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ワールド・ブレイク  作者: ケン
二学期
32/59

第三十一話

 夏休みという長い長期休暇が終了し、サバティエル魔法学園は二学期に入る日である今日を迎え、コロシアムに全員が集合し、始業式が行われている。

 昨日、学園長と久しぶりに話したけどアンナの居場所が分かり次第、俺とイリナを彼女がいる場所へと派遣してくれるらしい。

 でも一度、引き留めに失敗している以上、次のチャンスが最後だと言われた。

 もしも次のチャンスで彼女を連れ戻すことに失敗した場合は騎士隊に報告し、彼女の全ての事を騎士隊に一任すると言われた。

 つまり次の機会が最初にして最後のチャンスという状況にも似ているということ。


「随分と我が家に長居していましたわね」

「……お前ってあれだよな」

「なんですの?」

「アリナさんにそっくりだわ」

「アリナ姉さまと私がそっくり? まさか」


 嫌味っぽく言う所もそうだけど何より喋り方から考え方まで本当によくアリナさんに似ているし、時々優しくなるのはエリナさんにそっくりだ。

 でももしかしたらイリナもブチギレタらエリナさんみたいに性格が百八十度回転してすさまじいことになるんだろうか……それはなんかやだな。


「まぁ、お父様も喜んでおられましたから良いですが」

「へぇ、なんで?」

「昔から異性の友達はおろか同性の友人すらいませんでしたから」


 ……これって地味に俺を友人って認めてくれたってことだよな? うんうんそうだよな! イリナ! 俺は嬉しすぎて涙が出かかっているぞ! あれだけ最初は冷たくされていた関係なのに今じゃ友達と認めてくれる関係にまで発展したなんてもう俺最高!


「では続いてはもうじき行われる四王会議について説明する」


 四王会議ってたしかうちの国と同盟関係にあるエウリオス、ヴィバイン、そしてバーン帝国の国家元首で行われる会議だったはずだ。

 確か今回の議題は最近、バーン帝国の軍備増強の動きが活発化してきているからそれについての質問が飛び交うだろうって予測されているってイリナから聞いたな。


「諸君も知っての通り、直に四王会議が始まる。そこでは優秀な学園生を騎士隊とともに護衛にあたらせているのだが今回、我々教職員が推薦したのは全部で二十名。その二十名には学園にて戦ってもらい、二人を選出し、王都へと行ってもらう


 学園長のその一言に周囲の奴らが一様にざわめきだす。

 たった二人か……まあ、騎士隊だって外部の人間を国家元首の警備に入れたくはないよな……となると属性クラスのエースとか言う先輩が選ばれるだろうな。

 学生を護衛に入れるっていう事は騎士隊も人材不足なんだろうか。


「推薦者は担任より指示があるのでその指示に従うように。では新学期も頑張りたまえ」








 ―――――☆―――――

 新学期の学園長の挨拶も終了し、教室へと帰ってきた俺達だったが教室のえらい変わり様に驚きのあまり何も言葉を発せなかった。

 ……いったい誰の誕生日なんだ? 今日は。

 そんなことを思わせるほど教室はパーティー会場風に内装が変えられており、こっちの言語でおめでとうと大きく黒板に書かれている。


「やぁ、帰ってきたか。二人とも」

「先生、これはなんすか」

「ま、座りたまえ」

 そう言われ、周囲の変わり様に驚きながらもとりあえず椅子に座る。

「んっふん……では発表しよう。サバティエル魔法学園設立史上、初めてのことだよ。超常クラス、しかも我がクラスから推薦者が出た」

「へ~」

「随分と気の抜けた返事ですわね、推薦者さん」

「へ? 俺? まさか。イリナの魔法の方が警備にで役に立つだろ」

「君だよ。トコヨユウジ君」


 …………え? マジで俺なの? 異世界転移者の俺が異世界の国家元首を護衛する任務に就くなんてそれどんな事件よ……いや、え? マジで?

 ジーッと先生の目を見続けるが逸らすことも色が変わることもない様子が避けに俺にそれが真実であるという事を訴えかけてくる。


「毎年、推薦者には女王陛下枠というものがあってね。まぁ、その枠はあってないようなものなんだが今回初めて我が学園からその枠で推薦者が出たのだよ」

「え? 俺女王陛下から推薦されたんですか?」

「そうだ……はぁ。君が選ばれたせいで私が忙しくなった。慰謝料払え」


 なんでだよ! そこは教師として自分が担任しているクラスから女王陛下枠が出たんだから素直に喜んで褒めちぎれよ。

 この人マジで働かずに金を稼ぎたいんだな……でも俺が女王陛下枠での推薦者か……なんだか場違いな気もするけど推薦された以上は頑張ってみるか。

 それにこの夏休みの一か月間、ひたすらエルスタイン姉妹に鍛え上げられた力を試すいい機会でもあるし、全力で行ってみるか。


「でもまあ、推薦されただけだし、王都に行く者でまた闘技大会を開くがな」

「それは要するに俺に落ちろっていうんですか?」

「いやいや。君には頑張ってもらいたいよ。なんせ我がクラスの星なのだから……まあ、周囲は三年生の主席だったり、エースだったりと凄いことになってるがね」


 そう言えば属性クラスは人数が多いから俺がいた世界みたいにクラスで分けられてるんだったな。

 となるとクラスごとにエースが居たり、そのクラスの主席の成績を誇っている奴らがいる訳でそいつらが全員推薦されている感じか。

 まあ、属性魔法が一番戦いに転用しやすいし、超常魔法が一番戦いに転用しにくいから属性魔法の奴らが多く選ばれるのは致し方ないことか。


「それにしても君、夏休みの間随分クエストを受けたんだね」

「ま、まあ」


 あの地獄の仲介人によってな。おかげで表彰されるかもって思うくらいにクエスト達成率を叩きだした気がするわ。


「内容が簡単なものであったとしても上級は上級だ。それを単独でこなす生徒、しかも一年生とくれば噂になるのも仕方がない。今職員室では君が噂になってるよ。一年生に凄い奴がいるってね」

「ど、どうも」


 あの地獄の仲介人のお蔭だけどな。いったい何回死ぬかもしれないと思ったことだか……しかも約束通りに全部討伐クエストしか受けさせられなかったし。

 あの人マジで鬼で悪魔でドSだわ。


「まぁ、とりあえず君では物足りないかもしれないが頑張りたまえ」

「さっきは落ちるかもしれないって言っていたのにこの人百八十度も評価を転換したぞ」

「まぁ、先生の言う通り貴方には物足りないかもしれませんわね」

「なんでだよ。仮にも相手はクラスのエースだぜ?」

「たかがエースですわ。エルスタイン姉妹は二人とも騎士隊の推薦まで貰った強者中の強者。そんな二人にしごかれたんですから貴方はエースどころか学園代表になってもおかしくないでしょう。多分」


 最後に多分ってつけるあたり、こいつもアリナさんそっくりだな。

 あの人も人を真正面から褒めちぎることは無かったしな……流石は姉妹。似てるぜ。


「相手がエースだろうが主席だろうがやりますよ俺は!」

「期待せずに待ってますわ」

「そこは期待しろよ!」

「休みたいから負けろ」

「このくそ教師! 少しは応援しろ!」

 ……俺大丈夫かな?

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