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絆の魔法 ~SEVEN COLORS EFFECT~  作者: 岸寄空路
第一章 ダーク&ハイ
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嵐の前触れ


 アルと戦闘訓練をした後、ミア、リリー、マナとも手合わせを行った。

 三人の戦い方がどんなだったか説明しよう。


 ミアは状態異常魔術が得意で地面のあっちこっちに魔法陣を設置し、踏むと体が麻痺したり、魔力が削られたりとなかなか厄介だった。

 更に武器がトライデントであるの利用し三つの付与魔術を使用してきた。

 相手の能力をダウンさせるタイプの付与魔術で、しかも武器越しでも効果は薄いが徐々に体の動きが悪くなるのはしんどかった……。


 そんなミアに対してリリーは身体強化系魔術と治癒魔術をメインに使い、気弱そうな見た目に反して接近戦で強気に攻めてきた。

 鉄扇を上手に使い攻撃を受け流す姿は舞踊にも見えた。夢魔の特性である魔力吸収を使われたらもっと苦戦していたな。


 マナは正しくパワーファイターと言える戦い方だった。身長ほどもあるハンマーを片手で振り回して来て、すっごく怖かった……。

 以前も語ったが俺は人間で体の頑丈さでは七種族の中では一番貧弱なんだ。あんな勢いで巨大なハンマーを振るわれたら死ぬわ!

 ちなみに今回は使わなかったが、あのハンマーなんかギミックがあるらしい。

 俺には使わなくていいよ! 死んじゃうから! 魔術はまだ防げるけど、馬鹿力で殴られるのは耐えられないから!


「しかし、戦ってみてわかったが……」

「なにがわかったんだ?」


 俺の言葉に竜二が疑問を返す。

 その言葉に俺は五人に質問する。


「お前ら何でEクラスなんだ?」

「「「「「え」」」」」

「いや、周りの奴らもざっと見回してみたが、明らかにレベルが違うだろお前ら」


 俺がEクラスになったのは理由があるが、こいつらは学園で真面目・・・にやっていたはずだが……。

 なぜか五人は俺が話している間ずっと目を背けて汗をダラダラ流している。

 まさか……。


「……俺が約束通りに来なかったからやる気が出なかったとか?」


 全員がビクッと体を震わせた。図星かよ……。


「まあ、一年遅れた俺が悪いんだが……何か言うことはあるか?」

「「「「「すいませんでしたー!!」」」」」


 反省してるようだし良しとするか。俺も人の事言えないし……。



***



キーンコーンカーンコーン


「本日の授業はここまで」


 チャイムが鳴り本日最後の授業が終わった。

 全員で机を教室の後ろに運び掃除の準備をする。こういうところも普通の学校と一緒だな、と思ったが前は生徒ではなく業者に掃除をやらせていたらしい。


 なんでも以前まで校舎でも平然とバトっていたらしく何度も校舎を破壊され、その度に建築業者を呼んで修理してもらっていたそうだ。

 これに憤った校長(種族:パンダ獣人)が「校舎を掃除して、壊した所を自分で直して仕事してくれる人の有難味を知れ!」と喝を入れたそうだ。

 当時それを見ていた人間教職員曰く「パンダが元々肉食獣だったことを思い出したよ……」と恐怖で顔を歪めながら呟いたそうだ。

 あ、ちなみに獣人には二種類いて動物がそのまま二足歩行できるように進化したような種と、人間に動物の耳や尻尾を付けた様な種がいる。校長は前者、アルは後者だ。後、朝会った白虎も後者だったな。


