一通の手紙
「ごめんね、約束守れなくて。」
卑怯だと思った。
こんな紙切れ一枚残して、何も言わずに目の前からいなくなるなんて。
許せない。
3時間。
雪の降る中、3時間待ったんだ。
君が来てくれることを信じて。
あの時の君の笑顔を信じて。
好きだったから。
大好きだったから。
失いたくなかったから。
君の笑顔を・・・・・・・。
どうして言ってくれなかったんだろう。
僕の事が嫌いだったのだろうか。
それならそう言ってほしかった。
どれだけ悩んだと思ってるの?
どれだけ苦しんだと思ってるの?
待っている間、どれだけ君の事を思っていたと思うの?
知っていたよ。
君が他の男とよく遊んでいる事は。
でも、その事が言えなかった。
言ってしまったら、もう君には会えないと思ったから。
悩んだけど、
苦しんだけど、
ずっと耐えてきた。
ずっと知らないふりをした。
クリスマスも、君の誕生日も、僕の誕生日も、一緒に過ごした事はなかったね。
忙しいだとか、
友達に祝ってもらうだとか、
バイトが入ってるだとか、
いろんな理由を見つけてはパズルのピースのように、言い訳をはめ込んでいたね。
正直、辛かったよ。
そういえば、一度だけ僕の我侭を聞いてくれたね。
遊園地に行った時、僕は初めて好きな女の子と観覧車に乗った。
もちろん君の事さ。
あの狭い空間に君と居れるだけで満足だった。
外の景色も何もかも、僕には関係なかった。
これが最後のデート。
そう決めていたから、この最後の時間を楽しもうと決心した。
だから、我侭を言った。
半ば強引に観覧車に乗せた。
ごめんね。。。。
ある日、君から電話がかかってきた。
一緒にいて欲しい、と。
微かに君が泣いているのがわかった。
僕は気づくと家を飛び出していた。
携帯電話を握り締めて。
待っていて、と。
結局、僕は君に振り回されていた。
でも、そうやってる時間が一番楽しかった。
君がそばに居てくれたから。
僕は頑張っていた。
だけど、君が携帯の画面を見るたびに悲しくなった。
彼氏から連絡があれば、僕に用はない。
僕は忠誠を誓う犬のように。君に尽くしてきた。
君が欲しいと言った物、
君が行きたいと言った場所、
全部、僕はプレゼントしてきた。
でも、やっぱり。
僕じゃ駄目だったね。
「好きだよ、悠君。」
握り締めた紙の裏に書かれた一言。
こんな嘘まで付かせてしまうぐらい、僕は君に迷惑をかけていたんだね。
ごめんね。
許してください。
もっと早く、君の前から居なくなっていれば、君に迷惑をかける事もなかったのに。
僕が傷つく事だって無かったのに。
約束なんてするんじゃなかった。
来てくれないのは知っていた。
クリスマスだから。
やっぱり、一番好きな人と居たいはずだから。
それでも3時間待っていた僕はただの馬鹿です。
悔しくて涙が一粒。
悲しくて涙が一粒。
苦しくて涙が一粒。
虚しくて涙が一粒。
どんなに泣いても、君はやってこないとわかっているのに。
でも、
それでも、
もう一度だけ、君の笑顔を見たかった。
「ねぇ、悠君?」
「何?」
「私のこと好き?」
「好きだよ、どうして?」
「ううん、何でもないの、ただ聞きたかっただけ。」
君は電話でも僕の事を呼び出す度に同じ会話を繰り返したよね。
僕じゃ、彼氏になれませんか?
僕じゃ、君の事を幸せにできませんか?
僕じゃ、君に迷惑をかけるだけですか?
「好きです。」
「私も好きだよ、悠君。」
こんな甘い恋はありえるはずか無かったんだ。
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