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ワールド・ブレイク  作者: ケン
一学期
8/59

第七話

 時間は流れてお昼休み、いつものようにイリナと一緒に食べていたんだが今日はそこに新たなメンバーとしてミウォル先輩が入ってきた。

 相変わらず俺のあれを見続けているらしいけどとりあえず放っておくことにする。


「にしても触れるもの全てを破壊する魔法なんてすごいね」

「そうですか?」

「凄いよ。だって服に触れたら一瞬ですっぽんぽんじゃん!」


 いったいこの人は魔法をどのベクトルに活用しようとしてるんだろうか……将来、魔法を使って犯罪染みたことをしなきゃいいけど。特に覗き。

 でも考えてみればそうだよな。世の男性どもがうらやましがるかもしれないような使い方が出来る魔法ってことも考えてなかったな。


「でももうすぐお披露目会だね~。イリナちゃんはどうするの?」

「私は適当に諦めますわ。超常魔法は弱いですもの」

「だよね~。私も透視魔法だからすぐ辞めるけどユージ君は?」

「とりあえず俺は行けるところまでは」

「お披露目会ってほとんど属性魔法の人の為だから嫌いなんだよね~」


 超常魔法は攻撃に転用するのはなかなか難しい魔法が多い中、強化魔法や属性魔法はむしろ相手を傷つけることが出来る魔法が多い。

 炎だったら火傷を負わせられるし、水だったとしても高圧水流を使えば傷つけられるし、雷なら感電させられる。

 透視魔法なんかどうやって相手を倒すんだって話だ……まあ、ミウォル先輩だったら世の男子どものあれの大きさを見て精神的ダメージを公衆の面前というエンハンスをかけてぶつけるかもな。

 それにしてもこの世界の食事は薄味なんだな。健康的でいいけどやっぱしょうゆみたいな塩っけのある物が食べたいよな。


「でも今年の注目はリアン・シャルマンだろうね~。噂じゃ騎士団の視察団が来るっていう話だよ」

「でも俺達1年ですから気にしなくても良いでしょ」

「あれ? 知らないの? お披露目会は学年混同だよ」


 ……な、なんだって? つまり初戦からあの二年生エースのリアン・シャルマンとぶつかる可能性も大いにあるってことか……できればそれだけはやめてほしいな。

 チラッとあいつの方を見てみるとやっぱり昨日と同じように離れたところで護衛の奴らに囲まれて食事をしている。

 しかもよく見たら俺達とメニューが違う。

 溺愛する親を持つのもなかなか大変なんだな。


「明日からお披露目会か~。授業が休みになるのはいいけど超常科からしたら暇な期間なんだよね。することなんて試合観戦か自習しかないし」


 とりあえず俺としては行けるところまではいって負けたらすぐに自習に移るか。まだこっちの言語も完璧にマスターしたわけじゃないし、実技の先生にレポートも提出しなきゃいけないから言語習得は急を要する最優先事項。

 かといってこういった行事を疎かにするのいかん。


「そろそろ教室に戻りますか」

「そうですわね。そこの変態も戻りませんこと?」

「一応、先輩なのに~」


 ぶつくさと文句を言いながらミウォル先輩が食器が乗った木の板を持って席から立ち、振り返ったその時、後ろにいた男子生徒とぶつかり、床に皿が落ちる。

 割れはしなかったみたいだけどどうやら向こうさんの堪忍袋の緒が割れる、もとい破裂してしまったらしく、鬼のような表情で食器を拾っている先輩を睨み付ける。


「ごめんなさい、大丈夫?」

「気をつけろよ! こっちは疲れてんだからさ!」


 相当、何かに対してイライラしているのかその男子生徒は皿を拾っているミウォル先輩に対して怒鳴り声を浴びせ、先輩が座っていた椅子に座る。

 この時期になるとイライラするのかしらね? 見たところ超常クラスの生徒じゃないみたいだし、背格好を見る限り、属性クラスだと思うけど。

 わざわざイライラを後輩にぶつけなくてもいいよな。


「大丈夫っすか先輩?」

「あ、うん。大丈夫だよ。この時期は属性科も強化科もピリピリしてるからさ」

 やっぱりそうか。頭いい奴がテスト前になるとピリピリしだす感覚か。

「悪いけど飯取ってきてくれ」

「はい? 何故に俺?」

「さっきまで実技授業で疲れててもう立ちたくないんだよ。お前新入生だろ? 新入生は先輩の顔を立てて言うこと聞いとけ」

 ……俺はこんな感じに先輩風吹かして後輩に雑用を言い渡す奴らが大っきらいなんだよ。

「疲れてるか知りませんけどそれは自分ですべきじゃないですかね」

「は?」

「怪我してるならまだしも、疲れてるだけでなんで後輩にそんなこと頼むんですか? 飯くらい自分で取ってきてください」

「お前、新入生のくせに調子乗りすぎじゃね?」


 そいつは立ち上がると俺の胸倉をつかんでどすを利かせた声音でそう言ってくるがこの程度の脅しなんて祖父ちゃんが本気でぶちぎれた時と比べたら屁でもない。

 実際に祖父ちゃんがぶちぎれた時は家族総出で止めに入るくらいだ。

 そんな光景を今までに何回か見てきている俺からすればこの程度の先輩の脅しなんてものこれを他人に送らないと不幸になりますとか言うチェーンメールとかインターネット全盛期のこの時代にメールで訴状が届いたりするくらいに滑稽なことだ。


「乗ってませんよ。先輩に質問をしただけですよ」

「そうか。じゃあ答えてやる。後輩は先輩の言う事を聞け」

「じゃあこっちからも一つ……何お偉いさんぶってるの? バカなの?」


 直後、そいつの額に青筋浮かぶとともに俺に向かって拳が放たれてくる。

 俺の頬にその拳が当たる寸前、何かが砕けたような音が聞こえるとともに頬に小さな衝撃が響くがいたくもなんともなく、むしろ問題があったのは向こうの方だった。

 全力で殴りつけたのか、それとも魔法で強化したのかは知らないけどそいつは驚いた表情を浮かべながら自分の拳を何度も見る。

 多分、強化した魔法だけが破壊されたんだろ。もしも今の一撃を手で受け止めていたら魔法どころかこいつの拳まで破壊してたと思う。


「こらこら! 食事処でけんか騒ぎ起こしてんじゃないよ!」

「すみません。じゃ、行こうぜ」

 騒ぎを聞きつけた食事係の人がすっ飛んできたことで先輩も俺の胸倉をつかんでいた手を離す。

 それ以上は俺も煽らず、イリナとミウォル先輩と共に食堂を出た。

「ごめんね、私のせいで」

「大丈夫っすよ。あんな先輩風吹かしただけの奴なんて怖くも無いですから」

「貴方意外と冷静なのですね。てっきり殴りかかるかと思いましたわ」

「これでも俺は喧嘩はあまりしないんだよ」

 というよりも年の離れた妹がいたからその世話をしていて喧嘩する暇なんかなかったって言った方が正しいんだけどな。

「でもこれであの先輩に目をつけられましたわね」

「明日のお披露目会で何かあるかも」

「大丈夫っすよ。もしもそうなったら俺の魔法でぶっ飛ばします」


 ミウォル先輩の言う通り、あいつは明日のお披露目会で俺に何かのアクションをしてくる可能性が大きいと思うけどあいつがアクションを取ってきたら俺もそれ相応の対応をするだけ。

 明日から始まるお披露目会……楽しみになってきたな。

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