幼馴染の兵士 2
静まり返る詰め所で、ミナミは気まずそうに椅子に座ったままルーイを見ていた。
ルーイはミナミの友人で幼馴染だ。
彼とは、小さい時から授業をさぼって遊ぶなどしている間柄だ。
最初は身分など考えずに純粋に遊んでいた。
兵士になってからも、仕事以外では砕けた口調で話す。
心を開いてもらっていると思っていた。
「俺が将軍になりたいって…知らなかったことか…」
沈黙を破ったのはルーイだった。
ミナミは黙ったまま頷いた。
ルーイはまた溜息をついて、ミナミの前に椅子を置いてそれに座った。
ミナミは黙ってルーイを見ていた。
「ミナミが知る必要のないことだったし、俺がそんなこと考えているって知られたら離れる気がしていたから…」
ルーイは気まずそうにミナミを見た。
やはりルーイの言っていることが分からないミナミは首を傾げていた。
「私は、ルーイに心を開いてもらっていると思っていたから、少し悲しかっただけ。」
「開いているって…だから、俺はミナミが嫌いとかは絶対に思っていない。」
「…皆は私のためって言っていたけど、ルーイは今のままでも私のお友達だし、危険な仕事をしたいなら相談とかお話して欲しかったよ…」
ミナミはルーイを少し睨んだ。
ルーイは一瞬表情が引きつった。
ミナミはそれを察知し、顔を強張らせた。
「…あいつ等…そこまで話したのかよ…クソ…」
ルーイはぼそぼそと悪態をついていた。
おそらくミナミではなく、話していた兵士たちに対してだろうと、鈍いミナミでもわかった。
「将軍ってみんなが目指すものだというのはわかるよ…けど、それはとても危険だってわかるよ。外国に行ったり、危険な任務もやらないといけないことも多くなるし。私は、ルーイが危険な目に遭って欲しくないよ。だって、大切な友達だもん。」
「お前と並ぶためだ。」
「え?」
「俺は、ミナミと並びたいんだ。」
ルーイはミナミを真っすぐ見ていた。
「私と…今だって…」
「王族と、市民階級の兵士は全然違う。今こそ話せているけど、いずれ差が分かる。」
ルーイの真剣な顔に、ミナミは目を逸らすことも瞬きをすることもできなかった。
そしてルーイの言っていることはオリオンがいつも言っていることである。
身分の差だ。
「俺は、並んでお前を守りたい。」
「私を…」
ルーイの真剣な言葉にミナミは驚くことしかできなかった。
「だから、変に気にするなよ。今まで通りでいてくれ。」
ルーイはミナミの頭をくしゃっと撫でた。
「…なら」
「うん」
「私にも、相談してよ。」
ミナミは拗ねるように口を尖らせて言った。
ルーイはポカンとした。
「だって、私が関わるんでしょ?」
「…ははは。わかったって…」
ルーイは嬉しそうに笑った。
「私たち、友達だもん。」
ミナミは手を差し出した。
仲直りの握手をルーイに求めた。
ルーイは複雑そうな顔をしたが、直ぐにいつものように笑い、ミナミの手を取った。
「…そうだな。」
ルーイの笑顔を見て、ミナミは安心した。
仲間外れにされていたことも気にならなくなっていた。
それがどうしてだかは、わかっていなかったが、今の彼女はそれで満足だった。
安心したミナミの周りにはふわふわと淡い光の魔力が漂っていた。