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ワールド・ブレイク  作者: ケン
二学期
58/59

第五十七話

 破壊と創造。


 正反対の物がぶつかり合えばその効果は相殺される。


 人間の体内にもう一つの臓器を作ったとしてもそれは一瞬で破壊される


 つまり、破壊と創造の戦いではなくこれは




 人間の戦いである。





 ―――――☆――――――

 拳がぶつかり合い、互いのオーラが混ざり合うことなく土地を破壊していくがすぐさま元通りに創造され、何も無かったかのような状態に戻る。

 拳を相手の顎に突き刺して骨を木っ端みじんに破壊したとしても一瞬で創造され、逆に相手の拳が俺の腹に入り、体内に不必要なものが創造されても一瞬で破壊される。


「はぁぁ!」

「だぁぁぁぁ!」


 互いの蹴りがぶつかり合い、相手の骨が一瞬砕けたような音が響くがすぐさま創造され、俺の足からも不要な骨が皮膚を突き破るようにして伸びかけるが一瞬にして破壊され、元に戻る。

 後ろへと飛びのき、地面を殴りつけた瞬間、奴の四方に大きな黒い魔法陣が出現し、そこから全てを破壊する黒いオーラの柱が伸び、奴に向かって落ちていくが奴の頭上に大きな魔法陣が出現し、そこから太くて白いオーラで出来た柱が放たれ、破壊のオーラとぶつかり合って両者ともに消え去る。

 地面をけり、その場から駆け出すと同時に破壊のオーラを相手に向かって球体として投げつけるが創造の槍によって貫かれ、消え去り、互いの拳が互いの顔に突き刺さり、脳を揺らす。

 数歩後ろへ後ずさるが気合で足を前に出すと同時に相手に頭突きをかまそうとした直後、目の前に白い壁が創造される。

 俺の頭突きが壁に直撃した瞬間、一瞬にして破壊され、そのまま相手の鼻頭に直撃する。


「ぐっ! だぁぁ!」

「ぐっぅ!」


 地面から伸びるように創造の槍が放たれ、俺の腹部に突き刺さり、破壊のオーラとぶつかり合って消滅するが直撃した際の衝撃で後ろへともっていかれる。

 背中から地面に叩き付けられ、一気に肺から空気が抜けるがどうにかして息を吸い、立ち上がると同時に腕を横薙ぎに振るい、相手に向けて黒い斬撃を放つが相手の前方に壁が出現し、両者ともに消え去る。

 能力ではあいつを倒せない……倒せるのは自分の身体能力だけ!

 背中から一気に黒い破壊のオーラを噴き出し、その推進力を使い、一気に相手に近づいていく。

 途中の地面から突き出てくるように生えてくる大きな剣を拳で叩き割っていき、リムに向かって全力で拳を突きだし、相手の腹に直撃させる。


「ぶっ!」


 相手の口から血反吐が吐かれるが止まることなく相手の腹を、顔を殴りつけて攻撃を加えていく。

「えあぁぁ!」

「ごぁ!」


 相手の顎に拳を叩きつけた瞬間、拳に集めた破壊のオーラを破裂させ、その勢いで相手を大きく吹き飛ばす。

 直後、パラパラと拳から黒い粉のような物が落ちているのに気付き、慌てて拳を見て見るとまるでかさぶたがはがれたように拳が見えていた。

 今回で二回目のワールド・ブレイクを制御、かつ長時間持たせること自体無理な話か!

 直後、奴が吹き飛んだ場所から白くて太い光り輝く柱が伸びたかと思えば奴が一気に空に向かって急上昇し、点になるほどの高さにまで上がる。

 何をするつもりだ。


『残念だよ、ビブリア王国。僕の理想に賛同してくれると思ったのに……君たちは僕が新しく作り替える世界には必要ない。ここで消えてもらう!』


 魔法で拡大された声の直後、空に白い創造のオーラが大量に集まり、巨大な球体と形を変えた物が浮かび上がる。

 その中では未知の物がひたすら創られているのか時折、球体を突き破ってみたことも無い化け物が何匹も顔を表す。

 創造のオーラで固めた物を喰らえば確実に俺以外の皆は不必要なものを創造され、その不必要なものによって殺される。

 そんなことはさせない! リム、てめえの理想を否定する気はねえけどてめえの理想を叶えようとする方法だけは否定する! そんなクソみたいな方法は俺が破壊する! 影も形も残らない様に!


『消えろ!』


 直後、巨大な球体が地上目がけて放たれてくる。

 それと同時に飛び上がり、背中から噴き出す破壊のオーラの推進力で空を突き抜けていき、迫りくる球体に突っ込んでいく。


『あの中に入ればまだ完成していない今の君じゃ死ぬよ』


 頭の中であの黒いワンピースの少女の声が響く。

 あぁ、そうかもな……でもそんなの関係ねえ! 俺はこいつを倒して皆を護る! 理想に反するだけで殺されるなんてことはあっちゃいけないんだ!

 拳に破壊のオーラを集めていくとともに白い球体から未知の化け物が俺に向かって首を伸ばしてくるが背中から勝手に伸びた巨大な手の形を模した破壊のオーラによって一撃で粉砕される。


「でぃやぁぁぁぁぁぁ!」


 巨大な白い球体と俺の拳に出来上がった破壊のオーラがぶつかり合った瞬間、周囲に凄まじい衝撃が放たれる。

 未知の球体から放たれてくる見たことも無い魔法が破壊のオーラで破壊されていくが俺が破壊する速度よりも相手が未知のものを作り出す速度の方が遥かに早いのか徐々に押されてくる。

 相手は創造の力の塊! そりゃそっちの方が凄いわな! でもこっちだって負けてられないんだよ! 伊達にこのちからで戦い抜いてきていないんだ!


