不穏な噂
1話から少し修正を入れました。
お手数ですが確認のほど、よろしくお願いします。
晴「…ってて」
グレフとの試合を終え、会長と少し話してから家に帰ったんだが……。
体中が痛い。あんなに動いたのは久しぶりだからな…。朝早く起きて運動でもしようかな。
とか考えながらソファでゴロゴロしていた。今は晩御飯待ち。
雪「ややー。何かお疲れだね」
晴「久しぶりに動いたからな…。日頃の運動不足が祟ったか…?」
雪「早速問題でも起こしたの?」
晴「いや…、大丈夫。そんなんじゃない」
雪「ならいいけど…」
今日戦ってみてわかったが俺の能力……正確にはウイルスの力か。その力はまだ発揮しきれていないだろう。俺の体がついていけていないだけで、やろうと思えば今よりもっと速く動ける。と思う。
春江「ご飯できたよー」
雪「はーい」
まぁ… 考えるのは後でいいや。
♢
翌朝、教室に入るとクラスの連中が押し寄せてきた。
どうやら昨日の事はすでに伝わっているらしい。ただおかしいのが、俺がセコい手を使って勝ったということ。いやまぁ確かにズルはしたけど…。聞けば、俺が戦う前に変なクスリ仕込んだとか脅迫したとか…。
クラスのヤツらはなんやかんやで俺のことを知っているから信じてくれてるようだが…。
京司「よっ、学校一の嫌われ者さん」
晴「殴りあいたいなら素直に言ってくれ。察しは悪い方なんだ」
京司「冗談だって。でもどうすんだよ。お前のことを多少知ってる俺たちはともかく…魔法科からしたらお前完全に悪役じゃねぇか」
それに相手が相手だ。フィグネリア・グレフの名はこの学院では有名らしく、彼女名を知らないものはいないという。俺は知らんかったが。
晴「まぁ……いいだろ別に。そもそも魔法科と普通科なんて大した接点はない。そのうち風化する」
京司「彼女には親衛隊までいるらしいぜ…」
晴「……できるだけ気をつける」
と、ここで始業のチャイムが鳴った。
…また億劫な1日の始まりだ。……あぁ、ダルい。
♢
雪「やほー、晴いるー?」
昼休み、4限終了後に雪が教室に来た。
声を出すのが面倒だったのでその場で雪の方を見て手を挙げる。気づいたようだ。
晴「何か用か」
雪「用も何も、今晴すっごい噂になってるよ?」
晴「みたいだな。下手すると怪我しそうな勢いだ」
雪「…どうするのさ。このままだと晴、ホントに問題になっちゃうよ?」
雪が珍しく心配そうな顔を見せる。コイツがこういう顔を見せる時は本当に心配している時だ。
あまり心配させないようにするため、できるだけ力強い笑みを浮かべ、雪の頭に手を置いた。
雪「あう」
晴「大丈夫だ。問題なら今までにも何回かやらかしてる。…それに今回のは解決しようと思えばできる」
雪「うん……。でも、何かあったら言ってね?絶対だよ!」
晴「わかってる」
それだけ言うと雪はまたいつもの笑顔で帰っていった。
弁当を食べようと教室の入り口から中に戻ろうとすると、クラス中の視線を集めてた。
女生徒1「晴とセッちゃんってホント仲良いよね」
女生徒2「双子ってそういうもんなのかな…」
まぁ…兄妹のように年齢差があるわけじゃないから友達みたいな感覚だな。
ちなみにセッちゃんとは雪のことだ。ああいう性格だからいろんなヤツに好かれている。これは女子の呼び方で男子は気恥ずかしさからかユキと呼んでる。字を見ただけのヤツならまぁユキと読むだろう。本当はセツ。
男子生徒1「でも、晴とユキってホント似てるよな」
男子生徒2「ああ… 俺、晴でもイけるかも……」
……聞かなかったことにしよう。
席に戻ると前の席の支倉がすでに弁当を広げていた。俺も自分の席に座り、弁当を取り出す。
京司「で、晴。放課後はどうするんだ?」
晴「…悩んでる。俺がいると会長にも風評被害がいくかもしれないからな…」
京司「会長は来てくれって言うと思うけどな。お前が会長補佐になってんのもほとんどの学院生は知ってるし」
晴「どっちにしろ迷惑はかかってる、か……。じゃあ、行かないとな…」
弁当を平らげ、午後の授業の5、6限は両方寝た。
♢
放課後、支倉と一緒に生徒会室へ向かう。道中、いろいろ陰から言われて少しショックだった。覚悟はしてるつもりだったんだけどな。いざ言われると心にクる。
生徒会室の扉を開けると、すでに会長がいた。雪と千加はまだ来てないようだ。
蓮華「聞きましたよ六興くん。随分な言われようですね」
晴「聞きましたも何もあんた見てたろ…」
蓮華「ふふ。それはさておき、今の状況は極めてよろしくないです」
晴「グレフ本人から言ってもらうのは無理なのか?」
蓮華「少なくとも今日は無理ですね… グレフさん、今日欠席してますから」
晴「…明日まで待つか」
蓮華「それがいいですね。ところで六興くん。昨日、グレフさんと戦ってどうでした?」
晴「どうでしたって言われてもな…」
蓮華「すみません。質問が抽象的過ぎましたね。…あの時、あなたはまだ余裕がありそうな感じでした。アレは本気ではなかったのですか?」
……会長にもそう見えてたのか。実際、余裕はあったけどなかった。目では見切れても、体の反応が追いつかない。俺がウイルスの能力を発揮し切れていない証拠だ。
晴「……微妙だな。多分日頃の運動不足が出てたんだろう。まだイケる気はするんだが、体力が持たない。正直、昨日はかなりギリギリだった」
蓮華「そうですか…。なら、当面の目標はできましたね。六興くんはしばらく体を鍛えましょう。主に体力面を」
晴「そうだな…。仕事が無い時はそうさせてもらう」
蓮華「はい」
とは言っても、何か揉め事があれば真っ先に風紀委員が飛んでいくから、実質俺に仕事が回ってくることは少ない。一週間経った今でも来ないのだから。いや、問題事がないだけか。
と、そこで雪と千加が入ってきた。
雪「うらー!」
千加「えっと… もしかして、私たち最後でしたか……?」
京司「遅れてる訳じゃないから気にしなくていいよ」
3人が話している中、いつにまにか出入り口にたっていた会長がチョイチョイと手招きをしてきたので会長の方に行く。
生徒会室を出て、少し離れた廊下で会長は話しだした。
蓮華「ずっと気になっていた事があるんですが…」
晴「なんだ?」
蓮華「六興くんのあの動き、普通に見れば身体能力の高い人と見えるかもしれませんが、私には人間とは思えませんでした。……言いたくないのなら結構ですが… 何かあるなら話してもらえませんか?」
驚いた。
まさかあんな程度の動きで見破られていたなんて。見る人間が見ればわかるのだろうか…。他に気づかれてなければいいが。
晴「いや、話しておこう。自分の側にいる人間のことだ。知っておいた方がいい」
そして俺は会長に過去の話を始めた。
ご一読ありがとうございました。
更新はいつできるかわかりませんが今週中にはするつもりです。
読んでいただけると幸いです。