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絆の魔法 ~SEVEN COLORS EFFECT~  作者: 岸寄空路
第一章 ダーク&ハイ
5/37

人間VS竜人

途中で視点変更があります。

※アルカの視点※


 グラウンドに目を向け俺――アルカイオ・ノクサートが見たのは人間が緑竜|(しかもドラゴン化済)の頭を踏みつぶし、悠々と歩いているところだった。

 普通なら驚くところだが、俺はむしろ「やっぱりか」と言った心境だ。

 なんせ緑竜を倒したのは俺がよく知る人間だったからだ。

 ……しかし、あの服装は戦闘服なのか?

 白いマントにフィンガーレスグローブって勇者をイメージしたにしてもあからさま過ぎだろ。

 ちなみに今は、すぐ近くにいる白虎となにか会話している。


「あいつめ……」


 竜二が何かを呟いている。まあ、竜族を倒した人間のことが気にならない訳がない。


「……竜二、あいつは――」


 何者なのか知っているので竜二に紹介しようとしたが竜二は窓枠に足を掛け――


「とう!」


 ……グラウンドに跳んで行った。


「…………」


 ポカンとしてしまったが取り敢えず竜二が何する気なのかを確認しなければな。

 うん? 竜二、あいつの方に向かっているけどどうする気だ?


 ドゴォォォォォォォン!!


「え……」

「えええええええええええええ!」


 俺が驚くより先にクラスメイトのリリウムが叫んだ。

 いや、そこまで驚くことではないと思うが竜二もハーフとは言え竜族。

 クレーターぐらい余裕で開けられると思うぞ。


 ……さて、現実逃避はやめよう。

 本当に驚いているのは、なぜ人間に攻撃したか、だ。

 竜族の常識で考えれば同族を人間にやられて竜族のプライドが傷つかないようにここで倒しておき、倒された緑竜は雑魚だったということにするだろうが……竜二に限ってそれはない。

 そもそもあいつは竜族のプライドなど持っていない。

 本人の話では十歳の時から人間の母親と人間界で暮らしている。

 そのため竜二本人曰く「価値観は人間と同じ」らしい。

 そんな竜二がなぜ人間に攻撃したのかさっぱりわからない。

 ……いや待てよ。確かあいつ(・・・)が言っていた通りだと――


 ワァアアアアア


 どうやら考え込んでいる間に状況が動いたらしい。うちのクラスの連中が歓声のようなものを上げている。

 俺も気になり窓から二人がどうなったか確認することにした。



***



※勇人の視点※


 俺――皆守勇人は構えてから竜人と対峙して動けずにいる。

 緊張感が漂う中、攻撃をするタイミングを窺っている状態だ。

 竜人も同じなのだろう構えたままこちらを見据えている。

 さて、先制すべきか、それとも相手の攻撃を待つか……。

 すると――


「フッ!」


 考え込んでいるうちに隙が出来てしまい竜人に先手を取られた!

 竜人は鋭い踏み込みにより一瞬で俺との距離を詰め、正拳突きのように拳を突き出す。

 俺は竜人の拳を右に上体を逸らしてかわし、すかさず剣を竜人の脇腹に叩き込むように振るう!


「!」


 しかし、俺の狙いに気付いた竜人は踏み込んだ勢いをそのままに前宙返りをするようにかわした!


「ちぃっ!」


 俺は慌てずに自分の体勢を整える。

 だが竜人は着地後、勢いよくこちらに振り返りながら拳を振るうってきた!

 俺はバックステップでかわそうとするが竜人の踏み込みで距離を詰められてかわしきれない!

 仕方なく剣で防御をするが、


「――ぐっ!」


 竜人のパワーは凄まじく、運良くダメージは無かったが俺を数メートル程押し飛ばされた。

 本当に手加減なしだな!

 吹っ飛ばされて地面を足で削ることになるとは思わなかったぞ!

 一息つきたいがそういうわけにもいかないだろうな……。

 竜人は再び俺との距離を詰め、今度は拳の乱打を行う。

 竜人は両手、俺は剣一本、相手の手数の多さにこのままでは対応しきれなくなり負ける!