「うおぉぉぉぉぉぉ!」


 獣のように叫んだ瞬間、両手を除く、全身を包み込んでいた全ての破壊のオーラが一気に剥がれ落ちるとともに抑えている創造の力の塊を覆い隠していく。

 もう一回力を貸してください先輩!

 帝国へ行く際にミウォル先輩から貰ったあまりの用紙に刻まれた魔法を発動させ、透視魔法を発動して創造の力の塊の中を透視すると今までに見たことが無い姿や形をしている物が溢れんばかりに押し詰められており、中には人間と見間違えるほどの存在まであった。

 込み上げてくる吐き気を我慢しながら球体の中を透視し続けていると球体のちょうど中心部分に何色にも染まっていない塊のような物が見えた。

 あれだ!

 右腕を後ろへと引き、絞り出すようにして破壊のオーラを腕から放出して一本の剣の刀身を作り出し、そして一気に球体に突き刺す!


「行けぇぇぇぇぇぇ!」


 突き刺さった刀身は中に敷き詰められているかのように存在している未知の物を次々と破壊しながら中心へと向かっていく。


「無駄だ! 君なんかじゃこれは破壊できない! 僕は理想のために戦っている! 理由も無く戦っている君とは違うんだ!」

「ざっけんな!」

「っっ!?」

「俺だって闘う理由はある! 俺の大切な物を破壊しようとする奴らをこの力で破壊して守りたいんだ! だから俺は闘う! この世界にやってきて出来た友を護るために戦うんだ! 自分の理想を押し付けようとするてめえなんかに負けてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 伸び続けた刀身が球体の中心部分に存在している核ともいえる部分を貫いた瞬間、白い球体無数の黒いヒビが走っていく。


「えあぁぁぁぁぁぁ!」

「っっ!」


 無理やり腕を上へと上げた瞬間、白い球体が真っ二つに破壊され、大きさが半分になった球体を包み込んでいた破壊のオーラが完全に飲み込み、一瞬にして破壊する。

 だが勢いが足らないのかもう少しというところで俺の体が重力に従って地上に向かって落ちていく。


「やっぱり最後は創造が勝つ! 僕は滞空できる魔法を作り出した故に落ちない!」

「まだだ!」


 そう叫んだ瞬間、球体を包み込み、破壊し終わった全ての破壊のオーラが俺の後方に集まっていくとともに巨大な球体を成していく。

 直後、一気に破壊のオーラが破裂し、その衝撃で再び俺を押し上げる勢いが発生し、奴に向かって俺の体が飛んでいく!

 もう既に奴のワールド・クリエイトは解除されているし、俺のワールド・ブレイクも再発動している時間は無い! だからこの拳で全てを破壊する! 凶精霊を破壊した時のようにワールド・クリエイトという力だけを奴の中で破壊する!


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ごぁっはぁ!」


 俺の拳が奴の腹部に突き刺さった瞬間、奴の背中から白い塊が弾きだされ、そしてガラスが砕け散るような音を発しながら消滅するように破壊された。


「そん……な……僕の……魔法がっ!」

「リム。世界を変えるのに魔法なんていらないだろ」

「必要なんだ! 僕には……僕には魔法が!」

「魔法が無くなって世界は変わるさ……」

 徐々に落下していく速度が上がっていく。

「世界を変える前にまずは自分が変わる。自分が変わったら今度はそれを見た人が変わる。それが続いていって世界が変わるんだ……世界なんてドデカいもの変えようと思ったら何十年とかかるぞ……一気に世界を変えるんじゃなくてさ……少しずつ変えようぜ。お前の意見を受け入れる奴だっていたんだ。きっとおまえのことを受け入れてくれる人もいる……この世界に絶望するには少し早すぎるぜ」


 下を見て見ると俺を受け止めようとイリナやアンナ、グラン先生、先輩たち、そして理事長が集まり、リムを受け止めようとフレイヤが向ってくる。


「人間は魔法なんかなくても変われるんだよ」


 直後、俺は全員に受け止められ、リムは一足先に空中でフレイヤに受け止められ、そのまま地面に落ちるがすぐに起き上がる。


「……殺さなくていいのかい?」

「殺すも何もお前、まだなんもやらかしてねえだろ……フレイヤは別として」

「あらあら……アンナちゃんは私を殺すつもりなのかな?」

「言ったでしょ。あんたの罪はこの国の法律で裁く。ここで捕まりなさい」


 フレイヤは一瞬だけ悔しそうな顔をする。

 今まで下に見ていた妹に圧倒的な差をつけられたんだ、そりゃそうなる。

 その時、フレイヤが発動したのか二人の足元に魔法陣が展開され、そこから放たれる輝きによって二人が覆い尽くされていく。


「悪いけど一生、捕まる気はないわ……ま、安心しなさい。これ以上のことはもう何もしないわ」

「ふざけないで」


 アンナが火球を放った直後、転移が完了し、二人はどこかへと消え去った。

 こうして破壊と創造、二つの戦いは幕を閉じた。

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