第三八話「霧島姉弟 VS SAMIA 切札」
「サイキックバリア――――!!」
握り締めた手を前方に突き出し同時に叫ぶ……
半円形のバリアーが一瞬で姉弟を包み込む……半径五メートル、純白に発光したサイキックバリアーは、真昼の太陽よりも眩しく、エネルギーを周囲に発散した……
その刹那、全四十六門の砲塔から放たれた弾丸の雨が、同時にバリアーへと降り注いだ。
……凄まじい振動……衝撃で立っているのがやっとだった……
「友哉、手を離すな! 私を信じろ!!」
亜里沙が声を張り上げて叫ぶ。
彼女の握りしめた手が、言葉が、友哉を奮い立たせた……言葉が……亜里沙の言葉が直接心に響く……
姉弟が生成したサイキックバリアーは、弾丸全てを受けきっていた。
バリアーは弾丸の着弾後、それを粉々に打ち砕き、同時にそのエネルギーを吸収して行ったのだ……敵のエネルギーを吸収し、瞬時に自分のエネルギーへと変換する――結果、バリアーは弾丸を受ける毎に、どこまでも巨大に成長し膨らんで行った……
降り続ぐ弾丸の雨が、余すことなく塵となり、エネルギーとしてバリアーへと吸収されて行く……それはまるで、近付く者を何人たりとも容赦なく食らい尽くす、悪魔の如き凶暴なブラックホールの様だった。
クリラはただ唖然として、その驚愕の光景を見つめていた。
『タ、タマヲウテバ、ソレハヤツラノエネルギーニ、カワル????……』
『コイツラハ、アクマ、ダ……』
『ドウスルノダ……コンナバケモノ……キ、キイテナイゾ……コンナ、イナカノ、ヘンキョウノホシデ……』
『バカナ、バカナ、バカナ、バカナ、バ……』
四体のクリラはその驚愕の事態に対応することが出来なかった……
姉弟の生成したサイキックバリアーは、半径三〇メートル大へと膨張していた。
巨大な光の玉と化したバリアーは、今や暴発寸前のエネルギーの炉へと変貌を遂げていたのである……
姉弟が一糸乱れず、同時に叫ぶ。
「バリアー反転!!」
「アンチサイキックバリアー起動――――――」
「エネルギー全解放――――――――――――」
姉弟はバリアーの中で凄まじいエネルギーに耐えていた――蓄積したPSEを早く外に解放しなければ、爆発するのは自分達の方だ……
『ヤ、ヤメロ…………』
クリラの最後の言葉は、姉弟の耳に届く筈もなかった……
「Tブレイク――――――――――――――――――――――――――――!!」
バリアーから灼熱のエネルギーが解放された――
衝撃波が世界を貫いていく――
雷鳴の如き轟音が響いた……
そして……
――四体のクリラは一瞬で蒸発した。
叫ぶ暇さえ無かった……結果、四十二両の戦車、四機のアパッチも同様に一瞬で消滅した。
エネルギーを外向きに反転させたアンチサイキックバリアーは、半径五〇〇メートルの生けとし生けるものを、一瞬でこの世界から消し去ったのだ……
「化け物だ!」
厚木軍事基地の長官重田が、吐き捨てる様に言った……顔は恐怖と怒りで引き攣っていた。
Kはそれを見てニヤリと微笑んだだけで、何も口には出さなかった……
――友哉はバリアーの中心で倒れていた……Tブレイクによるエネルギーの放出が、彼の全体力を奪っていたのだ……その時友哉のPSEは、ほぼ……ゼロカウントだった。
亜里沙が友哉を力強く抱きかかえる……優しい手で弟の頭を何度も撫でる……その表情はいつになく慈愛に満ちたものだった。
……霧島亜里沙……孤高の戦士……亜里沙の心に近づいた時に友哉が見たものは、彼女の本質だったに違いない……一方亜里沙が友哉の心に近づいた時、彼女は彼の心の中に何を見たのだろうか?
それは口外してはいけない、姉弟だけの秘密にしておいた方が良さそうだった。
友哉が考えていることは只一つ……只一つだけだ。
亜里沙を愛している……恥ずべきことなど何も無い。




