ドラえもん哲学 セワシ君の謎 或いはお前のものは俺のもの地獄
セワシ君の謎、について迫りたい。
一応説明すると。
セワシ君はのび太の孫の孫。玄孫だ。
100年先の子孫に当たる。
そのお年玉は僅か50円。
子守りロボットもアウトレット価格だった、ドラえもんしか買えない家庭事情。
※ちなみにドラえもんの販売価格は、公式設定で20万円
その原因は、のび太の残した借金だという。
1978年、大学入試落第
1988年、就職できないので自分の会社を起業
1989年、ジャイ子と結婚
1993年、花火が原因で会社丸焼け
1995年、会社が破産。100年先まで残る借金を負う
そこでセワシは考えた。
野比一族の衰退は、のび太の借金から始まった。
ここに介入すれば未来は改善される、と。
そこでドラえもんを送り込み、過去を改善し。
しずかちゃんと結婚できる様にできれば。
一族衰退の原因を、遠ざける事ができる筈だ。
……知ってる人には今更かもしれないが。
ドラえもんの物語の始まりはこうだ。
ちなみに過去を改変したりして。
子孫であるセワシ君が消えるのではないか。
という、ある種当然の指摘に対して。
途中でバスを使おうが電車を使おうが、結局目的地には到着できる。
だから過去がどう変わろうと、自分は結局生まれる。
という旨の答えを返している。
※目的地を大阪で例えた為、大阪理論と俗に呼ばれる
色々と腑に落ちないのではないか。
そんな借金なら、自己破産しなかったのか、とか。
子孫は相続放棄しなかったのか、とか。
そもそも100年先まで続く借金を負った家が、よく100年先まで続いたな、とか。
ジャイ子の子孫としずかの子孫では、遺伝学的には完全な別人ではないか、とか。
起業からの5年は、まるで別人のようではないか、とか。
その割に、フリーター期間の長さと、花火で会社を燃やしたのは、のび太の従来のイメージ通りだな、とか。
熱心なドラえもんファンには。
のび太はダメ人間じゃない、という通説がある。
根拠はこの起業。
賃貸で花火をしてはいけない、なんて。
そんな良識ぐらいのび太にもあると信じたら。
自社ビルだったんじゃないか。
だとしたらむしろ成功者。
時代の寵児なんじゃないか。
うんぬんかんぬん。
正直、それはないと思ってる。
そんな人間が事務所を花火で全焼させたりしない。
でも自分の会社を起業したらしい。
他にもまだまだ謎が残る。
自己破産も相続放棄も、あののび太の子孫なので、思い浮かばなかったのかもしれない。
けど普通、周りの人が見かねて教えてくれるだろう、まっとうに生きていれば。
あとそもそも、100年先まで残る借金って事は。
そんな巨額の借金持ちと、好き好んで結婚するもの好きが、4代に渡って存在した事になる。
それこそ100年先どころか、そこが末代になって、一族は終わりになるのが普通だろう。
一体この時期に何があれば、そんな未来が出来上がるのか。
本気で考えてみた結果、実に恐ろしいシナリオが出来上がった。
’78 大学受験失敗。フリーター時代
この時期のび太は食いつなぐ為。
知人の伝を頼って、手伝いのような事をしていた、と想定している。
それも起業翌年に、ジャイ子と結婚する事から。
剛田の親族(仮にA)の元で働いていたのではないか、と睨んでいる。
そして、80年代後半になると。
世の中は不動産バブルの真っ只中となる。
Aはいわゆる土地転がしをしていたんだろう。
前提としてのび太は、法令等をよく知らないまま。
Aに言われたとおりに、仕事をしていたんだと思う。
’88 自分の会社を持つ。社長時代
バブルといえば、土地の際限ない高騰だ。
練馬の郊外の土地でも、30坪も持っていれば。
一夜にして地価が上がる時代。
土地転がしをしていたAは事業好調。
そこで横行したのが、会社の設立。
節税目的で、利益分散や取引先として利用する為。
名前だけでもいいから貸してくれ、なんて言葉が飛び交った。
そんな訳でのび太にも、社長になる日がやってきた。
おそらくろくに従業員もいない、名ばかりの社長。
実態はAの部下・1部門のまま、独立・暖簾分け・子会社化した。
※原作のコマには、手前に写るのび太とパパの他にも9人いるが全て招待客の想定。起業したばかりののび太が、そんな人数雇う規模の事業をすると思えない為
事業内容はAの指示通りにハンコを押す事。
それでも銀行は歓待してくれるので、ここがのび太の人生の絶頂だった事だろう。
この時代の典型的な土地転がしといえば。
適当な土地を入手したら、とりあえず建物を建てる。
何故なら土地神話隆盛の当時。
土地と建物がセットなら余裕で。
フルローン(100%)とか。
オーバーローン(120%↑)とか。
