神社ガール略してジンジャガのチカラ
いつも同じ時間に同じ道を通るというのは、大人にとっても子供にとっても珍しいことではない。
見慣れた光景は安心感、はたまたうんざりする嫌悪感か。人それぞれだろう。
ぼくにとって学校までの同じ道は楽しみがあるだけ幾分かマシ・・・なんだろう。
学校まで通う道の近くに少し大きな神社がある。そこを通るのがぼくの楽しみなのだ。
制服の彼女は今日も神社の境内に続く長い階段の真ん中より下でちょこんと座っている。
春だからか白い上着の色が明るく見える。カバンが黒の革素材っぽいのも『女子高生』というイメージそのものだった。
彼女が毎朝石段にすわっている理由はなんなんだろう。友達をまっているのだろうか。答えはもちろん浮かんでこない。
彼女に会えるのは朝だけだった。それで十分なのだが、悩んでいることがある。彼女と仲良くなりたいとかそんな軽率なことなんかじゃない。他人がいつも同じタイミングでそこにいるというのはぼくは好意的にとるが、相手にとっては不気味というか気持ち悪いのではないかと。
ポジティブさ、ネガティブさというのは人それぞれなのだから。
そんなことを一日中、ずっと。授業中も。昼食中も考えていたのだから自分はなんて暇なやつなんだろうと学校の校舎から出たときにふと飽きれてしまった。
夕方には会えない神社の彼女。夕方の神社というのは暗く、ぼくにとって階段の両脇の石の灯篭が少し怖いと感じる。
ふと階段のてっ辺、境内側を見上げると人がいるのを感じた。ほうきで風でたくさん落ちたたくさんの木の葉を掃いている。巫女さん?宮司さん?と思ったが、いやセーラー服だった。
そうか神社の人だったのか。巫女さんのアルバイト?いや神社の娘さんだろうか?
声をかけることもできず、ザっザっザ、ザっザっザっザと竹箒の石段を掃くかわいた音が響いた。
ぼくは悩んだ。このまま帰るか。それか・・・
それかの後を必死に考えた。他人に声をかけても不審じゃない方法なんかあるのか?
ただ、ただ、ただなにもせずこのまま帰るのは一生後悔する。それだけは間違いないからだ。
ああ!!
ぼくはひらめいた。理由を作った!天才だとぼくは感動すらしてしまった。
彼女はこちらにきづいていなかった。もしかしたら今までもぼくのことなんか気づいてなかったのかもしれない。
それでもいい、ぼくは先ほど考えた天から授かった言葉を胸に石段をあがった。
そして中断まであがってぼくは言った。自然な言葉を!
あの!お守り売っていますか?
きょとんとしたがすこし申し訳なさそうに答えた。
すみません、お守りなんですが先日のお祭りで全部売切れてしまいました。
万事休す!ああそうですかわかりました。とむなしく帰る。わけにはいかなかった!
あ、じゃあおみくじありますか!?
え?あ、はい。ええとあそこに見える社務所で販売してます。
ぼくはやった!と胸の内でガッツポーズした。
ぼくは会釈をしておみくじをし、中吉がでたのをポジティブに喜び、また彼女のいる石段に向かった。
ここが運命の分かれ道になるかもしれない。残念な結果になるかもしれない。だから少し覚悟はしていた。
ありがとうございました。
ぼくは彼女にお礼をいった。正直これ意外思いつかなかったのだ。全てを出し尽くした『ありがとうございました』だった。
いいえ、またお待ちしてます。あの・・・いえ、いつも朝とおりますよね。
!?
彼女はぼくのことを知っていたんだ。ぼくは頭がまっしろになった。
あ、あの、今度神社のこと教えてください!
ぼくはそこから覚えていない。驚きのあまり、もういかなきゃとかいって逃げてきたのかもしれない。
ぼくは神社が大好きになった。そしてなにより神様と中吉のすごさを実感したぼくであった。
思春期の男の子って惚れっぽいですよね。恋がきっかけでがんばったり、冒険してみたり。この主人公は爽やかイケメンで髪がふわふわ男子なのでたぶんがんばれば、ジンジャガと付き合えます。うらやましいなあ!笑