜り込んだ。

 隙間を隠すようにルーイは足で木箱を移動させ、物置を開けても見つからないようにした。

 隙間は狭いため、ルーイは私を抱きかかえるように隠して、口を手で抑えて息を潜めていた。


 羽交い締めのような体勢だったため、ルーイの心臓の音が頭に響く。


 緊張しているのが分かる。

 ドクンドクンと、彼の心臓の音が響く。自分の心臓の音よりもよく聞こえた。


 外には人の気配が増えてきている。

 どうやら目的の人物が全く見当たらないようだ。


 それにミナミが該当しているため、見つからなくて嬉しいが、人の気配は不安になってくる。


 外では追ってきている兵士たちの話声が聞こえる。


「オリオン王子の部屋は…」


「王子は人嫌いだ。そもそも、見張りの奴も言っていたが、誰も来ていないらしい。」


「…別棟は探したのか?」


「もしかして、もう出て行ってしまっているんじゃないのか?」


「町にも人を出すか…」


 何やら相談をしているようだ。

 詳しい内容は、遠ざかっていくせいで聞こえないが、人の気配が無くなってくるのはいいことだった。


 周りの音が遠ざかり、人の気配が無くなると、ルーイはそっとミナミの頬を撫でた。


 ミナミは驚いたが、頬に触れると濡れていた。気付かないうちに涙を流していたようだ。

 ルーイは涙を拭ったのだ。

 そして拭われた涙はキラキラと光って魔力を帯びていた。

 ミナミは慌てて深呼吸をして光を抑え込んだ。


「…明るくなる前に、町に出る。」

 ルーイは声を潜めて話し始めた。


 今後の動きについて、先にミナミに話しておくつもりのようだ。


「軍の下っ端がよく行く武器屋が、裏で宿をやっているんだ。そこは身を隠すのに持ってこいだから、そこで落ち着くまで隠れよう。」

 ルーイはミナミの身体をぎゅっと抱きしめていた。


 心臓の音から、彼が緊張しているのが分かる。けれど、不思議とその音はミナミを安心させてくれた。


「オリオン王子がどうにかしてくれるはずだ…だから、それまでの我慢だ。」


 ルーイの口からオリオンの名前が出ると、不思議と頼れる気がする。

 それはきっと、ルーイが彼を信頼している口調だからだろう。


 オリオンがルーイのことを色々言っていたが、ミナミは二人が信頼し合っているのが分かって、こんな状況にも希望が見えて救われる気持になった。


「…ルーイも…一緒?」

 ミナミは、後ろのルーイの顔を見上げた。


「もちろんだ…」

 ルーイはミナミを更にぎゅっと強く抱きしめた。





マルコム:

主人公。茶色の髪と瞳をしている。整った顔立ちで人目を引くが、右頬に深い切り傷のあとがある。槍使いで顔に似合わず怪力。身体能力が高く、武器を使わなくても強い。

追われている身であるため、本名は伏せている。


シューラ:

主人公。白い髪と赤い目、牙のような八重歯が特徴的。日の光に弱く、フードを被っていることが多い。長い刀を使う。マルコムよりも繊細な戦い方をする。

追われている身であるため、本名は伏せている。マルコムと二人の時だけ本名で呼び合う。



ミナミ:

ライラック王国王家の末っ子。王に溺愛されている。国王殺害を目撃してしまい、追われる身になる。好奇心旺盛で天真爛漫。お転婆と名高い。汚いものを知らずに生きてきた。


ルーイ:

ライラック王国の兵士。ミナミの幼馴染。市民階級であるが、いつかミナミと並ぶために将軍を目指し剣や勉強に励んでいる。



フロレンス:

ミナミを王宮から逃がしてくれた帝国の公爵家の若い青年。赤い長髪を一つに束ねている。


国王:

ミナミとオリオンの父。ライラック王国国王。穏やかで平和を愛する王と有名。


オリオン:

ライラック王国第一王子。ミナミの兄。王位継承権第一位。


ホクト:

ライラック王国第二王子。ミナミの兄。王位継承権第二位。父である国王を手にかける。


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