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絆の魔法 ~SEVEN COLORS EFFECT~  作者: 岸寄空路
第一章 ダーク&ハイ
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初日の挨拶(物理)

 校門を通った俺――皆守勇人が見たのはグラウンドで戦闘している獣人の女と竜族の男だった。

 片方は小柄な少女――白虎の獣人だ。

 特徴的な白い虎模様のネコ耳(トラ耳?)と尻尾、更に鋭い爪をもっている。

 ……まあ、猫の獣人の可能性もあるけど。

 もう一方の男はおそらく頭部に二本の角、腕や足に竜鱗を纏っていることから竜族、更に緑の髪から風属性の竜族――魔力の量から緑竜であると思われる。

 緑竜が白虎に話しかける。


「俺のパーティに入れ! 貴様ほどの実力者は俺のパーティにこそ相応しい!」

「絶対いやだ! パーティは自分で選ぶ!」


 緑竜の攻撃をかわしながら白虎が応える。

 どうやら、緑竜が白虎を自分のパーティに力尽くで入れようとしているようだ。


 転校する前に七集学園のルール(校則とはまた別)を確認したときに知ったことだが、この学園では他種族と交流するために各種族一人ずつのパーティを組むことになっている。

 異世界の住人は六つの種族に分けられそれぞれ、竜族、獣人種、妖精種、水棲種、精霊族、魔族となっており、そこに人間を加え七種族の人種? が存在することになっている。

 今、この学園に人間は俺一人なので実質六人パーティを組むことになっている。

 ちなみにパーティは三階級になる前に組めればいいらしい。


 白虎は素早さを生かして翻弄しているが、緑竜には竜族の持つ竜鱗によって攻撃が通らないでいる。何度も爪で引っ掻こうとしているがガキンッという音がして弾かれるだけだ。

 対して緑竜は白虎から攻撃を受けながら拳を振るっている。

 白虎の攻撃に脅威を感じていないのだろう、攻撃された時に振り払う程度で本気で攻撃する気がないようだ。

 その証拠にさっきから一歩も動いていない。

 このままではいずれ白虎の体力が切れ、負けてしまうだろう。

 今、俺の脳内では三つの選択肢が浮かんでいる。


 一、白虎を助ける。

 二、放っといて職員室に行く。

 三、見学する。


 一を選んだ場合、恐らく緑竜と戦うことになる(危険)。

 二は、特に目立つことなく学園生活が始まる(ただし、どちらにしても人間の時点で目立つことになるが)。

 三なら学園生のレベルがわかるだろう(直接戦った方が理解できるが)。

 ……一だな。どうせだから派手に行くか!

 え、初日だから自重するんじゃなかったかって?

 はて、ナンノコトヤラ。


「おっとその前に制服から戦闘服に着替えないと……」


 戦う気満々じゃねえかとツッコミ入れられるな、これ。

 ちなみに戦闘服は名前の通り戦うための服だ。種族や戦闘スタイルによって変わるが基本的に二通りの服装が有り鎧など防御重視なタイプ、軽装で動き易さ重視のタイプ。俺の戦闘服は後者だ。と言っても素材にこだわったからかなり丈夫だけど。

