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ワールド・ブレイク  作者: ケン
一学期
1/59

プロローグ 世界の破壊か、創造か

「雄二~。そっち終わった?」

「まだー! けっほっ! 祖父ちゃんガラクタ残し過ぎ」


 埃だらけの物置、どこの国の物なのか分からないようなガラクタが山のように積まれている物置を掃除するために俺―――常夜雄二はマスクにゴーグルという万全な装備で望んだが想像以上に埃が強かった。

 クモの巣はあちこちに張り巡らされてるし、埃は山積みだし。

 元々ここは祖父ちゃんの家にある物置なんだがその祖父ちゃんが老衰で死んでしまったため、俺達親族が総出で片づけをしているというわけだ。

 祖父ちゃんは冒険癖があったらしく、若い頃は海外へ旅行しまくり、そこの曰くつきの土産物を貰って箱の物置に突っ込んでいたらしい。

 土偶、錆びた剣、鎧に甲冑と何時代だと言いたいくらいのオールスターが勢ぞろいしている。

 特撮映画で例えればバイクに乗るヒーローと巨大ヒーローの全員が勢ぞろいしたカオスな映画を見ている感覚に近い。

 祖父ちゃんが死んだのは104歳だから大往生なんだけど普通に祖父ちゃんは戦争を経験した人で銃を持って色々な場所へ向かったらしい。

 近所では有名な祖父ちゃんで同世代の人で知らない人はおらず、祖父ちゃんよりも十年以上年下の人でさえ、名前を知っているというほどの有名人だ。

 そんな祖父ちゃんはよく小学校へ戦争時代の話し手としてよく呼ばれていたけどそこで話すのはえげつない話ではなかったけど俺はよく戦争のえげつない話は聞かされていた。


「うわ、これなんかもう割れてんじゃん。げっ、なんだよこの巻物。破れてるし……これって剣か? 錆びてるから本物だよな……銃刀法違反じゃねえの? ま、いいや。これもゴミ」


 足元に置いてあるゴミ袋へ次々と放り込んでいき、整理していっているとやけに綺麗な壺を見つけ、それを持ってみると中には何も入っていないのかやけに軽く、祖父ちゃんが適当に物置に入れていたガラクタの中では一番きれいに保管されている。

 側面には傷一つなくハッキリと分かる絵が側面に沿うようにして描かれている。

 人の形をした絵から黒い線のようなものがまっすぐひかれており、白く塗り潰されている塊を貫通している絵だった。


「なんだこれ? もしかしてこれ、死ぬちょっと前に人生最後の旅だとか言って行ったときに貰って来た壺か? 呪われるとかないよな……蓋がある」


 軽く振っても中身は無いようなので蓋を握ってみるが中々開かず、力を入れてみるがそれでもまったく動く気配はない。

 まるで蓋を粘着性のある何かで固定しているのかと思うくらいに固く、全く動かない。


「ふぬぬぬ! この野郎!」


 直後、キュッという音共に蓋がゆっくりと回ったのでそのままの勢いを殺さずにゆっくりと蓋を回していき、それを取り外した瞬間。


「な、なんだ!?」


 突然、壺の中から眩い光が溢れ出し、薄暗かった物置の中を明るく照らし、周囲にあった壺やら剣やら鎧やらを軽く吹き飛ばし、窓の外から大量の埃が吹き飛んでいく。

 な、なんなんだ……いったい俺の目の前で何が起きてるっていうんだ!

 そんなことを考えていると足が勝手にゆっくりと壺の方へ引っ張られるような感覚を抱き、慌てて壺から離れようとしたその時、今度はさっきと逆にすさまじい勢いで壺の中へ風が吸い込まれていく。


「母さん! 助けてくれ! 母さうわぁぁぁぁぁ!」


 母親に助けを呼んだ瞬間、体が浮かんでそのまま景色が真っ暗になった。





―――――☆――――――

「あれ? 兄ちゃんは?」

「便所にでも行ったんじゃない? ほらさっさとあんたも祖父ちゃんの部屋片付けてくる。あんたに至ってはお兄ちゃんよりもお小遣い貰ってるんだから」

「は~い。あ~あ、雄太君とデートに行くはずだったのに」

「小学生にデートはまだ早いわよ。ほら行った行った」

――――☆――――――


「うわぁぁぁぁ! 死ぬ! 死ぬぅぅ!」


 凄まじい勢いは保ったまま俺の体はどこに落ちていくかも知らないまま真っ逆さまに落ちていく。

 過ぎ去っていく景色は赤く光り輝いていたり、青く光り輝いていたりと色が断続的に落ち着きなく変化していく。

 その時、俺の視線の先から何か二つの球体が迫ってきているのが見えた。

 その球体は一つは白く輝いており、もう一つは黒色の輝きを放っていて時折二つの球体はぶつかり合って火花を散らしながら俺のもとへと向かってくる。

 な、何なんだよ一体! 何がどうなってるんだ!

 すると二つの球体はぶつかり合いをやめ、速度を落として俺の目の前に辿り着くとさらに輝きを強くして俺の視界を塗り潰す。

 あまりの眩しさに目を閉じるがその眩しさが失せていくのが分かり、目を開けると目の前には白いワンピースの様なものに身を包み、白髪の少女と対照的な黒髪と黒いワンピースの様なものに身を包んだ二人の少女が俺の目の前にいた。


『『ようこそ私たちの世界へ!』』

「は、はぁ!? 何言ってんの!?」

『『貴方は二人目の異世界転移者です! どうやら貴方は一定以上の魔力があったみたい。ふふ、異世界人でありながら魔力を持つなんて異例中の異例よ。さあ、私たちどちらかを選んで!』』

 そう言うや否や二人の少女は笑みを浮かべながら俺に向かって手を伸ばしてくる。


『世界を破壊するワールド・ブレイクか』


『世界を創造するワールド・クリエイトか』


『『君はどっちを選ぶ?』』


 二人の少女は本当に楽しそうな笑みを浮かべながら俺に向かってその質問を投げかけ、細く伸びている腕を俺に向かって伸ばす。

 正直に言って俺は今何が起きているのかというよりも目の前の二つの選択し、どちらかを選ばなくてはいけないという感情に囚われている。

 おかしな話だよな。さっきまで慌てていたのに今じゃこんなにも冷静に考えられてるんだから。

 でもこのまま悩みあぐねていても俺がどこに落下していくかもわからない状況で全く予想外の出来事が今目の前で起きているんだ。

 どちらかを選択すれば確実にこの状況は一変する!


「俺は……俺が選ぶのはワールド・クリエイト!」


 世界を破壊なんて物騒なものよりも創造する方が遥かにマシだと考え、白いワンピースの少女に向かって手を伸ばしたその時、突然右側から凄まじい衝撃の爆発のようなものが起き、体が左側へと傾き、そのまま手が黒いワンピースを着ている少女の手に触れた。


「あ」

『ふふ。ようこそ、私たちの世界へ』


 女の子が楽しそうに笑みを浮かべながらそう言った瞬間、一瞬にして俺の視界が真っ暗になった。




――――☆――――

『あ~あ。そっち選んじゃったか』

『これもまた運命。同じ世界に二つの能力は必要ないもの』

『それもそうだね。世界の破壊か』

『世界の創造か』

『結末は君の行動次第で変わるよ』

――――☆――――



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