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世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記  作者: 近江 由
ライラック王国のお姫様~ライラック王国編~
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幼馴染の兵士 1

 

 ミナミは城の中の兵士の詰め所に来ていた。

 今回は隠れてではなく、堂々とやってきた。


 ルーイと父親の話を聞いた後、いつもにないほど集中して勉強を終えた。

 その様子は、教師が感激するほどであった。


 後ろめたいことが無いミナミは胸を張って詰め所の扉を開いた。



「姫様!!!…あの、大丈夫ですか?」

 兵士達が心配そうにミナミを見ている。

 これは日ごろの行いのせいだろう。

 だが、今日は違う。


「お勉強終わらせてきたもの。」

 ミナミは鼻息を荒くして言った。


「「え…えええ!?姫様が!?」」

 詰め所にいた兵士たちは驚いた声を上げた。


 何もそこまで驚かなくていいとミナミは思ったが、自分の今までの行動と言動から考えて納得してしまった。そして、少し恥ずかしかった。


「姫様の見張りに付いていたルーイは一緒じゃないんですか?」

 兵士はミナミの勉強の見張りに付いていたルーイが一緒じゃないことにが気になったようだ。


「ルーイは、お父様に呼ばれて行っちゃった。」

 ミナミは少し寂しそうに言った。


 そうだ。ミナミの勉強が終わる前に、ルーイは国王に呼ばれ、別の兵士が見張りにつくことになったのだ。

 なにやら二人が急に自分の知らない所で仲良くなっている気がして、仲間外れにされた感覚が大きい。


 元々ルーイは父親である国王との面識は一般兵と変わらない。

 変わったと言えば、さきほどのミナミが真面目に勉強するきっかけとなった時の交流だけだ。


「仲間外れ…やだー」

 ミナミは口を尖らせた。


 兵士達は困った顔をした。

「…まあ、あいつは将来もっと出世して、いつか将軍までになることが夢だからな…」


「そうだな。時間が無いのにあいつ必死で勉強しているし、剣の鍛錬も頑張っている。」


「そう考えると、国王陛下と接点を持てたのは大きいんじゃないのか?」


 兵士達は口々に言った。


 どうやらルーイの話のようだが、ひとつ大事なことがある。


「なにそれ…私知らないよ。」

 ミナミが知らないことなのだ。


 確かにルーイは先ほど勉強時間が欲しいと言っていたが、彼がそこまで出世したがっているのは知らなかった。

 兵士達が言うルーイの話は、ミナミの知っていることとかけ離れていた。


 小さいころから、勉強やマナー指導などから抜け出したときに軽口を叩き合っていた。

 自分は彼を幼馴染のいい友人だと思っていた。そして、彼のことをよく知っていると思っていた。


「…私、ルーイのこと何も知らない。そんなに将軍になりたかったんだ…」

 ミナミは不貞腐れた。


 先ほどまでの清々しい気分から、仲間外れにされた感覚と加わっての落差が激しい。


「そんな決闘バカとか、力バカには見えなかったもん…」


 ミナミは拗ねるように呟いた。


 兵士達は困った顔をした。

 彼等は何か目を見合わせて溜息をついた。


「戦いたいとか、力が欲しいというよりも…将軍になると、貴族階級と同等か、それに成ることが可能だからだと思う。」


「あいつは、別に姫様を仲間外れにしていたわけじゃないし…そもそも、姫様のためというべきか…」

 兵士達は言葉を濁しながら言った。


「なんで私のためなの?だって、将軍とかになると危険な仕事が多いんでしょ?それなら城の警備の兵とか安全な場所にいた方がいいよ。今までと同じように私もお話したいし…」


「姫様をより近くで守るためですよ。」


「それなら今でも同じだよ。…やっぱりルーイわかんないよ…」

 兵士達の話を聞いてもミナミはルーイのことが分からなかった。


 兵士達は変わらず困った顔をして、お互いの目を見合わせていた。


 ミナミは椅子を出してドスンと座り、腕を組んで難しい顔をした。


 考えてもルーイのことが分かることは無い。

 やはり、本人に聞くのが一番だろうが…


「私…自分が思っているほど、ルーイと仲良くないのかな…」

 ミナミの出した結論だった。



 彼のことが分からないのだ。友人なのに他の兵士は知っているのに自分は知らないことがある。それに、さきほど接点を持った父親の国王とのほうがなにやらわかり合えているものがある空気があった。


「ルーイ…将軍になりたいって、もしかして私を利用して…」

 ミナミが言いかけた時


「それは無い!!」

 兵士達は慌てて否定した。


「だって…」


「あいつが姫様を利用することは無い!!これは断言するし…ルーイだって姫様と仲がいいと思っているし、とても大切に思っている!!」

 兵士達は顔を見合わせて言っていた。

 どうやらそれは本当のことのようだが、なら、なおさらわからない。


「…分からないよ…」

 ミナミはさらに顔を険しくした。


 兵士達が必死に弁明してもミナミはわからなかった。

 そんな風に騒いでいるとき、詰め所の扉が開かれた。


「騒がしいな…何やって…」

 入ってきたのは、話題の中心のルーイだった。


 兵士達は静まり返り、ルーイを見た。

 ルーイは何が起きているのか分からないようだ。


「ルーイ…」

 ミナミは変わらず険しい顔をした。


「…どうした?」


「ルーイはどうして将軍になりたいの?私…全然知らなかった。」


「え?」

 ミナミの言葉を聞いてルーイは表情を変えた。



「あ…俺達、見張りの仕事の報告まだだった。」


「俺、武器屋にいかないとな…」


「あ、俺も俺も…」

 詰め所にいた兵士たちは慌てて立ち上がり、ルーイの横を通りすぎて部屋の外に出て行った。


 気が付くと詰め所の中にはルーイとミナミだけになった。


「…はあ。」

 ルーイは溜息をついた。



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