 あと着替えるのは簡単だ。学園から配布されている魔術道具を使えば一瞬で着替えられる。便利だよなー。

 俺は白いマントにフィンガーレスグローブと白を基調とした戦闘服を身に着け今なお戦い続けている二人の元に歩みを進めて行く。


「おい」

「ん……?」

「え……?」


 戦闘準備が出来た俺は戦っていた白虎と緑竜に声を掛けた。人間が現れたことがよっぽど予想外だったのか二人とも戦いの手を止めている。

 やがて緑竜が口を開く。


「……貴様、何者だ?」

「転校生だ」

「なに……?」


 俺の言葉が信じられないのか馬鹿を見るような眼で俺を見ている。


「ふん。……で、その転校生が何の用だ?」

「ちょっと、弱い者いじめをしている竜族に喧嘩を売りに来た」


 俺の言葉を聞き白虎が驚き俺に――


「何を考えているんですか! 今なら間に合います! 逃げてください!」


 と逃げる様に大声で怒鳴った。彼女なりに俺を助けようとしているのだろう。おそらく、俺のことは常識知らずのバカぐらいにしか思っていないのだろう。

 ――大丈夫、竜族の強さは知っている。


「竜族に喧嘩を売る愚か者の人間がいるとはな!」


 そう言うと緑竜は俺に突進するかのように向かってきた。

 それに対し俺は腰の剣に手を掛け――


「貴様ら人間は脆弱な生き物だということを――」


 思い知らせてやる――と緑竜が最後まで言い終わる前に俺は居合切りの要領で緑竜の腹に剣を叩き込んだ。


「グハァァァァァァ!」


 ドン! と小さい爆発音のような音が聞こえた瞬間、緑竜は予想外の衝撃に悲鳴を上げながら吹っ飛ばされた。


「……グゥッ、馬鹿な竜鱗で防いだはずだ! 貴様いったい何をした!」

「おお、今の攻撃を食らって立てるのか」


 緑竜は竜族の中では比較的防御力の低いタイプと聞いたが、さすが竜族だ。

 七種族一の頑丈さは伊達じゃなかったか。


「答えろ! どんな方法を使って我にダメージを与えた!」

「竜鱗の内側に魔力の衝撃波を起こしただけだ」


 剣が直撃した瞬間、竜鱗越しに剣から緑竜の腹に――正確には竜鱗と腹の間に魔力を流し内側から破裂させた。奴からすれば腹を思いっきり殴られたのと同じ衝撃を食らったに違いない。


「馬鹿な……! あの一瞬でそんなことが――」

「人間と思って油断し過ぎだ。攻撃を食らっても平気だと思って一切防御をせずにいるから対処も簡単だったぞ」

「このぉ……、調子に乗るなぁあああああ!」


 逆上し、また突進してくる緑竜。今度はドラゴン化している。

 ドラゴン化は竜族のみ使える能力であり文字通り、おとぎ話などに出てくる竜――ドラゴンに変身する能力だ。

 身体能力は人型の時より格段に上で、大きさも人一人を一口で食べれそうなサイズになっている。

 ちなみにこいつは腕から翼が生えているワイバーンタイプだ。空中戦が得意なタイプだ。

 更に緑竜は竜族の中でもスピードの速いタイプだが、あくまで竜族の中で――だ。


「喰らえぇぇえええええええええ!!」

「――フッ!」


 緑竜が拳を振るう――瞬間


「――!?」


 緑竜は俺を見失っていた。

 驚いた緑竜は立ち止まり周りをキョロキョロし始める。


「ど、どこに消えた!?」


 ――俺は消えたわけではなく、高速で移動しただけだ。そして俺は今――


「――あ」


 白虎が声をあげたのに反応した緑竜は白虎の方を見、その視線の先をたどる。


「……!?」


 白虎の視線の意味に気付いた緑竜はすぐにブレスを吐こうとするが――もう遅い。


「……終わりだ」


 ドゴーン!!


 緑竜の頭をキックするように上から押しつぶした。

 緑竜の頭は地面にめり込んでいて口元は完全に埋まっている。

 鼻は出ているので窒息することはないだろう。

 もちろん緑竜は生きている――気絶しているだけだ。その光景に白虎は呆然としていた。


「……なんで、ただのキックで竜族が倒れるわけが――」

「ただのキックじゃないからな」


 俺は身体強化魔術を使い緑竜の攻撃をバックステップで避けた俺は強化されている身体能力を利用し緑竜の遥か頭上に跳んだ。

 そして、自身に重力操作系魔術の一つ、重量増加魔術ウエイト・ゲインを使い体重を一時的に十倍ぐらいにした。

 更にそこから飛行魔術を使い加速し、緑竜の頭に向かって落下した。

 そして竜鱗は特性上外部からの攻撃をすべて防ぐ、そのため怪我をすることはない――だが、衝撃までは防げない。

 だいたい六百キロ近くなった人間が頭上から高速で降ってきたんだ、竜鱗越しとはいえその衝撃は凄まじかった筈だ。


「ちゃんと鍛えていれば回避もできただろうに……」


 緑竜は竜族の中でもスピード――特に俊敏さが特徴だ。

 竜鱗に頼らず回避に専念していれば俺の最後の攻撃も回避できた筈だ。

 竜鱗に頼り切って自分の長所を活かせなかったのが緑竜の敗因だ。


「こんなものなのかな……」


 七集学園の戦士――特に強い部類の竜族がこれでは――


「!?」


 考え事をしていた俺は殺気を感じ反射的に回避した!


 ドゴォォォォォォォン!!


「――アブね!」


 さっきまで俺がいた場所には直径三メートルはあるクレーターができていた――殺す気か!

 その中心には男が一人立っていた。


「…………」


 男は頭に角、髪は紅く、右腕には紅い竜鱗。

 こいつも竜族だがおそらくハーフだ、角が短い。

 竜族の角はだいたい十五~二十センチぐらいの長さだがハーフのように竜族の血が薄いと角は短く十センチぐらいになる。


「……次は俺の相手をして貰おうか」


 竜はそう言うと竜鱗を両腕両足に纏い俺に向かって構えを取る。

 雰囲気から察するに戦いたくて仕方がないようだ――


「……いいぜ。戦おう」


 思わずニヤリと笑ってしまった。――こいつは強い、だからこそ戦ってみたい!

 俺は鞘から剣を抜きだし竜人と対峙するように構えを取る。


 ――面白くなりそうだ。



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