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絆の魔法 ~SEVEN COLORS EFFECT~  作者: 岸寄空路
第一章 ダーク&ハイ
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実戦訓練

「今から実戦訓練を始める!」


 昼休みが終わり午後の授業が始まった。

 七集学園では座学と実戦訓練の授業を行っている。

 組む相手は自由、先生に挑んでも良い。中には魔術の練習をしている者もいる。

 要は戦闘訓練と言えるものなら何してもよし、とのことだ。


 と言う訳で全員戦闘服に着替えてグラウンドに集まっている。もちろん校舎に魔術が飛んで行かないようにグラウンドの周りには結界が張られている。


「みんながどれくらい強くなったか見てやるか!」

「楽しそうだな……」


 俺が楽しげに声を上げると竜二が若干引き気味に返事した。

 竜二の戦闘服は武道家の道着によく似ている。ただ、竜二の着ている道着の方が動き易い良い素材を使っているのが見ただけで分かる。


「久しぶりにみんなの力を見るからな。楽しみに決まってるだろ!」

「…………あまりハードルを上げすぎないでくれ……」


 アルが困ったように苦笑しながら俺に頼んできた。

 マナ、ミア、リリーの三人も同じような表情をしている。


 アルの戦闘服は長袖長ズボンでジージャンに似たものを着ている。


 ミアはすごく動き易そうな魔術師っぽい服装だ。ナーガなどの水棲種は下半身が変化する種族が多いので戦闘服の特徴として下半身を覆うローブの様なデザインのものが多い。下半身が人型の時でも動き易いようにゆったりしていて尚且つ動きの邪魔にならない様に軽い素材を選び下半身が変化した時には軽く同化して防御力が上がる様に出来ているらしい。


 リリーは和服に似た戦闘服だ。こちらは格闘できるように動き易そうなデザインだ。……ただ羽は何処から出しているんだ?


 マナは半袖のジャケットに短パンと活動的なマナにぴったりだ。

 しかし、それ以上にマナが持っている持っている本人の身長ほどもある武器らしき物の存在感が無視できない。

 布で巻かれていて詳細は分からないが棒状な形をしているのは把握できた。

 俺は思わず指を指して疑問を口にする。


「マナ、それは?」

「これ? 新作の武器だよ!」


 マナがテンション高めにそう返した。

 マナ達ドワーフは武器等のものづくりが趣味であり、生き甲斐だ。

 この学園に入学する時には冒険科か錬金科のどちらにしようか本気で悩むらしい。

 冒険科では武器作成に使える良い素材が集め易く、錬金科はより良い鍛冶の技術、または錬金術を学ぶことができるからだ。

 まあ、マナは小さい頃に親に技術を教え込まれたから錬金科に行く必要が無いからな。

 ……友達がいなかったから鍛冶ばかりしていただけだが…………。


「なんか失礼なこと考えなかった?」

「気のせいだ。それよりどんな武器なんだ?」

「ふふ、見ればわかるよ」


 マナは笑みを浮かべながら武器に見ている布を取った。

 そこから現れたのは薙刀に似た物だった。似たと表現しているのは刃の付いている部分が機械の様なデザインでハルバード(槍の穂先に斧が付いた武器)にも似ているからだ。


「パワータイプのマナらしい武器だな」

「否定はしないけど脳筋っぽく言わないで欲しいな~」


 勝手に納得してる俺の反応にマナは不満そうにしていた。


「それにこういう機能もあるんだ、ぞ!」


 話の途中でマナは薙刀の柄に付いたスイッチの様なものを押した。

 すると――


 ガシャンと音がして薙刀は鎌の形に変形していた。


「すごいでしょ!」


 マナは自慢げに武器を掲げている。

 しかし、俺は気付いてしまった。ある事実に。


「なあ、マナ」

「なに?」

「薙刀から鎌に変形する意味あるのか?」

「………………………………えっ?」


 マナは「どういうこと?」と聞きたそうな顔をしている。


「いや、だって薙刀と鎌じゃ戦い方が違うぐらいで変形の必要性が無いだろ?」


 そう、薙刀の場合だと文字通り横に薙ぎ払うように切る武器で槍の様に長いが動作としては相手を切るように動く。鎌の使い方も同じで大きく払うように切る動作を行って戦う武器だ。本来なら鎌の方が広範囲を薙ぎ払える様に出来ているが、今回の武器の場合どちらも刃の長さが同じなのだ。鎌で攻撃できる範囲も狭い。