過剰な融資が引っ張れたから。
上に乗ってるハコ自体はどうでもいいので。
プレハブ倉庫みたいなのとか。
一階が事務所兼倉庫で、2階が事務所とか。
それでもってALC造とか、木造モルタル造とか。
安普請の建物を建てるのがセオリーだった。
※原作のコマでは、消防士が高い角度で放水しているので、高い建物の立派な事務所だったのではないか、という説もある。そんな立派な建物なら、市販品の花火で全焼する訳がないので、筆者は否定派
’93 会社丸焼け記念。転落時代
そしてご存知、のび太の凶行。
事務所全焼花火のお時間。
2つ致命的な事があった。
致命的な事の1つは時期。
高騰しすぎた土地は、遂に買い手がつかなくなった。
膨れに膨れたバブルは、この時期既に崩壊している。
花火による全焼で、物的担保の消失に加え。
土地暴落による含み損と、担保割れによって不良債権化。
こうなれば銀行は、貸し剥がしを行う。
いわゆる、晴れの日に傘を貸して、雨の日に取り上げる、だ。
銀行だって営利組織なので、当然といえるだろう。
何せこの融資とは、預金者から預かった資金の運用なのだから。
預金者だって、資産運用失敗したから君の預金パーね、なんて言葉は聞きたくないだろう。
大切な預金を守る為にも、見込みのない事業には返済を求める。
のび太が返せと言われたローンは、神話時代の額だ。
1億前後、もしかしたら2億まで届いたかもしれない。
建物は安普請なので、1000万円ぐらいだとは思う。
つまりのび太は、一気に1〜2億返せ、と銀行から言われた事になる。
土地を手放してもせいぜい、半分ぐらいにしかならず。
その差額の5000〜1億円程度の負債を抱える。
圧倒的に弱い立場なので、もっと買い叩かれたかもしれない。
致命的な事のもう1つは原因。
花火で全焼する様な建物を、花火で全焼させる。
これは重過失とか言われるもので。
そんな事したら危ないのは、誰だってわかるよねって意味だ。
銀行の融資の条件に、火災保険加入は必須だったろうが。
これでは免責となり、一切保険が降りない。
※これで保険が降りるなら、全国の首の周らない経営者は今頃こぞって、事務所を花火で焼き尽くしている
同様に自己破産の、免責不許可事由にも該当し。
もし自己破産しても、社会的信用を失うだけで。
肝心の借金が消えず、自己救済ができない。
これで近隣に延焼まで出してたら、失火責任法でも重過失。
全ての被害を、個人で賠償しなければならない。
身の丈に合わない社長になった事で、責任だけ負った形。
バブル逃げ切り失敗の中でも、とびっきりに酷いタイプ。
それがのび太社長の真実だろう。
’95〜 会社が破産。借金時代
ここでAは何をしたか。
おそらくAは、のび太の連帯保証人だ。
のび太本人の負債に、全く同じ責任を持つ事になる。
何より、A自身もバブル崩壊の煽りで。
一気に貸し剥がしされるはず。
そこで資産隠しを行う。
妻と財産分与してから離婚し。
海外口座に送金し。
ペーパーカンパニーに架空の取引で資産を移し。
ついでにのび太の火災で、預けていた高額な資材を失った、とか請求し。
当時の銀行はバブル崩壊で大混乱。
決算に少しでもいい成績を出そうと。
簡単に債権を回収できるところを優先。
Aの様な資産隠しは、簡単に判明しない。
特に当時は法改正前で、海外口座を調べる手は乏しかった。
制度的制約・時間的制約・混乱の大きさから、深追いは早い段階で諦められた。
こうして財産を、自分の手元からなくしたら。
後は銀行の手が及ぶ前に、自己破産するだけ。
これでのび太とは違って、膨大な負債はリセット。
退避させた資産を手元に戻せば、勝ち逃げ状態。
むしろAはここで攻めに出る。
のび太の債権の買い取りだ。
のび太はどう見ても、再起不能な債務者だ。
その負債が1億でも2億でも、回収の目処が立たない。
そういう焦げ付いた債権は、負債額の数%で売りに出す。
1円も回収できないより、数%でも回収できた方がいいからだ。
50〜数百万円程度で、のび太の債権を回収。
後はこれをAがどう使うかだ。
100年先の未来まで お前のものは俺のもの地獄
おそらくのび太とその子孫、つまり野比一族は。
剛田一族の名義貸し・労働奴隷となった。
債権を理由にのび太を、家業手伝いの立場で酷使。
給与等は全て天引きし、食料や衣服等は全て現物支給。
実印・身分証明書等の書類は、全て剛田一族預かり。
携帯電話・パソコン等の情報端末は、使用できない様に隔離・ロック。
買い物等外出は、剛田一族の誰かが同行して監視。
そして名義貸しとしての利用法は、それこそ無限にあるだろう。
