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5話


幸いコンビニでは、あのお客様とは全く目を合わす事も、恐らく気付かれる事もなく、私は普通にほうじ茶とクリームあんみつをゲットした。…たまにだけど、売り切れてるのか仕入れていないのか分からないけど、商品棚にない事があるんだよね。良かった、手に入って。


まぁ、その後は、そのまま家に帰ってご飯食べた後に、ほうじ茶とクリームあんみつを食べたってだけなんだけど。


「はぁ…。」


昨日のダメージは、コンビニの美味しいクリームあんみつの、その優しい甘さだけではどうにもならない様で…現に今日、学校に来ている今でも引きずっている…バイト先までグダグダ悩みそうな勢いだな、これは。


「どうしたの、真白。やけに重々しい溜め息だけど。」


「早織…いや、ちょっと昨日、バイトでしくじった…と言うか、やらかしちゃったんだよね。」


「えぇ、珍しい。真白、結構長いことあの喫茶店でバイトをやっているからか、もうすっかりベテラン…とまではいかないにしても、慣れた風ではあったのに。」


言われて気付いたけど、多分慣れてきたからこその気持ちの緩み…だと思う。いかなる仕事においても、慢心はいけないなぁ。


「まぁ、何事も慣れてきた頃が危ない…その良い教訓になったよ。」


「そっかぁ…じゃあ、久しぶりに真白が働いている所に突入しちゃおうかな?早織さんの抜き打ちチェック!!」


「抜き打ちなのに、今言ったら意味なくないですか〜?」


早織が気になったのか、私と席が割りと近かったので、たまたま近くを通りかかったのかは分からないが…雲居くんが、私達の会話に口を挟んできた。…いやいや、雲居くん。分かっていても、それは言わないお約束だよ。


「…はっ!?あっ、えっと…今日中には行くけど…いつ、どのタイミングで行くかは、言わないからね!!」


「うん、分かった。今日もバイトのシフトはいってるから、楽しみに待ってるよ。」


案の定慌て始めた早織を微笑ましく思いながら、頭を撫でたい衝動をグッと堪える。同性とはいえ、同い年なのに年上ぶるのは、された側はあまり良いものじゃないと思うから…ただでさえ、言葉で年上ぶってるし。


「南雲と川波、とても同い年には見えないな…川波、南雲の落ち着きを見習えよ。」


これ、普通に雲居くんには私を傷付ける気はなかったんでしょうけど…日々自分が老けていると思っている身からすれば…凄く、傷付きました。…私、意図して落ち着いているのではないんですけどね…。


「ま、真白は真白、私には私の良さがあるから、雲居には関係なし!!」


「吃るって事は…一応自覚はしていたんだ?」


「くっ…に、ニヤニヤするなぁっ!!」


「まぁ、言い得て妙っていうか…川波には川波の良さがあるって言うのは、俺も賛成だけどね。」


「そんなニヤニヤ顔で言われても、説得力ないから!!」


雲居くんが、からかいながらも本音を言い…早織が分かってるんだから分かってないんだか分からないけど、雲居くんに言い返す…目の前で繰り広げられるこの光景を見ていたら、何かこう…あ〜、何だろう、この気持ち…何て言葉で表現したら良いんだろうか、これは。


本は好きだから、人並みには良く読んでいる方だけど…こういう時に適切な、この状況を言い表す言葉は…生憎、今すぐには思い浮かばなかった。思い浮かばないと言うか、言葉が出てこないと言うか…。


「リア充爆発しろ…。」


ウンウン考えていたら、不意にどこかからボソリと聞こえてきた言葉…良く分からなかったけど、何となくボンヤリとした意味が分かったので…ああ多分、この光景にはこの言葉が適切なんだなぁ…って思った。


「ねぇ、真白!!雲居酷くない!?確かに私は子供っぽいし、落ち着きないし、ちょっとお節介かもしれないけどさ…こんなに言わなくたって!!」


「あ〜、うん。それって裏を返せば、可愛くて、明るくて、面倒見が良い…ってならないかな?雲居くんは照れ屋だから、捻くれた表現してるだけで。」


「ちょっ、南雲!?」


自分でも、どことなく精神的に老けている自覚があるからか…さっきから目の前で繰り広げられる青春の一ページみたいな光景が眩しすぎて…それで目が眩んだのか、思わず本心をそのまま言ってしまった。


「南雲、おまっ!?なん…何でそれ、今!!」


「ごめん、雲居くん…つい本音が。」


「つい!?しかも本音!?」


だって何か…相性は良いと思うのに、じれったいんだもの君達…ちょっと踏み出せば、良い感じになるだろうに。…と、本当にただのウッカリなんだけど、今更なので開き直ってみる。


「えっ!?…雲居が、私を…か、かわっ!?な、何の冗談言ってるのかな真白はっ!!」


「冗談かどうかは、雲居くんに聞いてみたらどうかな。…ただ、私の見解が合っているにしろ間違っているにしろ…今は聞かない方が良いんじゃないかな。目立ってるし。」


私に言われて、ハッと二人が辺りを見回す。…うん、何か…私にも分かるぐらいの生温かい目やら、嫉妬の目を向けられているね、お二人さん。


「……日時は、メールで伝える。」


「う、うん。分かった。」


はぁ…さっきまで傷心していたというのに、この二人を見ていたら、それがすっかりどうでも良くなってしまったなぁ。…というか雲居くんと早織って、アドレス交換してたんだ。




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