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ワールド・ブレイク  作者: ケン
一学期
13/59

第十二話

 休み―――それは勉学に励む者だけが与えられた永久不滅の心と体の疲れを癒し、取り除くための儀式をするための特別な日。

 そういう日は大体、部屋でゴロゴロして寝るっていうのがお決まりなんだが今の俺は必死に筋トレに励む日となっている。

 俺の魔法は直接相手に触れなきゃ効果を発揮しない以上、遠距離からの攻撃で簡単に封じられるだろうから体を鍛えないとまともに戦えない。

 この世界には便利なものがあって魔法を封じ込めたメモ用紙サイズの紙が売店で十枚セットくらいで販売されていてそれを購入し、魔力を注ぎ込むと一週間くらいは自由に使えるという代物。

 それぞれシリーズがあるが俺はその中でも重力魔法の物を購入し、重力を少し重くした状態で筋トレに励んでいる。


「これはまさに……ふぅ。天然の重りだな」


 お金はどう用意したかといえば……いけない話だが落ちていたのを使わせてもらった。

 まぁ、あれだ……許してくれ、祖父ちゃん。

 そんなことを考えているとドアをノックされたので重力魔法が封じられたメモ用紙を裏返しにしてOFFにしてドアを開けるとそこにアンナがいた。


「よっ、アンナ。なんか用か?」

「あんた、クエスト行くチーム決めた?」

「いや、まだだけど」

「そう。じゃ、私と組みなさいよ」

「……まあいいけど何でまた」

「あんたのことだからイリナ以外に友達できてないだろうし」


 こ、こいつは人の傷を抉るようなことを言いやがって……まあ、確かにイリナ以外と話せる奴はまだミウォル先輩しかいないけど……でもアンナはお披露目会で一撃で相手を倒し続けてたし、何かあったとしても俺の魔法とイリナの瞬間移動、そしてアンナの炎の魔法を駆使すれば何とかできるだろうしな。


「あぁ、じゃあ頼むわ」

「という事でお邪魔しま~す」

「あ、おい」


 俺の静止も聞かずにズカズカと俺の部屋に入ると興味ありげに周囲を見渡し、そのまま何のためらいもなく俺のベッドにダイブした。

 なるほど、アンナはあまりそういうのは気にしないタイプか。

 あまり見かけなかったけどまさか最初に出会った奴がそんなタイプだったとは。


「で、あんた何選んだの?」

「一応、ボランティアの方を」

「ボランティア? 何それ」

「あ、えっと……討伐じゃない方」

「あぁ、ノーマルの方ね。なんで討伐にしなかったの? そっちの方が楽しいでしょ」


 討伐を楽しいと思える奴はどうかしてるよ……まあ、あんなくらいの実力があれば大抵の敵には勝てるんだろうけど俺の魔法じゃちょっと心許ないし、まだ魔物を討伐できるくらいの実力も無いしな。


「俺まだ実力ないし」

「凶精霊騒動を収めた癖に? まあ、確かに私からしたらまだまだだけど」

「そう言えばお前、普段昼休みとか何してんだよ」


 尋ねた瞬間、何故か部屋の空気が張り詰めたような感じがし、思わず身震いしてしまい、慌てて彼女の方を見てみるが顔をベッドに押し付けているためにその表情は窺い知れない。

 時々、アンナって不思議なところあるよな。

 一人称が私なのにあたしに変わったり、思い詰めた表情したり、今みたいに急に雰囲気を張り詰めたものに変えたり。


「……あんた男の割にはちゃんとベッド消臭してるのね」

 どうやらさっきの張りつめた感じは俺の気のせいだったらしい。

「イリナはどっちにしてるか分かる?」

「さあ? でもノーマルの方しかあり得ないだろ」

「それもそうね……でも私とチーム組むからには討伐は覚悟しておきなさいよ」

「はいはい……って全員違うのか? 一緒のところに行くんじゃ」

「違うわよ。中等部時代にもあったじゃない。クエストは個人毎に充てられ、個人の物が終わればチーム全体で取り組むクエストをクリアして初めて終了よ。もう忘れたの?」


 忘れたのって言われても俺の板世界にクエストとか言う言葉は某モンスターハンティングゲームかRPGゲームの中でしか使われたりしないから馴染みがない物なのですよ。

 そう言えば行事のことをクエストとか言ってるやつがいたけど学年共通事項としてそいつは中二病だっていう評価が下されてたな。

 にしてもチーム個人のクエストとチーム全体のクエストをやるっていうとそれなりに長い期間を設けないといけないし、この学園大丈夫なのか?

 お披露目会も一週間くらい用意されていたけど。


「ん? なんであんた魔紙なんか持ってるの?」

「ん? あ、ちょっと筋トレに使ってたんだ。ほら、重力魔法で体を重くして」

「……あんた強化クラスみたいなことするのね。必要なくない? あんたの魔法は触れた物をすべて破壊する強力な魔法なんだから」

「でもさ。触れる前に魔法で遠距離から攻撃されたら封じられるだろ? だからそれを避けるために体を鍛えておかないとさ」

「なんか出せないの? 破壊する弾丸とか」

「出せたら一番いいんだけどな」


 もしもアンナの言う通り、触れるだけではなく炎みたいに手から何かを出して着弾したらそれを破壊できるっていう事が出来れば大分、戦い方も変わるんだけどな。

 それが鍛錬を積めば出来るのか、それとも鍛錬を積んでもそんなことはできないのかが今のところ分からないので鍛えるに越したことはないのだ。


「属性魔法は使えないの? 超常魔法なら大体複数持ちはセオリーだし」

「それも試してみたんだけど属性魔法も強化魔法も今のところは出来てない」

「ふ~ん。でもあんた椅子に座ってるけど壊れないんだ」

「まあな。意識を集中させたら壊せるけど。今のところ無意識で壊せるのは両手くらいであとは意識を集中させないと破壊できないんだ」


 顔に関しては無意識のうちに破壊魔法が発動してることもあるけど大体は意識があって集中した状態じゃないと両手以外は発動しない。

 もしもこれが全身両手と同じだったら確実に俺はこの世界を破壊しまくってただろうな。


「破壊できないものとかは無いの?」

「破壊できないもの……単発攻撃なら簡単に破壊できるけど継続して出されたら破壊できずにそのまま押し出されることもあるな。ほら、魔法陣から炎を噴き出し続けるとか」

「……へぇ。他には?」

「他にはってそれだけだけど」

「そうなんだ……ま、討伐クエストの時に役立てるわ」

「それってお前がリーダーってことかよ。イリナ絶対に反対するだろ」

「ま、そこら辺は言い聞かせるわよ」

 子供じゃあるまいし。

「ま、もう帰るわ。クエスト配布は一週間後だからそれまでにもう一人、集めといてね。イリナ以外」


 そう言ってアンナは俺の部屋から去っていった。

 イリナ以外って言われても俺、キングオブ変態の異名を持っているミウォル先輩くらいしか知り合いいないし、ミウォル先輩は学年も違うし、難しいな。

「ま、いいか。筋トレ筋トレ」

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