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世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 近江 由
ライラック王国のお姫様~ライラック王国編~
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訪問する王子

 


 ライラック王国の王城のいいところは、お城から港を含める王都全体が見渡せ、さらに海も一望できるところだ。

 海を眺められる高台に造られた鮮やかなアクアブルーの屋根をし、塩害対策で特殊な魔石を用いて淡くひかる城壁の城はこの国のシンボルでもある。


 港に入った船が最初に目につく建物はまさに、この王城だ。


 そして、王族の者の部屋も例外なく海が見える。


 外側にあるわけではなく、建物の高い位置に部屋が置かれているのだ。


 そんな海の見える自室のバルコニーで、ミナミは今、潮風に吹かれながら難しい顔をしている。

 部屋から海と共に見える騒がしい港は、常に魔導機関の光でキラキラしており、夜だとなおさら綺麗だ。

 しかし、色々あった心境のせいか、港が心なしかいつもより暗く感じる。だが、気のせいだろう。


「…頭がパンクしそう…」

 ミナミは呻きながら言った。


 今日1日でたくさんのことがあったのだから当然だろう。

 そして、おそらくミナミにとって今日は人生の転機でもあったはずだ。


 ルーイと父親と話し、ミナミの見ている世界は確かに変わった。


 廊下でぶつかった異国から来たという青年のことも少しだけ気になった。


 父である国王はそこまで悪印象は持っていない様子だったが、兄のオリオンは真逆だった。

 そもそも、オリオンが好印象を持つ人間をミナミは知らない。


 ふと、ミナミは海の変化に気付いた。


 なにやら黒い影が沢山ある気がする。

 暗くてよく見えないし、船なら魔導機関の光が目立つはずであるから見間違いかと思った。


 目をこするってまた見たが、影はある気がする。


 ただ、曖昧だ。


「…望遠鏡でもあれば…」

 ミナミは部屋の中にないか探そうとした。


「あれ?…お兄様?」

 ミナミは城の中庭に見えた人物に首を傾げた。


 もういちどバルコニーから身を乗り出して確認した。


「…やっぱり、お兄様だ。」

 ミナミは確信を持った。


 ちなみに、国王の子供は4人である。つまり、ミナミは4人兄妹の末っ子だ。

 上からオリオン、ホクト、アズミ、ミナミだ。

 更に言うなら、オリオンだけが母親が違う。

 というのも、オリオンの母の前王妃は、病弱だったためオリオンを生んですぐになくなったのだ。

 ホクトからの3人はいわゆる後妻の子供だ。


 長男のオリオンはほぼ確実に後継ぎであるのでほとんど王城の中にいるが、次男のホクトは王城どころか王都にいることが少ない。アズミはもう嫁いでしまっている。


 今ミナミが見たのはオリオンではなく第二王子のホクトだ。


 ホクトの外見は、黒髪に青い目とミナミとオリオンとは違う。ミナミとオリオンは国王である父親の髪と目の色をそのままだが、ホクトは母親に似ている。


「どうして…?」

 ミナミは気になって、望遠鏡を取りに行くのではなく、兄をこっそり出迎えようと考えたのだ。


 美青年だが性格の悪さで人気のないオリオンとは対照的に、ホクトは外見こそ純朴な青年という感じで目立たないが、優しく穏やかな彼は人気が高い。


 そして、ホクトはオリオンと違い穏やかでミナミに対しても優しい。

 ミナミはオリオンよりもホクトの方に懐いている。


「そうだ。お兄様に今日のこと話そう…」

 ミナミは今日父やルーイと話して勉強をしっかりとやるようになった話をホクトにしたいと思った。


 優しいホクトはきっと喜んでくれるだろうし、なによりも彼と話したい。



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