5話 敵が来た
僕たちは村に帰ってきた。
村と言っても同族が20人くらい集まって過ごしてるだけの広場だけどね。
木を立てかけただけの家や大きな葉を屋根にしてるだけの家、色んな家があるんだよ。
僕たちの家族は広場の隅に生えてる大きめな木の下。そこに、みんな座ってるんだ。雨なんか降ってきたらみんな家の周りに集まるんだけど僕はなかなか入れてもらえない。
家族?でさえ僕を受け入れてくれないんだ、他の同族が僕によくしてくれるわけがない。
こないだも、大人も子供も寄ってたかって石をぶつけてきた。頭を抱えてうずくまって耐えてたら耳の横に頭と同じくらいの大きさの石が落ちてきたんだ。みんなは「惜しい!」みたいな感じでギャーギャー言いながらはしゃいでたけど、正直僕が死のうが構わないんだと思う。
みんなから離れたいって思うけど、僕みたいな弱虫が群れから離れて生きていけるわけがないことはわかるんだ。だから、みんなの機嫌を損ねないように、視界に入らないように生きてくしかないんだ。
運が良ければおこぼれで食事もできるから、なんとかなるよ。
そういえば、さっき家族?が食べてた生き物、初めて見たけど美味しそうだったな。
母さん?はそいつの着てた布を身に付けてご機嫌になってるし、兄妹は残った骨でチャンバラみたいに遊んでる。
ん?
村の向こう側がなんだか騒がしいな。
みんなすごく興奮してる。
いや、怯えてる?
何が起きてるんだろう。
ドチャ
?
なんか降ってきた。
これは、、、同族の、手?
手首から指までの部分がなんで空から………
あ、今度は足が降ってきた。
次に頭、耳、また手だ。また足だ。
なんだろう?
どれも引き千切られたりスパッと切り取られたような断面ばかりだ。
あ。
僕の家族も騒ぎの方へ行くんだね。
父さん?も母さん?も兄妹?もみんな木や骨や石の武器を持って向かって行く。
敵意、、、殺意、、、
騒ぎの中心から言葉で表せれない感情を感じる。
ああ、そうか。敵が現れたんだ!
どうしよう、僕も戦わなきゃ。
なにか、なにかないかな?
あっ、木の枝がある。
よし、これで僕も。。。
あ。父さん?の頭が降ってきた。
あ。兄妹?の手足が飛び散ってる。
あ。母さん?
なんだろうあの生き物。
母さん?の手や足を引き千切ってお母さん?の身に付けた布を引き裂いてる。
ああ。そんなにお母さん?の体から中身を引きずり出さないで、死んじゃうよ!
ダメだ。逃げなきゃ。
みんな殺されちゃった。
僕もきっと同じように殺される。
ダメだ。怖いよ。
手が、足が震えて力が入らない。
早く逃げなきゃいけないのに、なんで!?
あれ?泣いてるの??
あの生き物、泣いてる。
何かを、叫んでる。
あの生き物、なんか見たことある。。。
燃えるような赤い髪。
あ、そうか。
どうりで見たことがあると思ったら。
お母さん?の巻いた布を着てた生き物やその子供と、同じ色の髪なんだ。