いくら信用が傷ついても問題ないという、法律上のブラックカードといえる、無敵の存在なのだから。
のび太自身が、自己破産できないのは当然として。
重過失の属性は、相続された負債でも同様。
自己破産しても、借金は消えない。
相続放棄をしようにも、印鑑も用意できない。
そもそも外部との接触を絶たれれば、その手の知識すら手に入らない。
のび助達子孫は遺産を単純承認させられ、相続放棄できない。
負債の時効も、剛田一族側が少額でも返済した、とすれば永年更新。
野比一族は監禁状態で、現状を打破する手段を持てない。
実印と書類を取り上げられるとは。
法的には全ての意思表示を、他人に委ねたに等しい。
何せ法的な意思表示とは、全て書類で示される。
その書類を好き放題にできるんだから。
家庭内の事なので、民事不介入が原則。
外部からの助けを必要とするが、ここも無理。
のび太自体は、周囲に借金を知られているし。
子孫はそもそも、外部にその存在を知られているか怪しい。
後はこの家系を絶やさないように。
近親婚にならない範囲で、剛田一族に連なる人間と婚姻させれば。
100年先まで搾取可能な、なんでも命令できる奴隷の完成だ。
元手が数百万円だとしても、どんなアルバイトより遥かに格安だろう。
お前のものは俺のもの。
ジャイアニズムの究極の完成形だ。
……とまぁ。
こんな感じのストーリーを考えた。
救いはないのか。
神はいないのか。
実はちゃんと救いの神は現れている。
それは他ならぬドラえもんが、のび太の前に現れた事そのものだ。
借金の元金が3000万円で、遅延損害金が利息14.6%なら。
100年先には雪だるま式に増えて、ほぼ5億円近い規模になる。
この額だと、債権者は普通、差し押さえを行う。
ドラえもんは20万円で買われた、アウトレットの子守りロボットだ。
例えば1時間1000円で、ベビーシッターを雇ったなら。
1日8時間が月20日で16万円。
2ヶ月もせずに元がとれる計算となる。
これなら、経済的に合理的な選択をした、と見做される。
債権者も浮いた分を、借金返済してくれたらニッコリだ。
ドラえもんの購入は、必要なものといえ、債務者にも許される。
が、お忘れではないだろうか。
ドラえもんと各種ひみつ道具は、別に不可分ではない事を。
ドラえもん百科によると。
どこでもドア64万円。
タイムマシン120万円。
もちろん他にも、ひみつ道具は多数存在する。
生活必需品と認められない上に高額。
これらの購入は、詐害行為と見做される。
平たく言えば、そんなの買う金があるなら借金返せ、という事だ。
債権者は詐害行為取消権によって、購入を遡って無効化できる。
つまり逆説的に。
これらを所持できている事実から。
借金の話自体が、全て狂言であった、と言い切れる。
だってそうだろう。
もしも読者の皆さんが、お金を貸した、それも7桁以上の額という立場で。
貸した相手にヘラヘラと「新車買った~」とか抜かされたら。
右ストレートをお見舞いしてやるに決まってる。
右ストレートがなかった事そのものが、借金の不在の証だ。
……コラ、そこ。
絶望のシナリオを覆したのは、ドラえもんじゃなく、ひみつ道具だとか言うな。
やっぱりドラえもんじゃなく、ひみつ道具が本体とか言うな。
さて、長々話したが。
借金が狂言なら。
セワシ君の動機はなんなのか。
そもそも、自分の直系の祖先の、結婚相手を変えるなんて。
バタフライ・エフェクトとか、タイムパラドックスとか以前に。
自分が影響を受けない筈がない。
手の込んだ自殺というやつだ。
のび太の結婚相手を変えても、痛くも痒くもない奴。
それは血縁的に、のび太と無関係の奴だ。
セワシ、のび太と赤の他人説。
大阪理論的に言えば。
のび太が何を経由しようと。
セワシは別ルートで大阪に着く。
ただそれだけの話だ。
ちなみに筆者は、托卵説も疑ってる。
のび太がどっちと結婚しても。
しずかは別の男(仮にDEKISUGI)の子を既に宿している説だ。
しずかのパパが有名エピソード、のび太の結婚前夜にて。
彼は人の不幸を悲しむことができるナントカカントカ言ってた。
そんなただのボンクラに、よくもまぁ一人娘を預けようと思ったな、なんて目で見てたが。
あれ、結婚前にしずかが、怖気づくか本当の相手と結婚したいと思って、翻意にしようとするのを。
バカの方が騙しやすくていいじゃないか、と全て知った上で諭していたのかもしれない。
のび太なら真実を知っても、子供の為に黙ってくれそうなんて。
閑話休題。
赤の他人のセワシが。
子孫を装い、のび太に干渉する。
その目的は。
何かの実験なのか。
はたまた陰謀なのか。
最早もう無限に考えられる。
セワシ君の存在はやはり謎だ。




