第十一話
すみません、やっぱり連載します。
「学園長。結果が出ました」
「ん~……やっぱりか」
「はい。凶精霊の大部分はトコヨ君の魔法により、破壊されていましたが残留魔力を検査したところ、都市でも被害を増大させているものと一致しました」
「最近、街の方でも増えてるとは聞いていたけどまさか学園内で起きるとはね」
「……あの噂は本当なのでしょうか」
「さあ? 分からないけど……そうなると国家間の問題になって学園長程度じゃどうにもならないね」
―――――☆――――――
凶精霊騒動から早一週間、この世界へやってきてから早十日ほどが経過した。
この学園にもまあ慣れ、友人も先輩という名の変態が出来たくらいには一応、交友関係は築けてはいるけどまだイリナほど親しく話せる人はいない。
そんな中、今日の授業は書庫で行われるという連絡が入ったので超常科の建物の最上階にある書庫へ集まっていた。
「皆さん集まりましたね。本日の授業は皆さんの魔法を調べるという事をしてもらいます。自身の魔法を知るという事は魔法を強化することに重要ですからね」
そんなわけでバカみたいに広い書庫を歩き回って俺の破壊魔法に関して乗っている、もしくは似たようなものが載っている本を探すがやはりなかなか見つからない。
そもそも珍しい魔法って言われてる時点でそれについて書かれている本は中々見つからないよな。
「トコヨ君。見つかりましたか?」
「いんや、見つからないっす。なんか俺の魔法珍しいらしくて」
「そうですか……では君は興味のある物を読んでいても結構ですよ」
そう言われ、適当に書庫を歩き回っているとばったりとイリナにあってしまったが何も言っていないのに大きなため息をつかれてしまった。
え、なんで俺ため息つかれちゃったわけ?
「朝から貴方に会うなんて最悪ですわ」
「俺はそう言われたことが最悪ですわ」
「……で、貴方は見つけましたの?」
「いんや。俺の魔法珍しいから中々見つからなくてさ。先生から興味がある本で良いって言われた」
「そう、でしたらあなたにピッタリの本がありますわ」
笑みを浮かべながらイリナに手渡されたのはバカを治す画期的な魔法教育と大々的な書かれた教育書みたいな本だった。
チラッとイリナの顔を見てみるが相変わらずニコニコと笑みを浮かべて「早く読んだら?」という圧迫感を与えてくる。
バイトの圧迫面接でも真顔だったのに笑顔で圧迫面接って死にたいな。
とりあえずその本を読んでみることにし、イリナの座っていた場所の隣に座り、読み始める。
ここ一週間で必死にこっちの言語を勉強したからもうある程度はスラスラと読めるようにはなったんだよな……まあ、まだ古い回しとかは分からないけど。
「バカを治すには魔法で頭を刺激する……改造人間かよ」
「貴方の場合、爆発で吹き飛ばしてもらって再生魔法で再生したらいいと思いますわ」
「勘弁してくれ。というか一回脳吹き飛んでるんだから死ぬだろ」
「ふふ~ん。そこは幻覚魔法で体にそんなことは起きていないって幻覚を見せればいいんだよん」
「ミウォル先輩」
キングオブ変態の称号を与えるにふさわしい変態の先輩。やはり今日も俺の息子の部分を凝視してはグヘヘと下卑た笑顔を浮かべている。
マジでやめてくれよ、男子の尊厳にかかわるんだから。
「君今、超常クラスでも有名人だよ~」
「俺がですか?」
「なんせ凶精霊騒動を収めたじゃん」
あの時の騒動は凶精霊を使用した生徒が暴走したとほとんど真実に近いことが発表されているけど使用した生徒のことを考えてなのか誰が凶精霊を使用したのかは知らされず、またあの場にいた審判役の先生、俺、その相手には学園長直々のかん口令が敷かれた。
凶精霊を使用すること自体が罪らしく、学校で先輩の姿は見かけていない。
「あれはアンナやイリナ、先生がいたからですよ」
「謙虚ですわね。貴方の魔法によって彼は生き永らえたのですから誇ってもいいんじゃないかしら」
「まあ、今度な」
祖父ちゃんからこっ酷く、自分の誇りは自分の中でしか誇るなって言われてたからな……あまり他人に言われて尊大になったらえらい目にあうって。
「そう言えばもうすぐ行われるクエスト何するか決めた?」
「クエスト? なんですかそれ」