「失礼します」


 と、どうでもいいことを考えながら教室の掃除をしているとちょうど白虎が教室に訪問してきた。

 噂をすれば影というが、また会うことになろうとは……。まあ、同じ学園だしいつかは出会うか。こんなに早いとは思わなかったが。


「――――」


 白虎は教室内を見渡し、俺と目が合うと近づいてきた。


「今朝はありがとうございました」

「……ああ、気にしなくて良いですよ。ただの気紛れですから」

「ふふ、階級は同じですから敬語じゃなくて良いですよ」

「そうで――そうか。ならそっちもタメで構わないぞ」

「では、お言葉に甘えて。私の名前はピアーズ・ヴァイスネージェル。ピアと呼んでね」


 言い方が若干あざといが見た目は俺より年下に見えるぐらい小柄だから似合っている。


「で、目的は何だ? 朝の礼だけなのか?」

「ええと、正直に言うと生徒会への勧誘に来たの」


 聞くとピアと名乗った彼女は生徒会役員の一人で朝の俺の活躍を生徒会に報告したらしい。そこで俺に興味を持った生徒会長が是非会いたいと言い出し、おまけに七人目の生徒会役員として俺を勧誘することも考えているらしい。

 ここで生徒会について説明しよう。七集学園の生徒会は各種族から一名ずつ選ばれる。

 選考基準はAクラス以上であること、成績優秀であること、品行方正であることだ。

 Aクラス以上と言うがSクラスから生徒会役員が選ばれることは無い。正確にはSクラスの生徒は基本的に強くなることしか考えていない者ばかりで「生徒会の仕事をしてる暇があったら特訓する」と生徒会への勧誘を断るらしい。例外もあるが。

 しかし、このピアという獣人、Aクラスだったのか。俺の見立てではB程度だと思っていたが……。緑竜もBクラス(正確にはBクラスの下位)だったし。まだ隠している能力があるということか。

 俺の目もまだまだだな。

 さて、生徒会の説明が終わったところで俺の返答だが。


「面倒」

「そう言わずに。生徒会に勧誘されるのは名誉なことなんだから断る理由は無い筈だよ」


 理由はある生徒会は役員でパーティを組む。と言うことはだ。俺は生徒会パーティに入らなければいけなくなる。


「絶対いや」

「そこまで拒絶しニャくてもいいじゃニャい!」

「……ニャ?」


 興奮して喋って噛んだのか猫の獣人みたいなしゃべり方になったピアに対して俺と同じ様に教室で掃除していたアルが「何言ってんだこいつ?」という感じでピアを見ている。


「お前は猫か」

「猫じゃありません! 虎です! 由緒正しき白虎の一族です!」


 また敬語になっている。もしかして普段は猫の獣人っぽいしゃべり方をしている為、素を隠す為に人前では敬語で話すようにしているのかもしれないな。


「……獣人に由緒正しいとかは、あまり関係ないが……」


 アルの言った事を補足すると、獣人は生まれた時に何の動物の獣人になるかはわからないからだ。基本的には両親のどちらかと同じになるが、先祖に他の獣人の血が混ざっていると別の動物の獣人になることがある。

 それでも由緒正しきと言えるとしたら――


「私の一族は先祖代々虎系獣人のみの血筋です! 雑種なそこら辺の獣人と一緒にしないでください!」


 一見、他の獣人を見下している様な発言だが、そう言う訳ではなく自分の血筋を誇りに持って守ってきた彼女等にとってアルの発言は何も知らない奴に自分達の事を否定されたように感じる為に失礼な発言をしてしまっているだけだ。

 まあ、アルも悪気があった訳ではなく考え方にズレがあるだけなのだ。

 貴族と一般人では考え方に違いがあるのに似ている。貴族は誇りを大事にし守る為に生きていくのに対し、一般人は生きていく為に働く、誇りでは食っていけないからだ。

 それが原因で貴族と一般人が不和になることは歴史の中でも良くある。

 っと、いい加減にピアを宥めるとするか。


「落ち着いてくれ。アルもピアのことを知らなかっただけだから怒らないでやってくれ」

「むう、多少納得いきませんが知らなかったのなら仕方ありません。許します」

「……すまん」


 アルも悪かったと思ったのか謝罪している。こいつも無表情でわかりにくいけど人の機微はわかるからな。きっと心の中では自分の失言で怒らせたことを反省しているのだろう。

 後でフォローするか。


「で、俺は生徒会室に行けばいいのか?」

「はい、お願いします」


 すっかり敬語に戻ってしまったな……。


「わかった。掃除が終わったらな」

「案内するので待っています」


 生徒会ねぇ。良い予感はしないな。




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