一戦
剣道場に向かう途中、職員室で暇そうにしていた担任の峰崎に魔法使用の承認を得る。
剣道場は会議室からそう遠くなく3分ほどの距離。その間一切の会話なかった。
晴「始めよう」
グレフ「防具ぐらいは着けても構わんぞ?」
挑発といわんばかりの態度。
剣道の防具は剣道で打ち合うからこそ意味がある。ただの喧嘩に使っても邪魔なだけだ。
そう思いつつ、グレフとは反対の所定の位置に立つ。
晴「必要ない」
グレフ「大した自信だな。……なら、始めるぞ」
グレフが魔術式を書いた紙を竹刀に貼り付ける。
その瞬間、竹刀だったはずの物は長い槍になっていた。
グレフ「一気に行く!」
グレフが槍を構えて突進してくる。それを躱し蹴りを一発入れた。
が、蹴りは防御されたようだ。槍で蹴りを受けたグレフが後ろへと押されていた。
グレフ「初撃で決めるつもりだったんだがな……。相応の実力はあるらしい」
晴「遠慮してないで使えよ、魔法。魔法に勝たなきゃ意味がない」
この喧嘩の目的は生身で魔法師に勝つこと。
魔法を使っていないグレフに勝っても、それは俺の力の証明にはlならない。
グレフ「いいだろう、ならば見せてやる。グレフ家の魔術をな…」
そう言って数枚の紙を取り出し槍に貼り付ける。そして槍から赤や青といった色のオーラが出てきた。
グレフ「いくぞ…」
グレフが槍を俺へと向ける。そして次の瞬間、数本の細い「何か」がすごい速さで向かってきた。
……だが、超人的な動体視力と反応速度を活かし、それを回避。そのまま地面を蹴って一気にグレフまで接近する。もちろん、脚力も並外れているため一秒とかからずに6m近い距離を詰められる。
グレフ「ッ!?」
さすがにこれには驚いたようで、グレフに一瞬の隙ができた。
そこに一発拳を入れる。さすがにこれには反応できなかったようで、この一発は見事直撃した。
グレフ「が…は……ッ」
よし。まずは一発。
このままもう一発…… と思ったが、槍に纏わり付いていた細い何かがまた襲ってきた。
急いで距離をとるため、後ろに飛ぶ。
グレフ「なかなか効いたぞ…」
晴「それは良かった」
グレフ「最後の魔術だ…。これで……!」
グレフが最後の魔術式を発動させる。その瞬間グレフの槍には黒い霧を纏った。
蓮華「あれは…」
一瞬会長の方に目がいった。そして次にグレフへと集中した時、すでに視界から消えていた。
けど… なんとなく分かる。………後ろだ。
考えるのとほぼ同時に体が動き、後ろから来ていたグレフの槍をギリギリで……いやちょっとカスったけど回避。
そして最後に一発、グレフのこめかみへと拳を入れる。
グレフはそのまま地面へと叩きつけられ、立つことはなかった。
蓮華「終了。勝者、六興晴」
会長が告げる。
周囲は唖然としていた。まぁ当然だろう。ヴィンハイムの風紀委員の委員長というのは、魔法科の中でも特に優秀な生徒にのみ就任権がある。
つまり、この女は魔法科の優等生というわけで、ただの生徒が、ましてや普通科の生徒が勝てるわけない。
蓮華「六興くん。勝ったことはスゴいのですが…… 女性の顔を殴るのはどうかと思います」
晴「仕方なかった」
それにこめかみだから痣になったとしても髪で隠せるだろう。
グレフ「……おい」
後ろを見るとグレフはフラフラになりながらも立っていた。槍はもとの竹刀に戻っている。
グレフ「お前……名前は…?」
晴「六興晴」
グレフ「私はフィグネリア・グレフ…。……先ほどの無礼を詫びよう…貴様の実力、見事だった」
晴「それはどうも。……これで文句ないな?」
グレフ「ああ…。…何か困ったら風紀委員に来い。力になろう…」
晴「わかった。……わかったからもう休め」
グレフ「そう…する……」
それだけ行ってグレフはまた倒れた。
そしてようやく動きだした数人の観客がグレフの元へ駆け寄る。
蓮華「後は任せましょう。……戻りましょうか」
晴「ん…。了解」
これで会長も多少は安心してくれるんじゃないかな…。
そんなことを考えながら、会長の横を歩いた。
ご一読ありがとうございました。
5/13(火)更新予定 よろしくお願いします