ある竜人の始まり
注意:『ある人間の始まり』とは違うキャラの視点になります。
「…………」
「――竜二」
「…………」
「おい、竜二」
「……おお、なんだよ、アルカ」
「……あいさつしても返事しないから声を掛けていたんだよ」
「そっか、わりい」
そう言ってオレ――紅場竜二は頬を掻きながらクラスメイトのアルカイオ(通称アルカ)に謝罪する。
「ボーっとしていたが一体どうした?」
「いや、二階級生になっちまったなあ~って思って」
「……そうだな」
七集学園は、五階級制となっていて実力のある者だけが進級できる。
俺も竜族の血を引いているから(人間とのハーフだが……)身体能力は高い方だ。
まあ、クラスは低いけどな……。
七集学園は実力によってクラス分けされ一番上からS、A、B、C、D、Eに分けられる。
俺が居るのはEクラス、一番下だ。
ちなみにアルカも同じクラスだが、こいつはコウモリの獣人であり身体能力も高く決して弱くはないはずだが――
「…………」
「ん? どうしたアルカ」
「……お前、本当はもっと上に行けるんじゃないか?」
唐突にアルカが疑問を投げかけてきた。
「なんだ? 急に」
「……前々から気になっていたんだ。お前、本当は強いだろ」
「どうして本気を出さない」とアルカに聞かれ俺は――
「やる気が出ないんだよ」
思わず本音で答えてしまった。確かに俺は進級できる程度にしか実力を出していない。
ある理由があってやる気が出ないからだ。……しかし、なんでアルカは気づいたんだ?
「……竜二もか?」
竜二も?
「……どういう意味だ?」
疑問に思いアルカに質問するが
「それは――」
「おはよー」
アルカが答えようとしたその時、今登校してきたのかピンク色のボブカットが特徴的なドワーフの少女、マナに挨拶されアルカは返答を中断した。
「おはよう」
「おはよー。遅かったな、また徹夜か?」
若干、茶化すようにマナに挨拶した。
ちなみに本来ドワーフは身体的特徴として、見た目は小柄な人間のような種族であり高くても百四十センチ程度だ。
ただ、マナはその中でも珍しく身長百六十センチとドワーフにおいて規格外の身長である。
ハーフでもないのにこの身長――突然変異のようなものらしい……。
あ、あとスタイルも規格外だったりする。詳しく話す気はない。
まあ、あえて言うならEと言っておこう。
「なんか今、不穏な気配を感じたんだけど……」
「気のせいだ」
「――って、そんな話がしたいんじゃなくて!」
「……でどうしたんだ? 新しい武器でも完成したのか?」
アルカが無表情でマナに聞いた。
マナもそうだがドワーフは武器づくりが好きな種族であり、特にマナは変わった武器を作成――いや、発明と言えるほど変わったギミックを取り付けたものを造っている。
「違う、違う。さっき先生達の話を盗み聞きしたんだけど――」
「盗み聞きするなよ!」
反射的にツッコミをいれてしまった。
「まあまあ、それでね、なんと転校生が来るんだって!」
その言葉にクラスメイト達がざわつく。
「転校生が?」「この学校に?」「種族は何だろ?」
七集学園はその特殊性から転校生は居ない。
人間界――地球の文化に興味のある異世界の住人はこの学園に最初から入学しているからだ。
なにより、今は進級したばかりの四月だ。
この時期の転校生とは二階級以上に入学するということだ。
普通はこの学園に入学するときは一階級から始める。
実力を認められれば話は別だが……。
「……種族は?」
みんなが気になっていることをアルカが代わりに聞いた。
「なんと……、人間です!」
なぜか、どこか嬉しそうにマナは言った。
かくいう俺も、その事実を知り疑問と期待が湧いた。
他のクラスメイト達は驚愕の表情を浮かべていたが、なぜかアルカと、クラスメイトであるレーミアとリリウムの二人もどこか期待している表情になっている。
七集学園は、異世界の住人と人間の七つの種族によって創設された学園だが、この学園に人間の生徒は居ない。
当然と言えば当然だが普通の人間では異世界の住人達と渡り合える訳がなく、わざわざ好んで入学する人間は居ない。
それなのに、転校してくる人間は……、思い当たるのは俺の知り合いに一人――
ドゴーン!!
突然、グラウンドから爆音が響いてきて意識をそちらに向ける。
「なんだ!?」
他のクラスメイト達も窓からグラウンドの方を見る。
この学園では小競り合いは日常茶飯事だが魔法や竜族の“ドラゴン化”やブレスのような被害が大きくなるものは先生が審判をしている時でなければ使用してはいけないことになっている。
グラウンドで爆音が響いたということはだれかが正式な決闘や試合を行っているか、ルールを破ったかのどちらかである。
俺も何が起きたか確認するために窓からグラウンドを確認する。
そこで俺が――俺達が見たのは――