「……………………」


 俺が理由を説明するとマナは長い沈黙の後、


「う、うわああああぁぁぁぁん!」


 泣きながら走り去った。


「「「「「…………」」」」」

「俺が悪いのか?」

「いつものことだ。気にしなくていいぞ」


 竜二が慰めてくれたおかげで俺は落ち込まずに済んだのだった。

 ちなみにこの後、マナは本来の得物であるハンマーを持って戻って来た。ってか、授業を抜け出したことに関してお咎め無しなのか先生。

 本当にいつものことなんだな……。



 さて気を取り直して他の三人の武器を確認しよう。

 ミアはトライデント、先が三つに分かれた槍だ。杖の代わりにもなるらしく魔力を集め易いそうだ。

 リリーは鉄扇、金属製の扇子だ。正確にはヒヒイロカネと言う異世界の金属で出来ている。魔力伝導率が高く魔術の使い勝手が良いとのことだ。

 最後にアルの武器は銃だ。二丁の拳銃を両手に持っている。この銃は魔力を弾丸として撃つものらしい。このタイプの武器は人間界とレムリアの交流が始まってから造られた。

 普通の銃ではレムリアのモンスターに(全くではないが)通用しないため新しく造られた。まだ研究中のため七集学園などで試験的に使わせている。

 しかし、六種族の中には銃を使うのは邪道と考えている者も少なくは無いためあまり好まれていない。そのためアルみたいにメイン武器として使う者はかなり少ない。

 ちなみに実弾も撃てるがアル本人は「金掛かるから使わない」だそうだ。


「さて、まずはアルからだ!」

「……別に構わないが、あまり期待するなよ?」


 そう言いながらも『負ける気は欠片もない』と言わんばかりの強い闘志を感じるぞ。

 審判役をミアに任せて対峙する俺とアル。

 お互い緊張感が漂う中、ミアから戦闘開始の合図が出るのを待つ。


「――始め!」


 ミアの合図に先に動いたのはアルだった。素早く引き金を引き魔力の弾丸を撃ち出す。

 俺はそれを回避する。予測通りだったので容易だった。


「……簡単に回避するな」


 アルは感心したような声色で呟く。


「拳銃タイプの銃を得物にしているなら早撃ちは必須とも言える技能だからな」


 魔力を使用する銃の中でも拳銃タイプは威力より連射に重きを置いている。もし俺が同じ武器を使うなら先制攻撃で相手の弱点を撃ち速攻で終わらせる。


「……仕方ない」


 アルはそう呟くと銃口をこちらに向けて連射してきた。

 俺はアルの攻撃を回避し、ある事を試す為に《グラヴィティ・フォール》を厚さ五十センチで人一人程度の大きさの範囲で発動した。

 俺はアルの魔力弾がそこに向かうように銃口の向きを誘導した。

 そして魔力弾が《グラヴィティ・フォール》の壁を通過した。魔力弾は特に変化せず壁を通り抜けて消えた。……そうか、影響なしかー。


 俺が試したかったのは魔力弾が重力の影響を受けるかどうかを確認したかったのだ。

 結果はご覧の通りと言うべきか、重力の影響を受けないようだ。

 はあ、しゃあない。なんとか接近戦に持ち込むか……。


 数分後、結果は俺の勝ちで終わった。

 決め手は重量減少魔術ウエイト・ロスで体を軽くして高速で魔力弾を避けながらアルに近づいて接近戦を行った。アルは接近戦が苦手なのであっさり決着が着いた。

 まあ、アルが本気を出せば近接も遠距離も関係なくなるんだけどな。今回は模擬戦だし、アルもアレ(・・)を使うとキツイらしいからな。仕方ない。

 ああ、そうだ戦闘中に気になったことをアルに訊くとするか。


「アル。その銃は違う弾丸は撃てないのか?」

「……?」


 アルが無言で首を傾げている。どうやら質問の意味が解らないようだ。


「お前の銃から撃てるのはただの魔力弾、つまり魔力の塊をただ撃ち出してるだけだ。もっといろんなタイプの弾丸が撃てる様になれば戦略の幅が広がると思うんだけど、どうだ?」

「…………」


 俺の言葉にアルの表情はどこか思案顔だ。


「……俺もそれは考えていたんだが……」


 アル曰く色々試したが上手く行かなかったらしい。魔力の込める量を変えたり、魔術に近い方法も試したが変化しなかったそうだ。


「……ドワーフに頼もうにも人間の科学技術も混ざっていて下手に弄れなくてな……」

「なるほど……」


 そう言うことなら……


「母さんに頼んでみるか?」

「?」

「俺の母さんは魔科学の技術者なんだ。仕事でいろんな物を作っているから頼めばその銃改造して貰えると思うぞ」


 母さんの発明は魔術を利用した家電製品がメインだ。六種族が使い易い家電製品を作るのが目標らしい。問題があるとすれば人間界に移住している六種族は今のところ二十にも満たない程度の人数しかいないから全然普及していないということだろう。

 レムリアに住んでいる奴らは人間界で生活するのをよしとしていないものが多いから売り込むのは不可能だしな……。

 まあ、本人は趣味でやっているから気にしていないようだが。


「……頼めるか?」

「ああ、俺から頼んでおくよ」


 これで次にアルと戦う時には面白い戦いができそうだ。




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