「知らないの? 中等部でもやったじゃん。一学期中に学校側から提示されるクエストを選んで三人一チームでいくやつ。報酬は色々だけどね」
要するに職場体験じゃないけどそんな感じの奴か。確か大学では学校側が生徒に対してアルバイトを提示してるって聞いたことあるけどそんな感じなんだろうな。
色々とこっちの高校はアクティブな行事が多いんだな。なんか羨ましい。
「大体は村の近くにあるゴミ屋敷の掃除とかですけどね」
「マジか。なんか楽しそうだな」
「ゴミ屋敷の掃除は楽しいよ~? だって掘り出し物とかくれるもん。去年行ったところは古い魔導書が見つかってそれ貰ったこともあるし」
確か魔導書っていうのは魔法使いが新しく魔法を覚える際に使う書物のことでそれを使わないと新しく魔法は覚えられない。
他に魔法書っていうものもあって確かそれは自分の魔法をさらに強化したいときに使う本だったっていうのを授業中に学んだぞ。
で、この書庫にある大量の本は七割が魔法書、二割が魔導書で残りの一割が分類不明の本だったっていうのも聞いた。
「はぁ」
「ん? どうしたんだよイリナ」
「いいえ、別に……何でもありませんわ」
何でもないにしてはやけに落ち込んでるようなため息だったけど。
「どのクエストのチームって自分たちで決められるんですか?」
「決められるよ。余ったら適当に割り振られるけど」
「じゃあ、イリナ」
「お断りいたします」
即答かよ……まぁ、異性と常に一緒にいたらそう言う変な噂も立つだろうし、前にそんな変な噂は立たせたくないって言ってたしな。
やっぱり俺もイリナだけじゃなくて同性の友人も作った方が良いかもな。
「もうすぐ担任からクエストの調査票が配られると思うよ」
「クエストって何があるんですか?」
「ん~。まあ大体、近くの村とか提携している団体に行ってのお手伝いが基本かな。中には討伐クエストもあるけどそれは実力が高い人にしか配られないから。あと報酬はクエスト事にもよるけど基本的に物かな。たまにお金をくれる時もあるけど」
と、そんな会話をしていると終業を告げる鐘が教室に鳴り響く。
いつもいつも思うけどこの鐘一体どこから鳴らしてんだ? 学校の全体を見た限りじゃこんな大きな鐘の音を鳴らせる鐘は見当たらなかったけど。
「ではこれにて授業を終わります。お疲れ様でした」
―――――☆――――――
「というわけでクエスト調査票を取りに来てくださ~い」
相変わらず面倒くさそうな声の先生の指示に従い、教卓に置かれている調査票を受け取り、クエスト内容を見てみると七割がボランティア活動、三割が討伐クエストであとはどこでも良いですっていう空欄が書かれていた。
空欄に書いたら実力とかを鑑みて本当に適当に配置されそうだからちゃんと考えるか……中学の職場体験で散々な目に遭ったからな。
なんでどこでも良いですっていう返事をしたら工場に送られてしかも八時間フル労働なんだよ。
「討伐クエストってヤバい奴はどんな奴を討伐するんですか?」
「ん~ジンとか?」
「……なんすかそれ」
「ジン……生態が全く分かっていない魔物ですがその凶暴性から災害級という討伐難度の中でも最高難度が与えられている最強の魔物ですわ」
ジンってもしかしたら漢字に当てはめると神っていう感じになるかもな……災害級って要するに一度現れれば村どころか都市一つは滅ぶかもしれないっていうクラスかよ。
遭遇すればほとんどの確率で殺され、生き延びたとしてもトラウマになる、みたいな感じの奴か。
「ですがさすがにそのクラスは無いでしょう」
「うん。適当に言っただけ~」
そんな災害級の化け物を生徒に狩らせようとすること自体おかしな話だからな。下手したら死者まで出るし、そうなったら学園の存続にかかわる大問題にまで発展しかねない。
でも討伐クエストは辞めておくか。あまり怪我はしたくないしな。
ボランティアクエストの一覧表を見てみるがほとんどがゴミ屋敷の掃除、もしくは家畜の世話、行方知らずになってしまった家畜の捜索。
マジでボランティアばっかりだな。
ま、適当にゴミ屋敷の掃除にでもしておくかな。
「書けたら提出して終わっていいよ~」
そんなわけで俺は調査票を提出し、少し早い昼飯を取ることにした。