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夜の闇、這い寄る恐怖1

「スズ」


「んが……?」


 落とし穴に落っこちたら大学の図書室だった、なんて言うと意味がわからないが実際その通りだから困る。明かりのついていない本棚だらけの部屋、そこで仰向けに寝転がっていたスズはむくりと起き上がった。傍にはフラッシュライトを逆手に握る少女1人、スズの顔に手を添えて簡単な診察をしている。


「お母さん…まぶしい……」


「誰がお母さんですか」


 白い服を着た白い髪の少女だ、タートルネックセーターと膝上丈のストレートスカート、髪は腰まであり、肌を含めてすべてが白い。身長146cm、とても小柄で、無表情。ただ無表情といっても冷たい印象は無く、むしろ柔らかい。今は小さめのショルダーバッグを横に置く他、右太もも(素肌)に幅広のベルトを巻き、拳銃のホルスターを取り付けている。

彼女は味方だ、問答無用で、いついかなる時でも味方以外にありえない。


「ここどこ?」


「その前にスズ、帽子は?」


 背中に手を回して上体起こしてきたアリシアことお母さん、じゃない、お母さんことアリシアは次にスズの頭へ手を乗せ狐耳に触れてきた。いつものキャスケット帽が無い、そこらに転がった訳でもなさそうだ。


「なくした……」


「ではまず着替えを」


 といって、やや遠くに置いてあったボストンバッグが引き寄せられ、そこから取り出した黒と白のモノトーンなキャスケット帽を差し出してきた。黒80%白20%くらいの柄なそれを取って、そしたら上下一式もあるのに気付く。


「え、なんで?」


「色が合わない」


「それは今いいでしょ……」


「よくありません」


「さいでっか……」


 じゃあ仕方ない、すべて受け取って部屋の隅へ、ちゃっちゃか着替えて脱いだ服を代わりに渡す。

 黒地に白抜きの文字がいくつかあるサイズ大きめのパーカーと、白の割合が気持ち多いプリーツスカートの組み合わせである、キャスケット帽と合わせてモノトーンなファッションになった。「ふむ」なんて言っている間にさっきまで着ていたショートパンツからポーチ付きベルトが取り外され、しかしこのスカートにそのまま装着はできないので、アリシアはポーチを取り外してベルトをバッグへ。次に別の短いベルトを出し、やや考え、3個のポーチのうち符の入ったポーチだけを着けてスズの左腕に巻きつけた。


「では改めて状況を説明しますが」


「うん」


 場所、大学の図書館。時間、夜。明かりを点けない理由は不明、と思ったが壁のスイッチを切り替えても反応が無かった、停電しているらしい。

 2人の他には誰もいない、図書室は何十と立ち並ぶ本棚があるばかり。耳をすませば遠くの方で物音がしており、感じとしては足音、ただかなり不規則な、よろめくような歩き方。


「スズが神隠しされている間にこの大学は安全ではなくなりました、戦闘の必要があります」


 と、服に引き続き拳銃が出てきた。

 黒色のフレームに木製のグリップ、6発シリンダーと2インチの銃身を備えるコルト社製リボルバー式拳銃である。使用弾薬は.38スペシャル弾で、本体と共にバラの予備弾も渡される。


「リボルバー苦手なんだけど(作者が)」


「弾倉とマガジンポーチが不要というのは利点です、耐えてください」


 まぁ確かに、弾倉に入った弾薬とバラの弾薬では体積に雲泥の差がある、ジャラジャラ鳴るのを許容するならポケットに入れておけばいいのだ。確かにリロード速度では劣るものの、それは十分な数の予備弾倉を携行できる者の話。戦闘が長時間に渡る時、弾倉が1本しか無い場合等、最終的にリロード速度でリボルバーがオートに勝るシチュエーションもあるっちゃある。


 でもそんな想定するんだったらライフルとかサブマシンガンの出番なのでやっぱり近〜現代戦にリボルバーの居場所は無い、うん。


 いやあのね?ぜんぶ同じに見えるのよ、つく?見分け、ほんとに?


「相手は?」


「見た方が早いでしょう。絶対に触らないでください、少しでも触れれば侵食されます」


 渡し終えた彼女も同じく、スズに渡したものより銃身の長いリボルバー拳銃を握り、手鏡や化粧品が入ってると思いきや.38スペシャルがみっちり詰まってるショルダーバッグを肩にかけた。弾切れの心配はなさそうだ、何ならボストンバッグにも予備の予備がある、箱で。


「外交団との合流を最初の目的にします、消息は不明ですが、少なくとも日依(ひより)は生きているはず」


 ボストンバッグと、スズのメッセンジャーバッグはその後に置き、図書館の出口まで移動、アリシアがドアノブを握る。


「指一本でも触らないように」


「さっき聞いた」


「近接攻撃も禁止で」


「わかったわかった」


 僅かに軋むドアを開ける、相変わらず暗い廊下に出る。


「……うわ」


 人型、いや人間……元人間の化け物が立っていた。

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