謎の女の子
「いやあぁーー!だめ…だめ…。死んだらダメだよ。まだやり残したことがあるのに…。」
何だ?声が聞こえる。死んだらダメ?俺死ぬのか?
目の前には、高校生くらいの女の子が立っていた。肩まで伸びた綺麗な髪、それが第一印象。女の子はとても綺麗で美しいと思った。そして女の子は雨の中大粒の涙を流して、僕の腕を力強く握っていた。
「あっ、…任務があるんだ。成功させなければ…。」
俺は思ってもいないことを口に出した。
何だ?体が動かないし、口は勝手に動く。そもそも何だ?知らない人と、知らない場所。
………そうか、夢なのか!
僕は夢と気づいたところで目が覚めた。
「やっぱり夢か…。それにしても変わった夢だったな。」
「んっ?」
起きた瞬間は気づかなかったが僕はたくさん汗をかいていた。
「まあ、風呂入るか。」
僕は風呂を入ってから高校に行くことにした。そう、僕は高校生だ。今は都立の高校に通っていて、クラスはBだ。
クラスと言っても、何組とかそういう括りではなく、学年的なものだ。まあ、昔で言う高校2年生かな。
実は2045年から義務教育は撤廃されて、新たなルールが追加された。実力主義制度と言い、今までの小学校から高校まで教育期間はA〜Fに振り分けられた。そして実力があれば飛び級も可能になっている。なのでクラスに年上がいたり年下がいるのが当たり前になっている。
だが、クラスの大半は同い年である。飛び級するのはみんな優秀な人で、俺みたいな普通なやつは昔と変わらず18歳で高校を卒業するのだろう。
「おはよう、湊。」
「うん、おはよう。」
お風呂上がり、挨拶をしてきたのは僕のお母さんだ。ちなみに僕の名前は石井湊だ。いつも忙しいお父さんは朝からいないので、挨拶をするのはお母さんだけだ。
いつもの定位置である席に座り、焼いただけの食パンを齧る。食べるだけでは暇なのでテレビをつけてニュース番組を見た。
「実力主義制度がルールとなってから10年が経ちました。今では全国のすべての学校がそのルールに慣れつつあります。」
テレビにはアナウンサーが話す姿があった。
このルールは実力のある人が勉強しやすいというメリットがある一方、成績の悪い人などは進級ができなくて仕事に就けないというデメリットがある。ニュースではこのルールの問題点を話していた。国の決めたルールとはいえ、正しくないことがあるみたいだ。
俺は朝ごはんを食べ終わると「行ってきます!」と言い、そそくさと学校に向かった。
今は7月、真夏である。歩いていると暑くて溶けそうだ。毎年今年が一番暑いと思うのは気のせいだろうか。毎年暑くなっているように感じる。
クラスに入ると冷房が付いていて、とても涼しかった。
「うっーー!涼しいー!」
「よっ、今日も元気だな。」
「おー凛ちゃん。おはよう!」
クラスに入って話しかけてきたのは、斉藤凛。俺の一応、男友達だ。
「それで今日一の重大発表があります!」
「おっ?何だよー。彼女でもできたのか。」
「今日…転校生が来ます。」
「おっ、おー!おー?何だ転校生か。」
「彼女じゃなくて悪かったな。」
凛は少し怒り口調で話した。
「おっ、来たみたいだぞ。」
クラスの前のドアから担任の鈴木が入ってきた。
「はーい、座ってね。今日は転校生を紹介します。いいよ、入ってきて。」
鈴木は教室の外にいる転校生に手招きをした。
転校生は足音を立てながら入ってきた。女の子だ。肩まで伸びた綺麗な髪。スタイルが良く、その上背が高い。顔はまだ見えてないものの、綺麗な人だと感じた。
そして転校生は前を向き自己紹介を始めた。
「親の事情で引っ越してきました。名前は川口一花です。趣味はピアノです。よろしくお願いします。」
顔は想像通り綺麗だった。
だが、何かが引っかかった。この女の子を見たことある、そのように心の底で感じた。
「おい、凛ちゃん。」
「ん?何だ親友。」
「あの転校生の川口って見たことないか。」
「そうか?確かに美人だけど、別にテレビで見たことはないよ。」
気のせいなのか。いや、気のせいじゃない。どこかで見た。どこで見た?……夢だ!
頭に浮かんだのは今朝見た夢の少女。今思い返すと、似ているような気がした。
そうすると川口と目が合った。川口の目は俺の目から離れなかった。力強く見続けていた。
俺は不思議に思った。あれは夢だったのか。実は現実で起こったことなのではないのだろうか。いや、もしくは将来起こることなのだろうか。