「一回離れろ! 《グラヴィティ・チェンジ》!」

「!?」


 俺は重力の方向を変える魔術で無理矢理竜人を吹っ飛ばした。


「……ふう」


 竜人と距離を置いた俺は息を整え、ある準備をする。魔力を剣に込めて――


「《モード・ツイン》!」


 俺がそう唱えると剣が光りに包まれる。そして俺は光となったそれを二つに割った。

 やがて、光は収まりそして――


「――なっ!」


 竜人は驚き俺を見ている。いや、正確には俺の両手にある二つの剣を見て驚いていた。

 俺の腕ぐらいの長さの刀身となっている片刃の短剣を俺は今両手に逆手持ちしている。


「どうなっているんだ、それ?」


 冷静さを取り戻したが、気になって仕方がないのか竜人が質問してきた。

 特別に答えてやるとしよう。


「俺の武器は特注品なんだよ」

「……なるほど、魔科学で作ったものか」


 竜人の言うとおりだ。

 人間の科学と異世界の魔術を融合させた魔科学、その技術をふんだんに使い完成させたのがこの武器『ヴァリアブル・ウエポン』だ。

 正直、人間の俺がこの学園でやっていき、冒険者になるにはこれぐらいの装備を用意しなきゃ目標達成なんてできないからな。

 素材を集めるのに苦労した甲斐があった。


「おもしれえ、ならこっちも本気でいくぞ!」


 突進してきた竜人は再び拳の乱打をしてくる。

 俺はそれを両手の短剣で受け流しながら魔力を集中し魔術を使う準備を行う。

 絶大な強度を誇る竜鱗、攻撃はほぼ通らないが、だが関節などにある竜鱗は柔軟性が重視され強度が低い。

 魔術を使う隙を作るために俺は竜人の攻撃を受け流しながら手首を狙う。

 俺の狙いに気付いた竜人は拳を捻りそれを防ぐ。

 そのために俺が魔術の準備ができているのに竜人はすぐに気付けなかった。

 俺は竜人と再び距離を取るために顎に向かって逆風さかかぜに短剣を振った。

 竜人はそれを仰け反って避けた。その隙を利用し俺は後ろに跳び魔術を発動させた。


「《グラヴィティ・フォール》!」

「――ぬぅ!」


 準備ができた俺は竜人と距離をとり魔術を発動した。

 今俺が発動した魔術は一定範囲の重力を増加させ相手を地面に磔にする魔術だ。

 いくら身体能力が高い竜族の血を引く竜人でもこれなら――


「マジかよ……」


 竜人はグラヴィティ・フォールのなかで平然と立っている。

 ……ん? よく見たら竜鱗が淡く光っている。まさか。


「魔力で竜鱗を強化したんだよ」


 ニヤッと笑いながら竜人は事も無げに答える。

 どうやら俺が疑問に思ったことに気付いて教えてくれたようだ。

 ……しかし、そういうことか。

 たしかに竜鱗は特性として魔力を流すことで魔術に対する強力な鎧に変わる。

 それゆえに竜鱗は優秀な魔力の伝導体でもある。

 だがまさか重力系の魔術をも防ぐとは思わなかった。


 ズン! ズン!


 竜人が歩くたびに地面に足跡ができている。

 どうやら防いでいる訳ではなく魔力の鎧で体への負担を減らしているだけのようだ。

 しょうがない、そろそろ終わらせないといけないしな。次で決める。


「……チャ…………ト、……プル……ラー」


 俺はある呪文を誰にも聞こえないようにこっそり唱え、武器を剣に戻し突きの構えを取る。

 俺のそんな様子に竜人も気付いたのかすべての魔力を右腕に集め始めた。


「魔力で強化しなくても平気なのかよ?」

「この程度なら、どうということはないな」


 おいおい、自信無くなるぞ。

 頑張って修業したっていうのにこの程度とか……。


「これで終わらせる」


 というよりは、これで倒せなかったら本当に自信無くす。


「望むところだ」


 竜人は楽しそうに言った。

 気持ちは分かる。俺も楽しくて仕方がない。

 こんなにも――


「はぁあああああああああああ」

「うぉおおおおおおおおおおお」


 強くなってくれていた(・・・・・・・・)んだからな!


「《グラヴィティソード・バンカー》!!」

「《ドラグーン・マグナム》!!」


 剣の切っ先と竜人の拳がぶつかり合い魔力が火花のように散る。

 俺の魔力が紫、竜人は紅で傍から見れば綺麗に見えるかもしれない。

 俺がそんな場違いな事を考える余裕があるのは、勝利を確信しているからだ。


「……!?」


 竜人は拳がぶれていることに気付き動揺している。

 動揺するのも仕方がない、なにせ体が浮き始めているからな。


「ッ!」


 とうとう浮かび上がり拳が剣から離れる。

そして、竜人の腹が剣の軌道上に上がる。

 今だ! 俺は好機を見逃さず竜人の腹に向けて突撃した。

 喰らえ!


「うらあああああああああああ!」


 俺は竜人の腹を剣で思いっきり突いた。


「グフゥウッ!」


 息を一気に吐き出すような声を上げて竜人は数メートル吹っ飛んだ。

 最終的に地面を何回か転がり止まった。


「ふぅ」


 一息入れた俺は倒れている竜人の元に近づく。


「…………」


 周りを軽く見ると白虎を含めグラウンドにいる全員がこちらを見てポカンとしている。

 校舎にいる生徒も同じなのか静寂に包まれていた。

 少し笑える。

 そうやっているうちに竜人の元にたどり着く。


「…………」


 足元に転がっている竜人に向かって俺は――


「いつまで寝ている気だ? 竜二」


 そう問いかけた。



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