3話 弱肉強食
はぁ、はぁ、、、
鹿の骨に夢中になってたらみんなを見失っちゃった。どこに行ったんだろう?
「……………ギャー……」
あっ、あっちの方から声が聞こえた。
急げ!急げ!!みんなとはぐれちゃう。
あの大岩の向こうから声がする。
頑張って登らなきゃ。
、、、よいしょ。
、、、よいしょ。
ズルッ
痛っ!
あーあ、膝を擦りむいちゃった。
血が出てきちゃったよ、ぐすん。
、、、よいしょ。
、、、よいしょ。
、、、ついた!
岩のてっぺんに登ったぞ!
これでみんなが見えるや!
、、、あれ?
なんでみんな狩りしてるの?
さっき鹿を食べたばかりなのに。
「き、きゃー!!誰かたすけてーっ!」
なんだろあの生き物?
何か喋ってる??
ツルツルした肌、長い髪の毛。体には僕らみたいな腰布だけじゃなくて全身覆う様な布を巻いてるよ。
森で見る動物達やモンスターとは違う。
今まで見たことないや。
「あ、あ、、、ああ。。。お願いこの子だけは、、、!!!」
あ、この生き物メスだ。
なんとなく、わかる。
理由はわからないけど、わかるんだ。
あっ。僕のお父さん?おじさん?がメスから子供を取り上げた。
あのメス、泣いてる。何か叫んでる。
取り上げた子供をお母さん?に放り投げた。。。あっ!食べちゃった。
あのメス、泣いてる。さっきより叫んでる。凄い悲しい声で。何を言ってるのかはわからないけど、悲しいって、伝わってくる。
そうだよね。子供が食べられたら、悲しいよね。僕も、悲しい。
あっ。今度はおじさんとお兄さん?弟?がメスを食べる気だ。
メスが体を引きずって逃げようとしてる。でも、足を怪我してるみたいだね。
きっと、おじさんがやったんだろうな。僕の兄弟に狩りの時は足を狙えって教えてた気がする。
あ、メスが捕まっちゃった。
食べられちゃう、、、あれ?
すぐに食べないの?
ああ、繁殖か。お母さん以外でも子供は埋めるんだったね。
僕の本当のお母さんは、産まれた時にはここにいるみんなに食べられてたからどんな人かわからないや。
ただ、とても悲しかったことは覚えてる。そうだよね。お母さんが食べられたら子供は悲しい。子供が食べられたらお母さんは悲しい。単純なことだよね。
この世は、強い者が弱い者を食べるから。
あ、種付けからしばらく経ったから苗床のお腹が動いたよ。
種付けした苗床には触ったらいけないんだ。
誰から教わったわけじゃないけどわかるんだ。理由はわからないけど、体でそう感じるんだ。
あ、産まれる。
あ、みんなメスを食べ始めた。
せめて産まれるまで待ってあげてよ。
あ、産まれた。
「ゲギャッギャー」
やぁ、こんにちは兄弟。
君はみんなと肌の色が一緒だね。
どうか、僕をいじめないでね。