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ワールド・ブレイク  作者: ケン
一学期
2/59

第一話 目覚め

「―――ん」

 眩い光が差し込んでいるのを感じ、ゆっくりと目を開けていくとともに風によって葉が擦れ合う音が聞こえてくる。

 完全に目を開けた時、上に葉っぱのカーテンがかかっているのが見え、ゆっくりと起き上って周囲を見渡してみると左右に大きな木々が生えており、慌てて自分の居場所を確認してみると木々の道のど真ん中に俺はいた。

 起き上がり、もう一度辺りを見渡してみるがそこは祖父ちゃんの家の物置ではないことだけがハッキリと理解できた。


「…………ここはいったいどこだ」


 木々の間を通り抜けてみると眼前にまるでお城のような建物がそびえ立っており、その建物の周囲には何もない草原が広がっているだけで見慣れている高層ビルや車などは一切ない。

 ど、どこなんだここは……そう言えばあの少女二人が異世界転移者とか言ってたような……いやいや。異世界とか有り得ないって……でもこんな景色、向こうじゃみたことないし、どちらかというとあの建物、西洋のお城に似てるし……あ、そうか。ここは異世界じゃなくてヨーロッパだ! そうだ、俺はヨーロッパ旅行に来たんであって別に変なことに巻き込まれたり、遭遇しているわけじゃ……なんてことないよな。

 日本のど真ん中にいた俺が何で一瞬でヨーロッパに来れるんだって話だ……要するにここはヨーロッパとかそんな次元じゃない場所。


「さて、どうするべきか。このワクワクを押さえつけて誰かが通るのを待つか、それともワクワクにしたがってあのお城みたいな場所に侵入して冒険するか……困る」


 例えるならばハッピーセットで俺の好きな特撮ヒーローの限定カードがついているのを人目も憚らずに買うか、それとも小学生の妹に頼んで買ってきてもらうかで迷っている時の俺みたいだな。

 あの時はハッピーセットの値段の三倍以上もの金額が財布から飛んだわけだが。


「ねえ」

「っっっ! け、決して俺は怪しいものではございません!」

「何言ってるの?」


 後ろから声をかけられ、慌てて振り返るとそこには赤い髪をそのまま垂れ流しにしている俺と同い年くらいの女子が立っていた。

 可愛い……赤い髪が似合う子ってなかなかいないからな。


「ねえ、あなたここで何してるの? 学園の生徒じゃなさそうだし」

「え、えっと……迷ったと言いますか」

「迷った? 学園の生徒じゃないのに学園所有の山で?」


 明らかに女の子の目は怪しいものを見るような目をしており、ジーッと俺の目を見ては離そうとせず、ただひたすら見てくる。

 こんなところで怪しい奴として捕まってろうごく息なんて絶対に嫌だぞ。


「ま、いいわ」

「そ、そうですか」

「とりあえず」


 ――――カシャン


「え?」

 手首の辺りに冷たい感覚がした直後、何かを砕いたような音が辺りに響き、慌てて手首の辺りを見てみると光り輝いている何かが一瞬だけ見えたけどそれも消えてしまった。

 不思議に思いながらも顔を上げてみるとさっきの表情とは対照的に驚きのあまり開いた口が塞がらない女の子の顔があった。


「……な、なんで拘束魔法が勝手に壊れたの? あ、あり得ない」

「え、えっと……」

「とりあえず、学園長のところまで行くわよ」


 そう言うとともに俺たちの足元が一瞬だけ輝くがまたもやガラスが砕けるような音が聞こえ、もう一度女の子の顔を見てみるとさっきと全く同じ顔をしていた。

 足元を見てみても何かが壊れたような形跡は見当たらなかった。

「殺す」

「何故に?」





 ―――☆―――

 結局、女の子についてこないと殺すという脅迫をされ、渋々彼女の後についていくことにした。

 女の子の案内のもとお城のような建物の中へ入り、そのまま階段で最上階に到着した。

 どうやら王様が住んでいるようなお城ではなく今いる場所は学校らしい。

 女の子の後に学園長室に入ると一番最初に視界に入ったのは大きなソファらしき毛むくじゃらの物に寝転がって寝ている金髪の女性だった。

 ソファってあんなに毛むくじゃらだっけ?


「学園長」

「ん? あぁ、アンナ君か。まだ新学期は始まって……で、その後ろにいる男の子は誰だい?」

「不法侵入者です」

「違うわ。迷ったんっす」

「迷った……そうか、迷い人か。災難だったね」


 非常に眠いのかトロンとした状態の目で俺の姿を捉え、まったりとした声で喋るその姿はまさに半分寝ていて半分起きているという状態に近い。

 さらに言えば喋っている最中もウトウトしている始末。


「でもどこかの学園生じゃないのか?」

「……そうなの?」

「え、えっと……違うと言えばそうだし、そうだと言えばそうだし」


 流石に異世界の住人です、なんて言っても通用しないのは明白だし、かといって二人の会話に従って話を進めていたら後々、面倒なことになりそうだ。

 かといってここで何も喋らないと余計に怪しまれそうだし、まさに今の俺の状況は四面楚歌という言葉がお似合いだ。


「実は……気がついたらここにいたんです」

「つまり捨てられたのか」

「ちょっと学園長。ここは学園の土地ですよ? そんなこと」

「可哀想に」

「信じちゃった」


 学園長は未だに眠そうな目をしながらもウルウルと目を潤わせてゆっくりと毛むくじゃらのソファから起き上がるとゆっくりと俺の近くにやってきて俺の目を覗きこむように顔を近づけてくる。

 ジーッと見られているとどこか吸い込まれそうな感覚がしてどこか怖い。


「ところで君、年は幾つかね」

「15で今年で16です」

 それを聞いた学園長はしばし、腕を組んで何かを考え始めるが一瞬で答えを導き出したのか眠たそうにトロンとしていた目をカッと見開き、俺の方に向かって指をさす。


「ちょうど良い。君、うちの学園に編入しなさい」

「ちょ、ちょっと学園長! 見ず知らずの奴を学園に入れるなんて」

「いや~それが1人別の学園へ進学した人がいてね。その子の分まで教材を用意してしまって勿体ないと嘆いていたところなんだよ」


 常識としてはあり得ないことだけど俺からすれば最高にいいタイミングだ。

 こんな変なところにやってきて何も持っていない俺を学園に編入させてくれるなんて願っても無い話だしこの世界のことを知れるかもしれない。

 あ、でも授業料とかどうなるんだ。


「俺、お金とか一切」

「この学園は王立だから授業料はタダだし、依頼をクリアした際の報酬で食事もできる。で、君の魔法はどのようなものなのかね?」

「そう言えばこいつには魔法をかけても効かないんです。拘束魔法も破壊されたし、転移魔法も発動前に破壊されたんです」

「なるほど。では試しに」


 そう言うや否や学園長が手を俺にかざした瞬間、バスケットボールサイズの火球が一瞬にして生成され、俺に向かって放たれてくる。

 我武者羅に向かってくる火球めがけて拳を打ち出したその時、火球が一瞬にして消え去り、火の粉となって俺の目の前から消え去った。


「これは驚いた。魔法を破壊する魔法か。なかなか珍しい魔法の持ち主じゃないか……うん。気に入った。君を我がサバティエル魔法学園に研究対象として編入することを決定する!」

「……はい?」

 どうやら俺は研究対象らしいです。

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